症状固定とは(4)
交通事故でよく問題になるのが,双方の過失の割合です。
「7:3」とか「5:5」とか「10:0」とかいうものです。
でも,その過失割合をなぜ決定する必要があるのか,そして,その意味を正確に理解されていない方も結構います。
まず,過失割合が問題とされるのは,過失割合により,相手から賠償を受ける(逆に相手に賠償しないといけない)金額が異なってくるからです。
つまり,交通事故で損害が発生した場合,その損害をどのように負担するのかという問題が発生します。
その双方の負担割合を決めるのが,「過失割合」なのです。
ですので,「過失割合」は必ず,双方あわせて100%となるように決めます。
では,具体的にはどのように配分するのでしょうか。
以下例を設定してみてみましょう。
自身に発生した損害額 100万円
相手に発生した損害額 30万円
(1) 自身の過失割合 30%
相手の過失割合 70%の場合
自身の負担する損害額
(100万円+30万円)×0.3=39万円
相手の負担する損害額
(100万円+30万円)×0.7=91万円
上記のように,過失割合に応じて,損害を負担することとなります。
具体的にいうと,自身は39万円を持参し,相手は91万円を持参して,損害の総額である130万円
を作る。
そのうえで,各損害分を振り分け,自身は100万円を取得し,相手は30万円を取得する。
ただ,これでは,手続きが回りくどいので,最初から,相殺をして解決する,つまり,
自身が相手から61万円(100万円-39万円)をもらうだけで処理をしてしまうというのが,
普通です。
以上が基本の考え方です。
ただ,上の考え方は,保険会社が入って,支払いの処理をしてくれる場合には,かえって
わかりづらい考え方で,
次のように考える方が,わかりやすいかと思います。
自身が相手からもらえる賠償額
100万円×(1-0.3)=70万円
自身が相手に支払う賠償額
30万円×0.3 = 9万円
つまり,自分の過失分は,相手に対して請求できないということです。
ですので,相手に支払う分9万円を自身の保険会社に支払ってもらえば,相手からもらえる金額は
70万円となります。
しかし,自身の保険を使うと,保険料がアップすることがありますので,9万円くらいだと保険を
使わずに処理することも多いです。
そして,その場合は,差し引きした金額61万円を相手からもらうだけで,相手には支払わない
(保険も含めて)という処理がされます(当然ですが,上記と同じ結果です)。
(2) 自身の過失割合 50%
相手の過失割合 50%の場合
自身の負担する損害額
(100万円+30万円)×0.5=65万円
相手の負担する損害額
(100万円+30万円)×0.5=65万円
過失割合「5:5」のケースは,
「過失がイーブンだから,お互いに相手の損害を支払わず,自分の損害を自分が負担するだけで
解決できる」 とよく誤解されます。
しかし,現実は,(1)の例と同じく,まず損害の合計額を出して,それを過失割合に応じて配分する
ので,上記負担をすることとなります。
ですので,自身も相手も65万円を持参し,130万円を作る。
そのうえで,各損害分を振り分け,自身は100万円を取得し,相手は30万円を取得する。
最初から,相殺をすると,自身が相手から35万円(100万円-65万円)をもらうだけで処理する
こととなるということです。
もし,この場合で,相手への支払い分をもし,保険を利用するとすると,次のとおりとなります。
自身が相手からもらえる賠償額
100万円×(1-0.5)=50万円
自身が相手に支払う賠償額
30万円×0.5 =15万円
過失について,だいたいご理解いただいたでしょうか。
次は,過失についての誤解される表現である「もちわかれ(自損自弁)」や「片方の損害が極端に多いケースで生じるレアケース」について説明します。
(続く)