日本版DBS 第10回 DBSだけでは子どもを守れない――運用と制度の限界
不適切な行為
職場内で子どもに対する性暴力を防ぐためには、特定性犯罪事実該当者を対象業務から外すだけでは足りません。それは、確認対象となる前科を有する人の再犯を防止するだけで、初犯防止には役に立たないからです。また、性暴力だけでなく、性暴力そのものではないものの、継続・発展することにより性暴力につながり得る行為もまた子どもを傷つける行為であり、将来の性暴力を防ぐためにも、なくしていかなければなりません。ここでは、性暴力ではないが将来性暴力になり得る行為を「不適切な行為」として説明します。
不適切な行為とは
不適切な行為についてガイドラインでは次を例示しています。
- 不適切な身体接触 必要ないのに体に触ることです。世間話をしているときに、肩を抱く、手を握るなどがあたります。
- 私的な連絡 教育などに関係ないことを連絡しあうことです。教育などに関係ないことで、遊びに行く約束をしたりすることがあたります。なおこれは、ラインやインスタのDMなどを通じて行われることが多いです。
- 秘密の共有 2人だけの秘密を持つことです。子どもの秘密を握ることで子どもが大人の要求を断れなくなります。また、2人の秘密を持つことで特別な関係を意識させ、性暴力などに至るケースが多くあります。
- 特別扱い いわゆる「えこひいき」です。もちろん、えこひいきすること自体、性暴力に至らなくても不適切な行為です。性暴力との関係では、ひいきをされた子どもは、大人の要求を断れなくなり、性暴力も受け入れざるをえなくなります。
さて、以上をお読みになって、どんな感想をお持ちになるでしょうか。「当然だ」と思われる方もおられるでしょうし、逆に「冷たい」とお思いになる方もおられるでしょう。これらは、実際一昔前では当然のようにされていたことです。違和感を持たれるのも当然です。
また、小さい子は、まだスキンシップが必要なこともあります。「体に触れてはいけない」となると、泣いて抱き着いてくる子を拒否しなきゃいけなくなる。また、突然の危険を避けるために子どもを抱き上げることもあります。さらに、体操などの指導で、子どもを支えるために体に触ることもあります。「身体接触は一律にダメ」にはできないのですね。
現場とよく相談して
教育や福祉の現場では一律に制限することができない事情があります。ガイドラインでは、一律に制限できない事情をじゅうぶんに含んだうえで、現場職員とよく相談するよう求めています。同じ学年でも、児童生徒によって発達や生育環境は違います。その子に必要な処遇をするということは、行為の制限もその子によって違うことになります。その事情を一番知っているのは、現場の先生です。
このように、まず職場共通の基本的なルールを定め、そのうえで、子どもの年齢、発達や障害の状況、支援上の必要性などに応じて、必要な例外とその手続を具体化することが大切です。
好ましい行為
なお、ガイドラインでは、制限すべき行為だけでなく、好ましい行為についても考えていくことをすすめています。ケースにあわせて、具体的で適切な行為をみんなで考える研修などが効果的でしょう。


