無視できない「技術流出」問題
ベンチャー企業と知財サイクル
ベンチャービジネスとして新たに起業する場合、新たなビジネスは、いわば弱々しいヒヨコにすぎません。したがって、外敵により簡単に襲われてしまう危険性も十分にあります。通常、このような外敵はヒヨコのようなビジネスであれば、難無く飲み込んでしまう力、具体的には、資金力,製造能力,ネットワーク(営業力),ブランド力等を持っています。
そこで、自己のビジネスを守る防衛具或いは武器として「知的財産権」が存在します。自己のビジネスを外敵から守ることができれば、ビジネスを安心かつ安定に続けることができます。つまり、外敵に対してビクビクしながら或いは攻撃に必死で戦いながらビジネスを続けるのではなく、知的財産権により、外敵を排除したり、商品等の付加価値アピール或いは会社の信用力強化等に「利用(活用)」し、収益の上積みが可能になります。
一方、知的財産権により「保護」され、また、「利用」しているといっても安心はできません。外敵もただ手を拱いて見ているわけではなく、何とか防衛具を打ち破る代替物ができないものか必死で頭を絞っているかもしれません。ここに「知財サイクル」の考え方が必要になります。
知的財産権に基づく保護及び利用によって上乗せできる収益部分は余裕資金として確保できるため、新たな「創造」のために投資できます。この投資先は改良品でもよいし、新商品(新ビジネス)でもよいでしょう。そして、ここで発生する新たな成果物が、再び「知財」として保護の対象にできます。つまり、「保護」→「利用(活用)」→「創造」→「保護」→「利用(活用)」…の正スパイラルによる知財サイクルが生じ、ビジネスの進化(強化)及び継続が可能になります。
このように、知財制度は、自分よりも強い外敵に対して、自分を守る制度であり、本来は大企業よりもベンチャー企業等の中小企業のための制度です。知財は日常のちょっとしたヒラメキや改良から生まれます。立派な研究施設等から生まれるだけではありません。
日本には400万程度の中小企業が存在し、全企業の99%以上を占めています。よく中小企業は技術力はあるが競争力がないといわれます。この競争力の源となるのが、権利に守られた「知財」です。ベンチャー企業を含む中小企業にとって、経営者の知財に対する正しい認識と活用が企業の進路をも直接左右する重要な経営事項の一つになると思っています。