「母のことば」 ~どなたかお身内にご不幸でも?~
あれは娘が小学校2年生の時だった。
クリスマスも近い冬のある日、娘が学校からべそをかきながら帰ってきた。
わけを尋ねると、
「○○君がね、サンタクロースなんて、本当はいないって言うの!」 という
「あぁ~ついにその日が来た!」 と、私は思った。
娘がものごころついた頃から、やはり我が家でも、クリスマスは一大イベントだった。
12月の声を聞くが早いか、待ってましたとツリーを飾り、
娘に、サンタさんへの手紙を書かせ、プレゼントをリクエストした。
イヴの夜には家族そろってケーキを食べ、サンタさん用にも一皿残しておき
サンタさんが入ってこられるようにと、ベランダのカギを開けておいた。
「サンタさんに会いたい!」 とせがむ娘に
「眠ってる時にしかサンタさんは来ないのよ」 と言って、何とか寝かしつけ、
夜中にサンタさん用のケーキを食べるのは私の役目。
更に、七色のサインペンを使って、サンタさんからのメッセージを左手で書き、
娘の枕元にプレゼントと一緒に置き、ベランダの戸を5センチくらい開けておいた。
そして待ちに待ったクリスマス。
いつもより早く目を覚ました娘が、枕元のプレゼントにひとしきり歓声をあげてから・・・・・
「サンタさん、お腹一杯だったのかな?ケーキ少し残して行ったね!」
「サンタさん、きっとおひげにクリームいっぱいついちゃったね!」
「サンタさん、慌ててたのかな?ベランダが少し開いてたね!」
「サンタさん、寒かったのかな?字が震えてるね!」
「サンタさん、ひらがな、わたしよりへたっぴいだね!」
などと、本当に楽しいひと時があったのだ。
娘よりちょっぴり大人びた同級生の言葉に、ショックを受けている娘に、私は言った。
「サンタさんはね、いるって信じている人の所には、今年もちゃんとやって来るよ!!」
「そうだよね!!」 そう言うと、娘は安心したように笑った。
それでいいと私は思った。
だから、サンタは今年もやって来る。
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