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笠中晴司

交通事故のトラブルを解決に導く法律のプロ

笠中晴司(かさなかせいじ) / 弁護士

丹波橋法律事務所

コラム

症状固定とは(2)

2016年4月5日 公開 / 2017年3月3日更新

テーマ:交通事故理論

コラムカテゴリ:法律関連

2 「症状固定」時点で何が決まるか。

(1)「後遺障害」の有無とその等級が決まります。

「事故による後遺症」という言葉が一般的にはよく使われます。
しかし,損害賠償の実務では,「後遺症」という言葉は使うことはなく,
「後遺障害」という言葉を使います。
   
簡単に説明すると,「後遺障害」とは,「事故による後遺症」のうち,
「症状固定」した時点以降に発生する損害(大きなものは「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」,
詳しくは次回)の賠償請求をできるだけの基準を満たしたものということになります。

そして,その基準は,事細かに決められていて,
1級(一番重い後遺障害)から14級(「後遺障害」が認められるものの中では一番軽いもの,
むち打ちなどで,痛みが残る場合は,後遺障害が認められるとしても,ほとんどは14級に止まる)まで,
14段階に分かれています。

その等級がなぜ決められているかというと,その等級により,
慰謝料の金額と逸失利益の金額が決まっているからです。

ですので,「後遺障害」の有無と,その等級の決定は,
損害賠償の金額を決定するうえで,非常に大きな要素となります。

そして,その「後遺障害」の有無とその等級を決定するのが,「症状固定」の時点なのです。

つまり,「症状固定」の時点での症状を検討し,その症状が「後遺障害」に該当するのか否か,
該当する場合は,何級となるのかが,決せられるということです。

(2)「症状固定の時期」=「交通事故による怪我の治療としての相当期間」

すでにご説明しているとおり,「症状固定」とは治療をしても,症状の改善が(ほとんど)見られない状態です。

とすると,医学的には違うと思いますが,損害賠償の実務では,
「治療をしても意味がない」≒「治療費を交通事故の損害として認めない」と考えられてしまいます。

したがって,訴訟でも,症状固定日が決まると,
原則として,その日以降の治療費は損害として認められません
(例外として,かなり重篤な症状等で,その状態を維持するのに必要な治療費の部分は認められます。
たとえば,腎臓を患って透析が定期的に必要な場合等)。

また,受傷して治療がされると,その期間や治療回数に対応した慰謝料が支払われます。
そして,その期間は,「症状固定」までの期間ということになります。

よって,「症状固定」までの期間が短くなると,現実には治療をしていたとしても,
その分の治療費が相手に請求できなくなります。

さらに,慰謝料が低い金額しか認められないということになるのです。

(3)損害額の算定は,「症状固定」した時点を基準に,その前の損害とその後の損害と分けて,算定していきます。

「症状固定」した時点を基準に,各項目の金額を決定するという意味は,
「症状固定」の前に発生した損害と「症状固定」の後に発生する損害
(将来分も含めて)と分けて,各項目を算定するということです。

 このあたりは,具体的に説明しないとわからないと思いますので,
次回は,事例を挙げて,各項目につき,説明していきたいと思います。

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