「娘への手紙」
先日、母とデパートの食堂に行った時のこと。
注文した料理が来るのを待っていると、後ろの方から大きな声がした。
振り返ると、40歳代の男性が 「注文が決まりました!」 と大きな声を上げていた。
こざっぱりとしたみなりのその男性は、1人で店に入れたことが嬉しそうに見えた。
知的障害のある人だった。
それから5分ぐらいたった時、
デパートの店長らしき男性が、制服に制帽姿のガードマンを伴って現れた。
食堂の支配人が、聞こえよがしに言った。
「他のお客様のご迷惑になるので・・・」
すると、店長らしき人は、その男性の元に行って、何か話を始めた。
その男性は、静かに話を聞いていた。決して暴れたり大声は出さなかった。
その後その男性は、店の人とガードマンに両側を支えられるようにして連れて行かれた。
その男性は、最後まで何も言わず、何の抵抗もしなかった。何も食べられなかった。
食堂の支配人が、レジの人に向かってまた言った。
「他のお客様に迷惑がかかるといけないからね・・・」
男性がガードマンに連れて行かれるのを、みんな見ていた。
誰も何も言わなかった。私もそうだった。
その時、母が小さな声で言った。
「別に何も迷惑かけられてないのに・・・」
「あっちのおばさんたちの方が、ずっと大声でうるさいじゃないの」
「食べさせてあげたかったわね」
「そうだね」 とこたえるのが精一杯だった。
なんだか胸が苦しくて、それ以上言葉が出なかった。
あの男性は、いつも迷惑がられて、あんな風に連れて行かれるのだろうか・・・
だれかと一緒だったら、あんな目に遭わなかったのだろうか・・・
「気の毒に」 と思った時点で、もう差別しているのだろうか・・・
どうすればよかったのだろう? 今も自問自答している。
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