大人ピアノ指導法:講座全体の「流れと時間配分」(個人レッスン)
何度弾いても同じ間違いをしてしまう方へ
ピアノを指導していると、何度弾いても同じところで間違えてしまう、という場面に出会うことがあります。
これは、実は子どものレッスンではあまり見られない、大人の生徒さんならではの特徴かもしれません。
たとえば、3の指から4の指へ移る場面があるとします。
本来は「3・4・3・4」と動かしたいところを、頭の中ではすでに「3・2・3・2」と思い込んで弾いてしまうのです。
すると、出てきた音が思っていたものと違うため、ご本人はまずそこで驚かれます。
「あら、違う」
「どうしてうまくいかないのかしら」
そんなふうに戸惑いが重なり、さらに「先生に申し訳ない」「今どこを弾いていたのだったかしら」と焦りが広がって、パニックのような状態になってしまうことも少なくありません。
実際、現場では私自身も驚くような場面があります。
顔がぱっと紅潮し、「先生、頭が真っ白になってしまって……」「なんだか息苦しいわ」「止まらないの」とおっしゃることがあるのです。
これは本当に注意が必要です。
ご本人も止めようとしているのに、気にすればするほど、かえって自分を追い込んでしまう。
そこまで深刻でないにしても、パニック症状に近い傾向が見られることが、ときどきあります。
そんなとき、私はまず「イメージの練習をしてみましょうか」とお声がけします。
いったん鍵盤から手を離していただき、空中で指を動かしていただくのです。
「本当は3と4の指でしたね」
そう確認しながら、空中で指の動きをなぞってみる。
そして、「こうやってミ・ファ・ソですね」というように、声に出して確認していただくのです。
そのあと、もう一度だけ弾いてみる。
たったそれだけのことなのですが、これが驚くほど効果的です。
子どもの生徒さんであれば、「そこは3・2ではなく、3・4ですよ」と伝えるだけで、比較的すぐに直ることもあります。
けれど大人の生徒さんの場合は、ただ指番号を伝えるだけでは解決しないことがあります。
だからこそ、指の動きを一度“音から切り離して”、空中で確認する。
そして、安心してから再び鍵盤に向かう。
このひと手間が、とても大切なのです。
大人のレッスンでは、技術だけでなく、心の動きにも丁寧に寄り添うことが欠かせません。
「できない」のではなく、「焦りの中で、本来できることが見えなくなっている」だけかもしれない。
そう考えて、指導する側も落ち着いて導いていきたいものです。


