知財を活かす地元企業(4)
令和の時代に入り、新時代に向けて頑張っておられる知財を活かした地元企業(主に中小の方々)をご紹介しています。
三回目は、「株式会社幾久屋」です。同社は、住宅用ガラスサッシ等を施工する設立が昭和8年の伝統的な企業です。そして、その中でも、現在、写真のような独自のデザインによる「悠Uサンルーム」(登録商標))を販売しています。
住宅の窓に外付けされたサンルームはよく見かけますが、一般的なサンルームはほとんどが直方体状になっています。したがって、外側への窓の延長という感じが否めません。
これに対して、同社の販売する「悠Uサンルーム」は、全体が半円筒状(正確には多角筒状)になっています。半円筒状になることで、庭の景色が180゜の周囲に広がる開放的で優しい空間になり、家の一部というよりも庭の一部という雰囲気を醸し出すため、信州の別荘などには最適かもしれません。
同社の「悠Uサンルーム」は、上の写真の中にも表示されるように、長野県が推進するブランドイメージ「しあわせ信州」の発信商品の一番最初の商品(第1-1号)に認定されています。また、メディア関連では、SBC信越放送の番組「YES,ものづくりナガノ」,書籍「長野が世界に誇りたいものづくりの会社」をはじめ、各種雑誌や新聞等で紹介されています。
ところで、このような商品の“デザイン”は、意匠権(知的財産権)で保護されます。「株式会社幾久屋」では、この丸みのあるサンルームのデザインに関連して、日本では3件の意匠権を取得するとともに、この中核的なデザインは中国でも意匠権を取得しています。したがって、おそらく、このような丸みのあるサンルームは、同社以外、日本で販売している企業や商品はないと思われます。
知的財産(知的財産権)と聞くと、発明や考案を対象とする特許などの技術的なものをイメージするかもしれませんが、デザイン(意匠権)も重要な知的財産権となり、商品の種類によっては、むしろ特許よりも強力な権利になる場合もあります。
このような意匠権を含む知的財産権は、中小企業や個人的経営者にとって、ビジネスを展開する上での強力な武器になります。もちろん、武器ですので、その管理や使用方法、つまり、適切にかつ上手に使いこなすことも必要になります。
今、米中貿易戦争が進行し、知的財産権の問題は最重要項目になっています。中小企業等にとっても、知的財産権の重要性は、例外ではありません。むしろ、重要な戦略テーマの一つとして自社の経営戦略に活かしてほしいと思っています。