交通事故の基礎知識~過失割合(3)~
交通事故でそれなりのお怪我がある場合,問題となってくるのが「症状固定」です。
しかし,「症状固定」等という言葉は,多くの方は聞かれたことはなく,交通事故にあって,初めて聞かれる言葉だと思います。
ただ,交通事故の解決では,「症状固定」は非常に大切な概念ですので,何回かに分けて説明したいと思います。
1 「症状固定」の定義~「医学的」に決まるものでなく,「損害賠償」の解決のための決まるもの~
「症状固定」とは,文字通り「症状」(怪我した後の回復過程の状況)が「固定」(変わらない,または,少しは良化する余地はあっても,その良化するスピードがきわめて遅くなった状態)する状態になったことを言います。
つまり,事故後,発生した傷害(怪我)の治療を続けていくと,最初は良くなるスピードが速いですが,ある時期になると,良化する速度は,徐々にゆっくりとなっていきます。さらに,時間が経過してくると,症状が良くなるという方向性が,ほぼなくなって(あるいは,ほとんど横ばい状態になって)しまう時期が来ます。
この「症状」が「固定化」してしまった状態を「症状固定」と言います。
では,「症状固定」は誰が決めるのかということになりますが,それは,争いとなって解決がつかない場合は,最終的には,「裁判所が決める」ことになります(決して加害者(保険会社含む)が決めるものではありません)。
「お医者さん」ではなく,「裁判所」が決めるというのがポイントです。
つまり,事故から1年,あるいは,2,3年経過しても,「まだ治っていない」とか「主治医は,まだ治るから治療を続けると言っている」とか言われる方はいますが,そんなことを言ってしまうと,いつまでも,損害賠償という法的関係が解決せず,不安定な状態が続きます。
そこで,ある程度の期間が経過した時点で(但し,逆にあまり短すぎると,まだ改善の余地があるとみられますので,最低でも事故後6か月は経過しないと,症状固定として「後遺障害」は認定されません),かつ,あまり症状の改善がみられないような状態になった時を「症状固定」した時点と決めるのです。
そして,その上で,「症状固定」した時点における,「後遺障害」の有無と「後遺障害」があるとした場合の「等級」を決めていくのです。
ですので,「症状固定」とは医学的な概念ではなく,交通事故の損害賠償関係の解決のための「基準点」にすぎないと考えてください。
では,何を決するための「基準点」かということになりますが,これは次回に書きます。