京都八百一本館
「弁護士に依頼さえすれば,うまく行く」
そんなことはありません。
十分な成果を得るには,依頼者の力が不可欠です。
たとえば,今まで色々と問題になっている薬害訴訟やえん罪事件の再審請求事件。
それらの問題では,事件を担当した弁護士が頑張って成果を得たという部分ももちろんありますが,まずあるのは,被害回復のため,世間の冷たい目にさらされながらも頑張られた薬害被害者やえん罪被害者の力が大きいと思います。
それは,裁判の結論を出すまでの流れからも当然のことです。
つまり,裁判の結論を出す過程において,まず判断されるのは,法的な考え方ではなく,事実関係そのものです。
裁判の流れは,まず,「事実関係を確定」した後に,その「確定した事実関係」をどのように法的に評価するのか(⇒そのうえで結論を出す)という構造になっているのです。
また,これは,私の感覚であり,裁判の実態とは異なるかもしれませんが,事実関係により「この人を救おう」と最初に裁判官に思ってもらうことができれば,裁判官は「法的な評価」を多少こじつけてでも,その人を勝たせてくれることもあると思います(「法的にはこうなる」「判例はこうなっている」から「ダメなものはダメ」という判断をする「人情味のない,法的コンピューターのような裁判官」より,まずは「この人を助けたい」という判断をしてくれる「人情や常識のある裁判官」が多数いることを私は望みます)。
もっと具体的にみてみましょう。
依頼者から事件の依頼を受けた弁護士は,問題を解決するための方針を立てます。
しかし,裁判では,方針や理屈だけでは勝つことはできず,それよりも事実関係を明らかにする証拠が大切となります。
理由は,先ほど述べたとおり,いくらきれいな理屈を並べたてても,その前の事実関係の認定が異なると,その理屈は考慮されることさえないからです。
では,証拠を用意するのは,弁護士でしょうか,それとも,依頼者ご本人でしょうか。
答えは,「弁護士が用意する証拠もあるが,弁護士の助言により,依頼者ご本人が用意するものが多い」です。
これだけの説明でも,「依頼者の力」がどれほど大きいものであるか,そして,依頼者と弁護士の協力関係(=パートナーシップ)が大切なものかはご理解いただけると思います。
よって,「依頼者の信頼を得てパートナーシップを形成」し,「『依頼者の力』を最大限に引き出すことができる弁護士」,それは,「凄い弁護士」と言えることは間違いないと思います。
次の回からは,交通事故の事案の解決までの流れを見て,弁護士と依頼者の役割分担とパートナーシップの形成の過程を確認してみたいと思います。