交通事故の基礎知識~過失割合(1)~

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:交通事故理論

交通事故でよく問題になるのが,双方の過失の割合です。

「7:3」とか「5:5」とか「10:0」とかいうものです。
  
でも,その過失割合をなぜ決定する必要があるのか,そして,その意味を正確に理解されていない方も結構います。

まず,過失割合が問題とされるのは,過失割合により,相手から賠償を受ける(逆に相手に賠償しないといけない)金額が異なってくるからです。

つまり,交通事故で損害が発生した場合,その損害をどのように負担するのかという問題が発生します。

その双方の負担割合を決めるのが,「過失割合」なのです。

ですので,「過失割合」は必ず,双方あわせて100%となるように決めます。

では,具体的にはどのように配分するのでしょうか。

以下例を設定してみてみましょう。
  自身に発生した損害額  100万円
  相手に発生した損害額   30万円

(1)  自身の過失割合      30%
    相手の過失割合      70%の場合

     自身の負担する損害額
       (100万円+30万円)×0.3=39万円
     相手の負担する損害額
       (100万円+30万円)×0.7=91万円

     上記のように,過失割合に応じて,損害を負担することとなります。

     具体的にいうと,自身は39万円を持参し,相手は91万円を持参して,損害の総額である130万円
     を作る。
     そのうえで,各損害分を振り分け,自身は100万円を取得し,相手は30万円を取得する。

     ただ,これでは,手続きが回りくどいので,最初から,相殺をして解決する,つまり,
     自身が相手から61万円(100万円-39万円)をもらうだけで処理をしてしまうというのが,
     普通です。

     以上が基本の考え方です。

     ただ,上の考え方は,保険会社が入って,支払いの処理をしてくれる場合には,かえって
     わかりづらい考え方で,
     次のように考える方が,わかりやすいかと思います。

     自身が相手からもらえる賠償額
       100万円×(1-0.3)=70万円
     自身が相手に支払う賠償額
        30万円×0.3   = 9万円

     つまり,自分の過失分は,相手に対して請求できないということです。
     ですので,相手に支払う分9万円を自身の保険会社に支払ってもらえば,相手からもらえる金額は
     70万円となります。

     しかし,自身の保険を使うと,保険料がアップすることがありますので,9万円くらいだと保険を
     使わずに処理することも多いです。
     そして,その場合は,差し引きした金額61万円を相手からもらうだけで,相手には支払わない
    (保険も含めて)という処理がされます(当然ですが,上記と同じ結果です)。

(2)  自身の過失割合      50%
    相手の過失割合      50%の場合

     自身の負担する損害額
       (100万円+30万円)×0.5=65万円
     相手の負担する損害額
       (100万円+30万円)×0.5=65万円

     過失割合「5:5」のケースは,
     「過失がイーブンだから,お互いに相手の損害を支払わず,自分の損害を自分が負担するだけで
    解決できる」 とよく誤解されます。
     
     しかし,現実は,(1)の例と同じく,まず損害の合計額を出して,それを過失割合に応じて配分する
     ので,上記負担をすることとなります。
     ですので,自身も相手も65万円を持参し,130万円を作る。
     そのうえで,各損害分を振り分け,自身は100万円を取得し,相手は30万円を取得する。
     最初から,相殺をすると,自身が相手から35万円(100万円-65万円)をもらうだけで処理する
     こととなるということです。

     もし,この場合で,相手への支払い分をもし,保険を利用するとすると,次のとおりとなります。

     自身が相手からもらえる賠償額
       100万円×(1-0.5)=50万円
     自身が相手に支払う賠償額
        30万円×0.5   =15万円

過失について,だいたいご理解いただいたでしょうか。

次は,過失についての誤解される表現である「もちわかれ(自損自弁)」や「片方の損害が極端に多いケースで生じるレアケース」について説明します。

(続く)
     
   
 

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

交通事故のトラブルを解決に導く法律のプロ

笠中晴司プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼