日本版DBS 第6回 「不適切な行為」を職場でどう定めるか
ここでは、子どもに対する性暴力を防ぐための社内制度について見ていきます。
相談体制
性暴力や不適切な行為が起こってしまった時のための相談窓口を設けます。
子どもや保護者が利用できる相談窓口
子どもや保護者にとって第一の相談相手は担任や部活の顧問であることが多いと思います。子どもにとっても保護者にとっても、一番身近で自分たちのことをわかってくれる人ですからね。しかし、性暴力や不適切な行為は担任や部活動の顧問など、日頃身近に接する職員自身が行為者である可能性もあるため、行為者に相談するのはハードルが高いです。そこで、学年主任や教頭、スクールカウンセラーなど複数の職員にも相談できるようにします。
職員が利用できる窓口
職員については、管理職が窓口になるでしょう。しかし、その管理職が行為者である可能性もあるため、ほかの管理職など複数の窓口を設けます。従事者以外の職員も含めて、子どもに対する性暴力の事実を知ったあるいは疑いを持った場合の報告ルールを定めておく必要があります。また、他人の性暴力や不適切な行為だけでなく、自分がそういった行為をしてしまうかもしれないと思った時の相談も受け付ける窓口でもあることが望ましいでしょう。
いずれの場合でも、相談者のプライバシーを尊重し、情報共有は子どもの安全確保と事案対応に必要な範囲に限定します。相談したことを理由とする不利益な取扱いは禁止します。
チームによる対応
相談を受けたら、事実確認、被害生徒児童の保護、場合によっては警察や児童相談所などとの連携も考えなければなりません。事業主や管理職、現場職員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどを含めた委員会を組織し、チームで対処します。個人的に対処することは避けましょう。また、証拠や記録の保全もとても重要です。こういった対処についても、ルール化しておきます。
聞き取りの注意点
なお、被害が疑われる児童生徒や保護者、関係職員に対しての聞き取りは、とにかく事実を知ることが目的です。そのために以下の点に注意します。
- その場で、された行為が性犯罪や不適切な行為に当たるかどうかの判断をしない
- 時間をかけない
- 誘導にならない
- できるだけ、同じ質問を違う人がしない
- 児童生徒を責めるような言い方(「あなたにも原因がある」など)をしない
懲戒
その行為が懲戒に値すると判断された場合は、通常の懲戒手続に進みます。この委員会メンバーは、そのまま懲戒委員会メンバーにならなくてもけっこうです。この委員会は、懲戒を目的にしたものではなく、被害生徒児童とその保護者やクラス、学年などでその行為によって被ったダメージを修復するためのものです。目的が違うため、必ずしも同じメンバーでなくてもいいのです。
事後ケア
性犯罪や不適切な行為があったと認められた場合、その職員の処分と同時に、被害生徒児童と、クラスや学年、学校全体の児童生徒のケアが必要になります。また、大きな事案になると、保護者への説明会の開催も考えなければならないこともあります。そうなると、一部の職員や管理職の負担が大きくなり、職員の健康が損なわれ、ほかの業務に差しさわりが出たりすることも起こりえます。会社全体で対処する体制づくりをしなければなりません。日ごろから、事態を想定した訓練をしておくことも必要でしょう。
ことが起こらないように
性犯罪や不適切な行為は、起こらないことが一番大事です。起こった時の対処と同じように、起こる前の対処も重要です。
研修
職員研修
子どもに対する性暴力が、子どもにとって重大なダメージを与えること、性犯罪や不適切な行為はどのようなものか教えます。さらに、適切な行為についても教えます。これは、グループワークで、ロールプレイングなどが効果があります。さらに、性犯罪や不適切な行為をしてしまう心理についても考え、行為に至らないためにはどうすればいいか、セルフチェックや適切な行為選択を考えます。これも、ロールプレイングなどが効果的でしょう。
児童生徒と保護者
児童生徒に対しても、性被害についての理解や対処の仕方などを、発達段階にあわせて指導しておくことも大事です。さらに保護者に対しても、子どもの性被害についての理解と対処についての講演会などを開催することもいいでしょう。
相談
子どもや保護者が信頼できて何でも話せる職員を作ることです。通常は担任がその役目を担いますが、担任が行為者であるケースも多いため、ほかの職員もその役割を担うことが大事です。担任以外の職員が、日ごろから児童生徒や保護者と交流する場を設けること、クラス管理を担任以外の職員も担う体制を作ることが大事です。
職場環境
過重労働や孤立を防ぎ、職員が困り事を相談できる職場環境を整えることは、職員が適切な判断と行動を維持するうえで重要です。さらに、職員個人が大きな権力を持ってしまうと、リスクが高くなります。特に部活動の場合、部活動でも成績が進学や進路につながることが多いため、顧問の権力が強くなりがちです。部活の運営を複数人で分担して行うようにする、顧問の行為について外からチェックするなどの対策が必要でしょう。なお、職員間でも同じです。力がある職員には、否定したり意見を言ったりすることができにくくなります。そうなると、相談窓口があっても相談できなくなります。個人に権力が集中しないような体制を作ること、そして誰もが意見を言えるような、心理的安全性を確保することが重要です。
こども家庭庁では、報告ルール・対応ルール・就業規則等のひな形を公開しています。
ひな形


