心筋梗塞とマグネシウム
高血圧や慢性腎臓病の方には「減塩」を指導させて頂く機会が多くあります。しかし「塩」といってもさまざまであり、適切な「減塩」というのは難しいのです。なぜなら本当の「塩」は人間にとって必要だからです。また日本は四方を海に囲まれているため海水しか塩資源がなく、塩分の薄い海水から苦労して製塩してきた歴史があります。「敵に塩を送る」ということわざもあり、日本人にとって塩は特別に大切なものなのです。
今、よく使用するのは「食塩」であり99%以上が塩化ナトリウムです。しかし、以前の塩田により得られた粗塩にはマグネシウムやカリウムなどのミネラルが含まれていました。これは1972年の塩田廃止により、粗塩から精製塩に切り替わったことが影響しています。とくにマグネシウムにはさまざまな効果があり、高血圧やメタボリックシンドロームの予防にも効果が報告されているのです。
降圧効果について
https://mbp-japan.com/kagoshima/aitokukai/column/5108808/
メタボリックシンドローム予防について
https://mbp-japan.com/kagoshima/aitokukai/column/5105934/
にがり
にがりは海水から採塩した後に残る溶液で、海水中のミネラルが濃縮されて含まれています。海水濃縮を蒸発法またはイオン交換膜電気透析法で行うかによってにがりの組成は異なってきます。にがりの主成分は塩化マグネシウムですが、他に塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムが含まれています。ミネラル摂取源として利用する場合はイオン交換膜製塩にがりの方が優れていると考えられます(にがり成分は塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムの順に少なくなる)。
塩・にがりからどれくらいミネラルが摂取できるか?
日本人の食塩摂取量調査では1日11g程度であり、そのうち調味料の食塩としての摂取量はその10%であるので1日に1g程度を摂取していることになります。食塩1gを製造するには海水40mlが必要であり、海水の40分の1が「にがり」となるので、「にがり」1mlは海水40mlに相当すると考えられます。したがって
食塩1g=にがり1ml=海水40ml
この量ではマグネシウムが54.1mg摂取でき、粗塩や「にがり」はマグネシウムの補充に有効だと考えられます。言い換えると、精製塩ではマグネシウムやその他のミネラルはほとんど摂取できないのです。
精製塩から精製塩ではない「塩」に変えてみると、今まで足りなかったミネラルの補充が期待できます。それはさまざまな効果をもたらす可能性があります。
【食塩と生活習慣病】食塩の種類とその違い
橋本 壽夫(東海大学 海洋学部)
成人病と生活習慣病 (1347-0418)39巻3号 Page245-252(2009.03)