インソールを作る際の注意点

最近、他の専門店や専門業者でインソールを作ったという方のお問い合わせやご質問が多いのですが、つい先日、なんと1足13万円でインソールを作られたというご婦人が「話だけでも聞きたい」とご来店されました。

このご婦人は、「足の裏の痛みと膝の痛み」があったので、ご近所の整形外科を受診されたらしいのですが、あまり症状の改善がみられないまま長年悩んでいたところ、インソールで足の調子が良くなったという触れ込みの催し物が開かれるという話を聞きつけ、興味を持って参加したのだそうです。
そして、勧められるがままに、1足13万円もする高額なインソールを作られてしまったというわけです。
それでも、足や膝の痛みが緩和されたのであれば、なんとか納得できたのでしょうが、結果としては効果が得られなかったという悲しい結末になったので、だからこそ、「話だけでも聞きたい」と 当相談室を訪れたのです。

このご婦人の足元を見て最初に気づいたのは、靴底が柔らかそうな軽量で靴先がややスリムなスニーカーを履いていらっしゃるという事です。
そして靴を脱いで頂き、足を拝見すると、なんと5本指ソックスを着用されていました。
けれども、このスニーカーを履いていたのでは5本指ソックスの足指の動きを促進するという効果が、スリムな靴先で閉じ込められて意味がなくなってしまいます。
脱がれたスニーカーの中には、作られたというインソールが入っていました。

そのインソールを拝見して咄嗟に感じたのは、「どうしてこのインソールが13万円もしたのだろうか？」という素朴な疑問です。
私の目には、とてもそんな手の込んだ作りのインソールには見えませんし、そもそも、どんなに精巧に作り込んだとしても、4万円を超えるインソールなど考えられません。
凄く悲惨な現実を見てしまったような、とてもお気の毒だと思う感情が湧いてきました。

「ところで、このインソールを作られるにあたって、足や膝を調べた結果の所見とは、どのようなものでしたか？」とお尋ねすると、「何だかいろいろな道具を使って足型を採ったりして、足にぴったりのインソールを作るという説明だったんですが・・・。」とご婦人。
結局、足や膝の痛みの原因はよく分からないまま、言われるがままにインソールを作られたという事のようでした。
足の痛みの原因を調べ、ご本人にも分かり易く所見を説明して理解して頂き、その所見に沿ったテストシューズやテストインソールを実際に試して頂きながら、実感による納得を得て製作するという手順を経ている当相談室からすれば、なんていい加減な手順なのだろうと呆れるばかりです。



「取り敢えず、お話ばかりでは理解できないでしょうから、簡単に足を見た結果でテストシューズを仕立てますので、実際に履いて歩いて判断してみて下さい。」と説明して、ご婦人の足のバランスを診たうえで、簡単なサポートを組み込んだテストシューズを履いて歩いて頂きました。
「うわーっ、何だか全然違う。やだー、痛くなく歩ける。」とご婦人。
次に、ご婦人の履いて来たスニーカーにテストインソールを入れて、履いて歩いてもらいました。
「やだーっ、何これ、全然違う。」とご婦人。
「ということで、インソールや靴を作る際には、ご自身の足の痛みの原因を調べ、何が原因なのかをご自身が理解して納得される事が一番大事だと思いますよ。」と私。
「分かりましたけど、では、私どうしたら良いのでしょう？」とご婦人。
「どうしたらと言われても、話だけでも聞きたいとの事でしたので、私の専門的な立場から意見を述べさせて貰いましたが、後はご自身で判断して頂くしかないと思います。」と私。
「分かりました。暫く考えてみます。」と言って、ご婦人はお帰りになりました。

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