大人ピアノ指導法:「中高年のソルフェージュ」
体験講座で大切にしたいこと
〜講座前・講座中・講座後、それぞれの心配り〜
体験講座で気をつけるべきことは何でしょうか。
今回は、講座前・講座中・講座後の3つに分けてお話ししたいと思います。
ここは本当に大切なポイントです。
なぜなら、体験講座に来ていただけなければ、ご縁が始まることはありませんし、せっかく来てくださったその一回で心をつかめなければ、次につながらないこともあるからです。
だからこそ、この一度の体験講座を、いかに安心感と信頼に満ちた時間にできるかがとても重要なのです。
1.講座前に大切なのは「ご趣味をうかがうこと」
まずは講座前についてです。
あまり良くない例として、初めて来られた方に対して、いきなり
・「初めてですか?」
・「以前どのくらいピアノをされていましか?」
・「どうして来られたのですか?」
・「どのようなお気持ちで来られたのですか?」
といったことを聞いてしまうケースがあります。
もちろん、先生方がこうした質問をされるのには理由があります。
それは、相手の経験や実績を把握して、より効果的なレッスンをしたいという思いがあるからです。つまり、「上達していただくこと」が前提にあるために、どうしても経験年数や目的を最初に聞いてしまうのです。
けれども、いつもお伝えしているように、大人のピアノ指導の目的は“上達”だけではなく、“楽しみ”にあります。
そう考えると、最初に大切なのは「この方はどのくらい弾けるのか」ではなく、
**「この方と、どれだけ心地よい関係を築いていけるか」**なのです。
そこで講座前におすすめしたいのが、ご趣味をうかがうことです。
趣味というのは、その方が楽しいと感じて打ち込んでおられること。
そこには、その方らしさや人生の彩りが表れています。
たとえば、
「園芸をしています」とおっしゃる方には
「なるほど、道理で優しくあたたかな雰囲気をお持ちなのですね」
「スポーツをしています」とおっしゃる方には
「やはりアクティブで、はつらつとした素敵な印象が伝わってまいりますね」
このようにお伝えすると、自然と場が和み、信頼関係が生まれていきます。
いきなり「どのくらい経験がありますか」と聞くよりも、
まずはその方の人となりに触れること。
それが、体験講座の入口としてとても大切なのです。
2.講座中に大切なのは「目的と経験をうかがうこと」
次に講座中です。
ここでのポイントは、目的と経験をうかがうことです。
講座前ではなく、実際にレッスンが始まり、その方のご様子が少し見えてきた段階でお聞きする。これが大切です。
逆に良くない例は、相手のことをよく見ないまま、ただ「大丈夫です、大丈夫です」と繰り返してしまうことです。
たとえば、どのくらい経験があるのかも聞かずに「では、とりあえずやってみましょう」と始める。
実際に弾いていただくと、手の形や指の動きで、以前習っておられた方かどうかはある程度わかります。
もし少しでも経験がおありなら、
「以前、ピアノをなさっていたことがおありですか?」
と自然にお聞きすることができます。
すると、そこから昔のお話が出てきて、
「やはり違われますね。でしたら、ぜひ続けていらしてください」
という流れが生まれ、信頼関係につながっていきます。
一方で、まったく初めての方は、緊張して震える手で弾かれることもあります。
そのようなときには、
「素晴らしいですね。まさに、こういう方のためにらくらくピアノがあるのですよ」
とお伝えすることができます。
すると相手の方は、
**“今の自分のままでよいのだ”**と感じられるのです。
これはとても大きな安心につながります。
先生が自分の状態を見て、理解し、その上で導いてくださっている。
そう感じられることで、「ここなら来られる」と思っていただけるのです。
ですから、講座中は、ただ「大丈夫」と繰り返すのではなく、
相手の目的や経験を適切なタイミングでうかがい、その方に合った言葉で安心を届けることが大切です。
3.講座後に大切なのは「不安を拭い去ること」
そして最後は講座後です。ここで最も大切なのは、相手の不安を拭い去ることです。
良くないパターンは、先生自身が「終わった、ほっとした」となってしまうことです。
体験講座では、先生も一生懸命エネルギーを使います。
「大丈夫ですよ」と励ましながら進めることで、気づかないうちにかなり力を使っているものです。
そのため、終わった瞬間に、つい気が抜けてしまうことがあります。
けれども実は、生徒さんがカバンを持ち、帰られるその瞬間こそ、とても大切な時間なのです。
レッスン中は、どうしてもお互いに少し緊張があります。
「ちゃんとやらなきゃ」という気持ちから、心にバリアがある状態です。
でも、片づけが終わり、カバンを持ったとき、
その方は一番自然な、素の状態に戻っておられます。
だからこそ、そのタイミングで、
「今日は本当にありがとうございました。お会いできてとても嬉しかったです」
「今のご様子でしたら、きっと長く楽しく続けていただけると思います」
そんなふうに、あたたかくお声をかけてお見送りすることが大切なのです。
まるで旅館の女将さんのように、
「ありがとうございました。どうぞお気をつけて」
と心を込めてお見送りする。
このひと手間によって、体験講座の印象は大きく変わります。
そして、「また来たい」という気持ちにつながっていくのです。
まとめ
体験講座では、講座前・講座中・講座後で、それぞれ大切なポイントがあります。
良くないパターン
講座前にいきなり経験や目的を聞いてしまう
講座中に「大丈夫です」と繰り返すだけになってしまう
講座後に先生自身がほっとして終わってしまう
良いパターン
講座前:ご趣味をうかがい、信頼関係を築く
講座中:目的や経験をうかがい、その方に合った安心を届ける
講座後:不安を拭い去り、あたたかくお見送りする
体験講座は、単にピアノを体験していただく場ではありません。
その方に「ここなら安心して続けられる」と感じていただくための、大切な出会いの時間です。
ぜひ、講座前・講座中・講座後、それぞれの時間を丁寧に大切にしてみてください。


