日本版DBS第2回 どの事業者が対象になるのか
ここでは、採用予定者や現に勤務している職員が特定性犯罪事実該当者であることがわかった場合について、少し詳しく見ていきます。
特定性犯罪事実該当者は「おそれ」があるものとみなす
子どもに対する性暴力をする「おそれ」がある職員は、対象業務につけてはいけません。そこで問題になるのは、特定性犯罪事実該当者が、この「おそれ」があるものであるかどうかです。法では、特定性犯罪事実該当者は「おそれ」があるものであると規定していません。つまり、特定性犯罪事実該当者を対象業務につけてはいけないと明記していないということです。
一方で、通常は、特定性犯罪事実該当者は「おそれがある」ものと認めてもよいとガイドラインにも書かれていますし、これは一般的な感覚にもあうでしょう。法律上は個別事情を踏まえて「おそれ」を判断する仕組みですが、ガイドラインは、特定性犯罪事実該当者について「おそれがない」と判断できる事情は想定しがたいとしており、通常は「おそれがある」と判断することになります。
そのため、対象業務から外す措置が必要になります。就業規則などに、特定性犯罪事実該当者である職員は、対象業務につかせないこと、特定性犯罪事実該当者であることがわかったら、配置転換などをすることを就業規則に明記することになります。
児童生徒や保護者への対応
ただ、配置転換などをした場合、児童生徒や保護者には、それをどう説明すればいいでしょうか。特定性犯罪事実該当者であることは、特に慎重な管理が必要な情報であり、児童生徒や保護者に知らせることはできず、職員間でも、防止措置や雇用管理に必要な者以外には知らせてはいけません。個人情報保護の観点からも、対策を決めておかなければなりません。さらに、児童生徒や保護者、職員間で「うわさ」が流れた場合についても、個人情報を守ることを前提に、対策を考える必要があります。
配置権濫用法理
特定性犯罪事実該当者であれば配転される旨の誓約書があり就業規則に配転することが明記されていても、その配転が
- ①配置転換命令に業務上の必要性が存在しない場合
- ②配置転換命令が不当な動機や目的をもってされた場合
- ③配置転換命令が労働者に著しい不利益を負わせる場合
に該当すれば、裁判で認められない場合があります。これを、配転権濫用法理といいます。配転権を濫用しているとみなされると、配転が認められず、元の業務につかせなければなりません。
もっとも、特定性犯罪事実該当者については、通常、児童対象性暴力等が行われる「おそれ」があると判断されるため、対象業務から外す業務上の必要性は認められやすいと考えられます。ただし、配転先や労働条件の変更によって本人にどの程度の不利益が生じるかなどについては、個別に検討する必要があります。
職務限定
職員の中には、「先生の仕事をする」など職務限定の契約で働いている人もいるでしょう。職種や業務を限定する合意がある場合、使用者が本人の同意なく限定外の業務へ配置転換することは、原則としてできません。その場合は、本人の同意を得た配置転換の可能性を検討し、それも困難なときには、解雇等の可否を労働法令に従って慎重に判断する必要があります。また、職務限定の契約であるとはいえ、実際は限定職務以外もやっているとかのケースもあるでしょう。そうであれば実質職務限定とはみなされず、配置転換の考慮なしで解雇は認められにくくなります。


