症状固定とは(1)

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:交通事故理論

交通事故でそれなりのお怪我がある場合,問題となってくるのが「症状固定」です。

しかし,「症状固定」等という言葉は,多くの方は聞かれたことはなく,交通事故にあって,初めて聞かれる言葉だと思います。

ただ,交通事故の解決では,「症状固定」は非常に大切な概念ですので,何回かに分けて説明したいと思います。

1 「症状固定」の定義~「医学的」に決まるものでなく,「損害賠償」の解決のための決まるもの~

「症状固定」とは,文字通り「症状」(怪我した後の回復過程の状況)が「固定」(変わらない,または,少しは良化する余地はあっても,その良化するスピードがきわめて遅くなった状態)する状態になったことを言います。

つまり,事故後,発生した傷害(怪我)の治療を続けていくと,最初は良くなるスピードが速いですが,ある時期になると,良化する速度は,徐々にゆっくりとなっていきます。さらに,時間が経過してくると,症状が良くなるという方向性が,ほぼなくなって(あるいは,ほとんど横ばい状態になって)しまう時期が来ます。

この「症状」が「固定化」してしまった状態を「症状固定」と言います。

では,「症状固定」は誰が決めるのかということになりますが,それは,争いとなって解決がつかない場合は,最終的には,「裁判所が決める」ことになります(決して加害者(保険会社含む)が決めるものではありません)。

「お医者さん」ではなく,「裁判所」が決めるというのがポイントです。

つまり,事故から1年,あるいは,2,3年経過しても,「まだ治っていない」とか「主治医は,まだ治るから治療を続けると言っている」とか言われる方はいますが,そんなことを言ってしまうと,いつまでも,損害賠償という法的関係が解決せず,不安定な状態が続きます。

そこで,ある程度の期間が経過した時点で(但し,逆にあまり短すぎると,まだ改善の余地があるとみられますので,最低でも事故後6か月は経過しないと,症状固定として「後遺障害」は認定されません),かつ,あまり症状の改善がみられないような状態になった時を「症状固定」した時点と決めるのです。

そして,その上で,「症状固定」した時点における,「後遺障害」の有無と「後遺障害」があるとした場合の「等級」を決めていくのです。

ですので,「症状固定」とは医学的な概念ではなく,交通事故の損害賠償関係の解決のための「基準点」にすぎないと考えてください。

では,何を決するための「基準点」かということになりますが,これは次回に書きます。

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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