注意義務違反~予見可能性と回避義務~(3)交通事故での具体例(回避義務につき)

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:交通事故理論

予見可能性の説明の後は,回避義務につき,説明します。

予見可能性のところで,

「交通事故では(特に加害運転者の場合),予見可能性よりも予見義務が重視されているのでは」

という指摘をしましたが,回避義務のほうでは

「交通事故では(特に加害運転者の場合),回避可能性がある場合は,ほとんどの場合,回避義務がある」

とされる傾向があると思います。

これは,やはり,「運転者は運転免許をもって自己のために自動車という便利なもの(一方で凶器ともなりうる危険なもの)を利用しているのであるから,その分,重大な責任を負っていて当然である」という考え方から来ているのだと思います。

ただ,「回避可能性」の判断では,あくまで,「通常人(普通の人)」の「通常(普通)の運転技能」をもってしての基準で「回避が可能であったのかどうか」という判断になります。

例えば,F1ドライバーなどの卓越した運転技能を有する運転者であれば,超人的なブレーキ・ハンドル操作を駆使することで,事故が回避可能であったけれども,そうでない方であれば,回避しようがなかったというような場合は,「回避可能性がなかった」とされます。

具体例を挙げるのは,少し難しいですが,前回の予見可能性のところで言うと,衝突直前にセンターラインオーバーしてくる対向車を見つけた場合は,回避可能性はないということになると思います。

一方で,センターラインオーバーをしてきた車があったとしても,衝突までに時間がかなりあった場合は,衝突を回避できた可能性があると判断される場合もある(もちろん,相手が猛スピードで来た場合等,回避できなかったと判断される場合も多いです)と思います。

このように説明してきましたが,これを読まれてもあまりピンとこないでしょうし,私も,正直なところ,具体的な事例をお聞きしないと正確な判断はできません。

もし,ご自身が交通事故に遭われた時には,過失の有無の判断も含めて,わからないことがある場合は,弁護士にご相談ください。

ご相談いただければ,その際に,事故の状況を詳細にお聞きしたうえで,ある程度正確な判断はできると思います。

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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