大人ピアノ指導法:「体験講座」講師の自己紹介:注意点
なぜ今、「三世代をターゲットにする教室づくり」が大切なのか
かつては、実績と信頼を積み重ねていけば、生徒さんは自然と増えていく時代がありました。
私たちが幼かった頃を振り返ると、子どもの生徒さんが次から次へと教室に来られる、そんな時代だったように思います。
先生が一生懸命に教え、生徒さんを大切にされていれば、「あの先生はいいですよ」と口コミが広がり、それが新たなご縁につながっていきました。
年数を重ねるほどに信頼が育ち、生徒さんも少しずつ、でも確実に増えていく。
今思えば、とても恵まれた時代だったのかもしれません。
しかし、今はどうでしょうか。
子どもの生徒さんに関しては、全体として減少傾向にあります。
その背景には、人口構造の大きな変化があります。
ずいぶん前は、65歳以上の方は「11人に1人」の時代でした。つまり、社会全体として子どもの割合が高かったのです。ところが現在は、65歳以上の方が「4人に1人」といわれる時代になりました。
さらに地域によっては、3.7人に1人、あるいは3.5人に1人が65歳以上という、超高齢化の状況も見られます。将来的には、3人に1人が65歳以上になるともいわれています。経済の動向はさまざまな要因で上下しますが、人口比率の変化は、ある程度見通しが立っています。
だからこそ、シニア層を対象とした市場は、今あらゆる業界から注目されているのです。その意味でも、シニア層を対象とした「らくらくピアノ」には、大きな可能性があります。
これから先、長い期間にわたり日本ではシニア層が増え続けます。多くの方に喜んでいただき、人生をより豊かにするお手伝いができることは、私たちにとって本当に意義深いことだと感じています。
理想を言えば――最も望ましいのは、三世代をターゲットとする教室づくりです。では、実際に三世代をターゲットにするには、どうすればよいのでしょうか。その一つの方法として、今お子さんを教えていらっしゃる先生方に、ぜひおすすめしたいことがあります。
それは、保護者の方にも小さなきっかけをつくることです。
たとえば、レッスン終了後の2〜3分。
「お母さまにも、このあと3分だけお伝えできますよ。いかがですか?」
そんなふうに、気軽に声をかけてみるのです。“体験レッスン”と聞くと、その後に勧誘されるのでは、と警戒される方も少なくありません。けれども、「終わったあとに3分だけ」「2分だけ」「ご希望があれば少しだけ」
という形であれば、ぐっとハードルは下がります。無料でもよいですし、あるいは数百円程度のごく気軽な設定でもよいでしょう。
大切なのは、始めやすさです。実は、私自身もこの方法を取り入れていました。
あるお母さまは、毎回お子さんの送り迎えでお忙しそうでした。レッスンの待ち時間を、ようやく自分のためのひとときとして過ごしていらっしゃるようにも見えました。時には少しうとうとされたり、お好きな本を読まれたりして、その30分を大切にしておられたのです。
そんな中、私は思い切ってお声がけしてみました。
「終わってから3分だけでしたら、無料でお伝えできますよ。いかがですか?」すると、その方は「本当ですか?」と、とても喜んでくださいました。
その時の表情は、今でも忘れられません。多くの場合、保護者の方の中には、「本当は自分もやってみたかった」「自分の夢を子どもに託している」そんなお気持ちを、心の奥にしまっていらっしゃる方が少なくありません。
その方も、待ち時間に紙鍵盤で一生懸命練習されるようになりました。そして、いよいよご自分の3分間。3分ですから、1曲全部は弾けないこともあります。それでも、必要なところだけを少し弾き、次回また続きをする。その積み重ねが、無理のない、でも確かな継続につながっていったのです。
最初は「本を買うのももったいないですから大丈夫です」とおっしゃって、お子さんが以前使っていた教材を活用されていました。
けれども、少しずつご自分の好きな曲にも挑戦されるようになり、最後にはソナチネに進まれるまでになりました。その頃には、もうしっかりとご本人のレッスン時間を設けるようになっていました。
このように、ほんの小さな声かけが、新しいご縁につながることがあります。そして、その際には、なぜそれをおすすめするのかという理由も添えると、より気持ちが伝わります。たとえば、「親子で特別な時間を持てますよ」「“頑張ってね”と見守るだけでなく、“一緒にやろうね”という関わり方ができますよ」「お母さまご自身が楽しんでいる姿は、お子さんにとって大きな励みになりますよ」このように、具体的な意味や価値を言葉にしてお伝えすることで、保護者の方の心が動きやすくなります。ただ勧めるのではなく、動機づけを添えてお伝えすることが大切なのです。たとえそれがすぐに大きな利益につながらなかったとしても、保護者の方との信頼関係は確実に深まります。
そして、その方は教室にとって、とても心強いサポーターになってくださいます。
また、そのタイミングでチラシをお渡しするのも一つの方法です。中高年層には、やはり紙のご案内がよく届きます。その際、「○○音楽教室」と教室名を前面に出すよりも、「親子で特別な時間を持ちたい方へ」「自分の時間を楽しみたい方へ」「実はピアノに憧れていた方へ」このように、相手の気持ちに寄り添うタイトルを大きく掲げ、教室名はその下に添える形にすると、ぐっと伝わりやすくなります。
つまり、教室目線ではなく、相手の心に届く切り口で発信することが大切なのです。
これからの時代、子どもだけを対象にするのではなく、親世代、そして祖父母世代へと視野を広げていくこと。それが、教室の可能性を大きく広げていきます。三世代に寄り添える教室は、単にピアノを教える場所ではありません。家族の会話を生み、喜びを分かち合い、人生に彩りを添える場になります。
だからこそ私は、これからの教室づくりにおいて、**「三世代をターゲットにする視点」**がますます重要になると確信しています。
小さな一歩が、大きな未来につながります。ぜひ、それぞれの教室で、できるところから始めてみていただけたら嬉しく思います。


