大人ピアノ指導法:多くのピアノの先生が陥りやすい「6つの落とし穴」
小節と小節の間が空いてしまう方への声かけ
ピアノ指導をしていると、
小節と小節の間に、不思議な“間”が空いてしまう方
がいらっしゃいます。
たとえば、メヌエットのような曲で、
「ソーー、ドレミファソーー、ドー」
と続いていくはずのところで、
小節線を意識するあまり、
そのたびに少し間を空けてしまうのです。
つまり、流れとしては続いているはずなのに、
「ソーー、ドレミファ、ソーー、ドー」
「ラー、ファソラシ、ドー、ドー」
というように、
小節線のところで区切ってしまう弾き方です。
さらに、
段が変わるところでは、
もっと大きく間が空いてしまうこともあります。
不思議なことに、
ご本人はその違和感に気づいていない場合も少なくありません。
すでに
それが癖になっていて、
曲全体をその調子で弾いてしまうのです。
もちろん、
ここまで大きく空かなくても、
音符と音符の間に少し妙な間隔ができてしまうことは、
実はよくあることです。
こうしたとき、多くの先生方は
「そこ、もう少し早く弾いてください」
と声をかけがちです。
確かに、言いたいことはよくわかります。
テンポよくつなげてほしい、という意味ですね。
ですが、実は以前、
私はこの言い方で強くお叱りを受けたことがありました。
ある男性の生徒さんに、私も同じように
「そこ、もう少し早く入ってください」
「すぐ弾いてください」
とお伝えしたところ、
「“早く早く”と言わないでください」
と、たいへんお怒りになったのです。
よくお話をうかがうと、その方はご家庭でも日頃から
「早くどいてください」
「早く片づけてください」
「早く畳んでください」
と、何かにつけて“早く”と言われ続けていたそうです。
ようやく定年後、
自分の時間を持てるようになり、
好きなことを楽しもうとピアノに来ている。
そんな中で、
自分より若い先生からまた「早く弾いてください」と言われたら、
心が張りつめてしまうのも無理はありません。
この出来事を通して、私はあらためて、
指導では「正しいことを言う」だけではなく、
「どう伝えるか」がとても大切だと感じました。
では、小節と小節の間に隙間が空いてしまったとき、
どのように声をかければよいのでしょうか。
私は、「早くしてください」と全体を急がせる言い方ではなく、
その箇所を具体的に示して伝えることが
大切だと思っています。
おすすめなのは、
「ここに不思議な隙間が空いていますね」
と伝える言い方です。
そして、
「その隙間をなくしてみましょう」
と続けます。
この表現なら、
相手を急かすことなく、
何が起きているのかを一緒に確認できます。
責めるのではなく、
現象としてやさしく伝えることができるのです。
さらに効果的なのは、教師が曲の流れに合わせて
「さん、はい」
と声を添えてあげることです。
たとえば
弾いている途中で次の入り口に合わせて
「さん、はい」
と入れると、
ご本人が
「あれ、少しずれていたのかな」と、
自分で気づけることがあります。
つまり大切なのは、
急がせることではなく、
どこに隙間があるのかをピンポイントで伝えること。
そして、
「不思議な隙間が空いていますよ」
というやわらかな言葉がけと、
「さん、はい」
という具体的なサポートを添えることです。
生徒さんが安心して、自分で気づき、自然に修正していけるように。
そんな指導の積み重ねが、
心地よい演奏につながっていくのではないでしょうか。
ぜひ、日々のレッスンの中で活用してみてください。


