大人ピアノ指導法:簡単で華やかな伴奏形「ぐるりんぱ伴奏」
体験レッスン・体験講座の「始める前」と「片付け」の時間に大切なこと
体験レッスンや体験講座では、
レッスンの中身そのものはもちろん大切ですが、
実は「始まる前の時間」と「終わった後の片付けの時間」も、とても大切です。
この前後の時間の過ごし方によって、
参加者の皆さんとの距離感や、
その後の継続率まで変わってくることがあります。
今日は、その中でも特に意識していただきたいことをお伝えします。
始める前は「全部整えすぎない」ことも大切
始める前に留意したいのは、
机や椅子の準備を、
できれば参加者の方と一緒に行うということです。
私自身、これまで失敗をたくさん重ねてきました。
最初の頃は、緊張もあって、
とにかく準備を完璧にしておかなければと思っていました。
開始の30分前、あるいは1時間前には会場に入り、
一人で机や椅子を整え、
資料も一枚ずつ机の上にきれいに並べて、
いつでもどうぞ、という状態にしていたのです。
ところが、そうするとどうなるか。
会場に来られた受講生の皆さんが、
すっかり「お客様」になってしまうのです。
もちろん丁寧なお迎えは大切です。
けれども、
体験会や講座というのは、
ただサービスを受ける場ではなく、
これから一緒に歩んでいく関係づくりの場でもあります。
サークルでも、市民講座でも、カルチャー講座でも同じですが、
やはり「仲良くなれること」がとても重要なのです。
そのためには、共同作業が大きな意味を持ちます。
以前、こんなお話を伺ったことがあります。
アメリカの大統領は、重要な条約や交渉の前に、
まず個人的に会食の場を設けて関係を築くことを大切にされるそうです。
しかも、相手を迎えるときに、あえてすべてを完璧には整えず、
少しだけ“余白”を残しておくのだそうです。
たとえば、
食事の準備を八割ほど済ませておき、
残りの二割は相手が来てから一緒に行う。
玄関のチャイムが鳴ったら、
「今ちょうどこれをしていたところなんです。
よかったらその球根を取っていただけますか?」と、
自然に共同作業に入っていただく。
すると、
緊張して来られた方も、土に触れたり、
何かを一緒にしたりするうちに、ふっと気持ちが和らぐのです。
体験会も、まったく同じだと私は思っています。
コピーや名簿など必要な準備はきちんとしておきながらも、
机の配置などは少しだけ一緒にできる余地を残しておく。
早めに来られた方に
「よろしければ、机を少し動かすのをお手伝いいただけますか」と
お声がけする。
それだけで、
その方は“お客様”ではなく、
“その場を一緒につくる仲間”になります。
この空気づくりは、その後のレッスンの進み方にも大きく影響します。
片付けの時間は「次につなげる時間」
体験会が終わった後の片付けの時間にも、
いくつか大切なポイントがあります。
まず大事なのは、テキスト購入について、
そして今後必要となる費用について、
はっきりとお伝えすることです。
さらに、次回はいつ行うのかも、
できれば紙に書いてご案内すると親切です。
継続していくためには、
必要な教材が必要になります。
そのため、
あらかじめ「らくらくピアノには、このようなテキストがあります」と
実物をお見せしながらご紹介すると、
とてもわかりやすくなります。
「みどりの本」「for Kidsの本」など、
実際に見ていただきながら、
「どれをご希望ですか」と確認していくとよいでしょう。
中には「せっかくだから全部そろえておきたいわ」と
おっしゃる方もいらっしゃいます。
先生の立場としては、「物を買っていただくのは申し訳ない」と
感じることもあるかもしれません。
けれども、ここで知っておきたいのは、
買い物そのものが楽しみであるということです。
たとえば洋服屋さんで、
「こちら、お似合いですよ」と明るく勧めてもらうと、
買う側も嬉しい気持ちになります。
反対に、「少し高いのですが、申し訳ないのですが……」
という勧め方をされると、
せっかくの気持ちがしぼんでしまいます。
テキストも同じです。
「こんな本がありますよ」「こちらも人気ですよ」「これは特におすすめです」と、
明るくご案内することが大切です。
これは遠慮する場面ではなく、
きちんとしたお仕事として、
胸を張ってご案内してよいのです。
時間が限られている場合は、
必要な教材を紙に書いておき、
丸をつけていただく形にするとスムーズです。
また、「もしよろしければ、次回までに私が購入してまいりますので、
先にテキスト代をお預かりしてもよろしいですか」と
ご案内するのも一つの方法です。
そうすると、受講される方の中にも
「次回は必ず行こう」という気持ちが自然に生まれます。
もしその場でお手持ちがない場合は、
「では、私が立て替えて購入しておきましょうか」と
お伝えしてもよいでしょう。
ただし、慣れていない先生方の中には、
体験会の前に自腹で何冊も、
何十冊も購入してしまう方もいらっしゃいますが、
そこまでなさる必要はありません。
先生に過度な負担がかからない形で進めることも、
とても大切です。
まず必要数を確認してから準備する、その流れで十分です。
片付けもまた「共同作業」にする
そして、片付けの時間でもう一つ大切なのは、
参加者の方と一緒に片付けをすることです。
これも、始まる前の準備と同じです。
机を戻す、カーテンを閉める、資料をまとめる――
そうしたことを「私がやりますから」と
全部一人で抱え込むのではなく、
「こちらをお願いできますか」と自然にお願いしてみてください。
自分でやった方が早い、ということもあるでしょう。
けれども、
そこをあえて一緒にすることで、
また共同作業が生まれ、関係が近づいていくのです。
中高年の方の中には、
よく「先生は結構でございます。私たちでやりますから」
とおっしゃる方もいらっしゃいます。
その時に、私が大切にしたいと思っている言葉があります。
「いえいえ、とんでもございません。
レッスンが終わりましたら、私は先生ではなく、一番下っ端の者でございます」
このひと言には、人生の先輩への敬意が込められています。
教える立場であっても、
相手を立て、敬い、共に場をつくる姿勢を忘れないこと。
そこに、らくらくピアノらしい温かな関係が育っていくのだと思います。
前後の時間こそ、信頼関係を育てる
体験レッスンや体験講座では、
演奏の内容や説明だけでなく、
始まる前の準備、終わった後の片付け、
そのすべてが大切な時間です。
準備を一緒にすること。
片付けを一緒にすること。
必要なご案内を、遠慮しすぎず、明るくはっきりお伝えすること。
こうした一つひとつの積み重ねが、「また来たい」
「ここなら続けられそう」という安心感につながっていきます。
体験会は、単なる“お試し”ではありません。
これから始まるご縁の第一歩です。
どうかその前後の時間も、大切に育てていただけたらと思います。


