秋は深まりつつ、忙中閑あり
タニザワという老舗が東京・銀座にある。
江戸時代は日本橋で小間物屋を営んでいたが、明治維新の頃、当時日本にやってくる
外国人が持っている「持ち物」に注目し、革製品の製造販売に本業を切り替える。
その後銀座に店を構え、「革つつみ業・鞄」というキャッチコピーと
造語文字の「鞄」を看板に掲げた。
タニザワに掲げられている「鞄」という漢字の原本
ある時、明治天皇が銀座を通った際にその看板が目にとまり、侍従を通して
「何と読むのか?」というご質問を受け、これがきっかけに「鞄」の文字が
全国に広まったと伝えられている。
これが縁で宮内庁御用達の店となり、今でも皇族が使用する鞄を作り続けている。
皇太子殿下がご使用されている同じデザインの鞄
※いずれの写真もタニザワの許可のもと筆者が撮影したもの
1951年、米国平和使節団の一員として訪れたジョン・F・ダレスが持っていた鞄を
ヒントに「ダレスバック」を国内最初に販売もした。
老舗ほど培われた経験と歴史に甘えず、日々の創造と革新の連続を続けている。
そして、その生業は市民権を得ていくのであろう。