交通事故体験記12~発生から示談成立まで~

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:個人ネタ

1 相手方保険会社からの提示~「慰謝料の金額とは」~

  今回の争点は,ほぼ慰謝料の金額のみでした。

  つまり,私の場合,通院期間50日間(実通院回数,整形外科7回,接骨院14回)の慰謝料をいくらと評価するかということです。

  実は,この慰謝料の金額というのが,一番,「保険会社の提示と裁判で認められる金額の間にかい離が大きい」部分で,かつ,「基準がいくつかあってわかりづらい」部分なのです。

  なぜなら,慰謝料は,「事故による怪我,そして,その後の治療に関する痛み」であるとか,「治療が必要になったことにより発生した生活上の支障やそれに伴うストレス等」の精神的苦痛を,お金で賠償するものです。
  しかし,精神的苦痛というような精神的な問題をお金に換算することは極めて難しいことはご理解いただけると思います。

  ですので,その金額については,「支払をできれば抑えたい」保険会社の考えと「実際に被害を受けた」被害者側の考えでは,大きな評価の差が出るのです。

  ただ,それでも,ある程度の基準がないと,交通事故の損害賠償は解決しないので,実際には,慰謝料の金額には基準が決められています。

  すなわち,慰謝料の基準は,低いほうからいって,おおむね次の4つの基準があると言われています。

  ① 自賠責保険で認められる金額
     具体的には,実通院回数×4200円が原則です。
     ただ,「実通院回数が少なく」,かつ,「通院期間の2倍に及ばない」,場合等は,
     さらに,上の計算から,「×2」にして算定される場合があります。

  ② 任意保険会社が設定している基準
     自賠責保険の基準より,少し上乗せした金額です。
     しかし,その基準金額は,保険会社ごとに異なっていて,ハッキリしません。
     実際,私が,依頼者の事件でみる保険会社の提示金額を見ても,保険会社が,
     どのように計算して,慰謝料の金額を出してきているかは,正直なところ,わかりません。

  ③ 任意保険会社が,相手に弁護士がついたときに出してくる基準
     私たち弁護士が入ると,相手方保険会社は,「最初に弁護士がついていない時点で出していた
     金額(①か②)」より,「少し上の基準」で計算して,慰謝料を出してくることが多いです。
     しかし,その基準をどのように設定しているかは,②と同じく,わかりません。

  ④ 裁判所が使用している基準    
     裁判所は,主に入院及び通院期間(①の実通院回数と異なり,治療をしていた期間で決められる
     ことにご注意ください)を元に,慰謝料を決定しています。
    
     そして,その金額は,機械的に,入院期間と通院期間によって,表のような形で作成された形で
     決まっており,その表は,弁護士には事実上,公開されています。

     ですので,この基準は,①と同様,ハッキリしています。

 そして,基準がハッキリしている,①と④の間には,下手をすると「倍か,倍以上」の金額的かい離があるのです。

 この差を埋めるのが,実質的には弁護士の役割という事件も多数存在します。

 その前に,この基準さえ,一般の方はご存じないと思いますので,保険会社から,慰謝料の提示を受けた場合は,まずは,それを弁護士に見せて,相談されるのが良いと思います。

 弁護士は,「その金額が妥当なのかどうか」,そして,「弁護士を入れた場合,アップが期待でき,弁護士費用を考慮に入れても,実際に被害者の方に入るお金を増やすことができるのかどうか」を検討して回答することになります。

 なお,弁護士費用については,ご自身の保険に弁護士費用特約があり,その利用が可能な場合は,考慮に入れる必要はありません。

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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