大人ピアノ指導法:「体験講座」受講生の自己紹介:注意点
講座の中には、ほかの方に比べて進歩がとても早い方がいらっしゃいます。
先生方の中には、そうした方に対して
「その方ばかり褒めてはいけないのではないか」
「その方にばかり時間をかけてはいけないのではないか」
と遠慮なさる方も少なくありません。
けれども、実はここは少し考え方を改めてもよいところかもしれません。
進歩の早い方、お上手な方というのは、その場で輝きたいお気持ちをお持ちであることが多いのです。
たとえば子どもの頃、体育の時間や学芸会で、自然とみんなの目を引く“スター”のような存在がいたように、その場だからこそ輝ける方がいらっしゃいます。
ですから先生は、その方が健やかに輝ける場を、きちんと用意して差し上げることが大切です。
たとえば、
「○○さん、この曲をとても素敵に弾いていらっしゃいます。よろしければ、皆さまの前で少しだけ弾いていただけますか」
とお声がけしてみる。
もしその方が人前で弾くことがお好きなら、「ええ、そんな……」とおっしゃいながらも、きっと嬉しそうに演奏してくださるでしょう。
あるいは、
「○○さん、とてもお上手でいらっしゃるので、よろしければ今日は新しくいらした方のお隣で、少しアドバイスしていただけますか」
と、助手のような役割をお願いしてみるのも一つです。
そうすると、その方はますます教室の中で輝かれます。
しかもそれは、「自分だけができて嬉しい」という空気ではなく、
「みんなで一緒に上手になっていきましょう」
という温かな雰囲気へとつながっていくのです。
反対に、あまり望ましくないのは、
「その方ばかりに時間をかけてはいけない」
「その方ばかり褒めてはいけない」
と気にするあまり、お上手な方に十分な関わりを持たず、結果として少し距離を置くような形になってしまうことです。
「素晴らしいですね」とひと言だけ伝えて、すぐに別の方のところへ行ってしまう。
そのような対応では、その方の力も生かされませんし、教室全体の活気にもつながりにくくなります。
お上手な方には、お上手な方にふさわしい役割があります。
その力を教室全体の喜びへと広げていくこと。
それもまた、先生の大切な役目の一つではないでしょうか。
どうぞ、その方の輝きを遠慮なく活かしてあげてください。
その輝きは、やがて教室全体を明るく照らしてくれるはずです。


