交通事故の基礎知識~過失割合(2)~
東日本大震災時の大川小学校での不幸な出来事に対し,第一審の判決が出ました。
裁判の中身については,新聞報道以上の情報はありませんので,コメントを差し控えます。
ただ,新聞に載っていた「注意義務違反」やそれを根拠づける「予見可能性」と「回避義務」については,交通事故等の事故における責任(過失)の有無の判断でも,今回の判決と同様の判断がされますので,交通事故等でも参考になります。
そこで,今回は,それら用語の解説をしたいと思います。
まず,「注意義務違反」とは,簡単に言えば,「過失(≒責任)」とほぼ同義語と考えていただければ結構です。
なお,「過失」という言葉は,「損害賠償義務を根拠づける賠償義務者の行為等のうち,故意(わざと)ではないもの」という感じでご理解ください。
次に,「注意義務違反」の有無を判断するのには,まず,「予見可能性」の有無をまず判断し,その後,「予見可能性」があった場合に初めて,次の段階として「回避義務」の有無が判断されます。
つまり,「注意義務違反」があると判断されるのは,「予見可能性」があったうえで,「回避義務」があったと判断される場合に限定されるということです。
では,次に「予見可能性」とは何かということになりますが,言葉からもわかるかもしれませんが,「事故等損害を発生させるような危険な事象の発生を,その事象が発生する前に予想することができたかどうか」ということです。
もっと細かくいうと,「注意義務違反」が認められるには,「予見可能性」があったうえに「予見義務(予見する義務)」があったことが必要です。
最後に「回避義務」とは,「予見した危険な事象に対し,その事象が発生する前に対処し,その事象の発生を回避する義務」です。
これも細かく言うと,「回避可能性(回避できる可能性)」があることを前提としたうえで「回避義務」の有無を判断することとなります。
ただ,言葉で説明すると簡単なようですが,これらを具体例で判断した場合は,「注意義務違反」の有無の判断は極めて微妙な判断となります。
そして,実際,東日本大震災関係の津波被害に関する裁判でも,大川小学校とは異なり,管理者側に「注意義務違反」がないと判断された事例もあるのです。