大人ピアノ指導法:信頼をもたらす「看板・コース設定」
小節と小節の間が空いてしまう方への声かけ
ピアノ指導をしていると、小節と小節の間に、不思議な“間”が空いてしまう方がいらっしゃいます。
たとえば、メヌエットのような曲で、
「ソーー、ドレミファソーー、ドー」
と続いていくはずのところで、小節線を意識するあまり、そのたびに少し間を空けてしまうのです。
つまり、流れとしては続いているはずなのに、
「ソーー、ドレミファ、ソーー、ドー」
「ラー、ファソラシ、ドー、ドー」
というように、小節線のところで区切ってしまう弾き方です。
さらに、段が変わるところでは、もっと大きく間が空いてしまうこともあります。
不思議なことに、ご本人はその違和感に気づいていない場合も少なくありません。
すでにそれが癖になっていて、曲全体をその調子で弾いてしまうのです。
もちろん、ここまで大きく空かなくても、音符と音符の間に少し妙な間隔ができてしまうことは、実はよくあることです。
こうしたとき、多くの先生方は
「そこ、もう少し早く弾いてください」
と声をかけがちです。
確かに、言いたいことはよくわかります。テンポよくつなげてほしい、という意味ですね。
ですが、実は以前、私はこの言い方で強くお叱りを受けたことがありました。
ある男性の生徒さんに、私も同じように
「そこ、もう少し早く入ってください」
「すぐ弾いてください」
とお伝えしたところ、
「“早く早く”と言わないでください」
と、たいへんお怒りになったのです。
よくお話をうかがうと、その方はご家庭でも日頃から
「早くどいてください」
「早く片づけてください」
「早く畳んでください」
と、何かにつけて“早く”と言われ続けていたそうです。
ようやく定年後、自分の時間を持てるようになり、好きなことを楽しもうとピアノに来ている。
そんな中で、自分より若い先生からまた「早く弾いてください」と言われたら、心が張りつめてしまうのも無理はありません。
この出来事を通して、私はあらためて、指導では「正しいことを言う」だけではなく、「どう伝えるか」がとても大切だと感じました。
では、小節と小節の間に隙間が空いてしまったとき、どのように声をかければよいのでしょうか。
私は、「早くしてください」と全体を急がせる言い方ではなく、その箇所を具体的に示して伝えることが大切だと思っています。
おすすめなのは、
「ここに不思議な隙間が空いていますね」
と伝える言い方です。
そして、
「その隙間をなくしてみましょう」
と続けます。
この表現なら、相手を急かすことなく、何が起きているのかを一緒に確認できます。
責めるのではなく、現象としてやさしく伝えることができるのです。
さらに効果的なのは、教師が曲の流れに合わせて
「さん、はい」
と声を添えてあげることです。
たとえば弾いている途中で次の入り口に合わせて
「さん、はい」
と入れると、ご本人が
「あれ、少しずれていたのかな」
と、自分で気づけることがあります。
つまり大切なのは、
急がせることではなく、
どこに隙間があるのかをピンポイントで伝えること。
そして、
「不思議な隙間が空いていますよ」
というやわらかな言葉がけと、
「さん、はい」
という具体的なサポートを添えることです。
生徒さんが安心して、自分で気づき、自然に修正していけるように。
そんな指導の積み重ねが、心地よい演奏につながっていくのではないでしょうか。
ぜひ、日々のレッスンの中で活用してみてください。


