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「職務発明制度」が変わります

 今月、職務発明制度の見直しが盛り込まれた特許法等の改正案が閣議決定されました。この決定を受け、同改正案は今国会に提出されます。改正の概要は次のようになります。
               <改正後>          <現在>
 【特許を受ける権利】   ☆ 会社に帰属        ◇ 発明者に帰属
 【会社】           ☆ インセンティブ       ◇ 通常実施権を得る
                  協議の義務付け
 【発明者】         ☆ 相当の金銭等を受    ◇ 相当の対価を得る
                  ける権利の保証
 ところで、この見直しに対して、「会社が有利になる」或いは「発明者の発明意欲が減退する」等の様々な意見が出ています。
 今回の見直しは、青色LEDに関する中村修二氏の特許に対する対価について同氏と会社が争った裁判が発端になっています。社員から数百億円規模の発明(特許)の対価が請求された場合、会社にとって経営にも影響することが懸念されるため、争いを回避し、両者のバランスを取ろうというのが今回の改正趣旨です。
 ただし、現在も特許を受ける権利は、多くの会社で発明者から会社に譲渡されるシステムになっているため、帰属の点については、ほとんど今と変わらないと思います。問題は対価の点ですが、私は、日本人に馴染む見直しというか日本的な改正ではないかと前向きに捕らえています。
 つまり、インセンティブ協議の義務付けが導入され、このインセンティブの例についてはガイドラインが出る予定になっています。この場合、「インセンティブ」というからには、金銭のみではなく、金銭以外の様々なものが含まれます。
 会社の場合、一つの発明の全てを特定の社員が成立させることはほとんど無いでしょう。多くは、開発チーム内の分担をはじめ、製造技術部門や品質管理部門等を含めた多くの人たちの協力により完成します。したがって、上述した青色LEDのようなケースにおいて、仮に、一社員に対して会社から特許の対価として数百億円も支払われたとしたらどうでしょうか。もちろん、これを否定するわけではありませんが、他の社員が不公平感を持ったり、或いは他の技術社員は返ってやる気を無くしてしまうなどのマイナス部分も無視できません。
 今回の改正では、発明者に対する報奨金(対価)のみならず、様々なインセンティブ施策が可能になります。例えば、発明を行った開発セクションに対する技術開発予算の増額などをはじめ、現実的ではないですが、全員に金メダルを授与する或いはチーム全員のハワイ旅行を認める等もできるようになります。
 日本的と言ったのはこのことです。したがって、今回の改正は、発明者(社員)にとってそんなに心配する内容ではなく、むしろ、ガイドラインをベースに会社に対し、対価を含めた色々な要求や希望を出し易くなるのではと感じています。

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専門家

下田茂(弁理士)

みらい国際特許事務所 長野オフィス

個人から企業及び大学発明まで幅広く対応し、高い特許登録率を維持しています。持前の知財センスに基づき、特許権や商標権の取得はもちろんのこと、依頼者に満足して頂けることを第一に、広く深くアドバイスします。

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