コロナ後遺症による熟眠障害と多夢が徐々に改善した一例
「走り出すと、すぐにすねの内側が痛くなる」。この春、そんな声を持って当院を訪れたのは、高校一年生の女子生徒さんでした。中学ではソフトボール部、高校からは陸上部。四月に入って練習量が一気に増えたとたん、両すねの痛みが強くなったといいます。
シンスプリントとは、走る・跳ぶといった運動の繰り返しによって、すねの内側に痛みが出るスポーツ障害のことです。当院にも、この時期になると同じような相談が届きます。
私が鍼灸に携わって約四十年、こうしたすねの痛みは「少し休めば治る」と軽くみられがちですが、実際にはそう単純ではありません。
この生徒さんも、中学の頃から同じ痛みを繰り返していました。当時は接骨院での施術で改善したものの、高校で競技レベルが上がった途端に再発。ご家族の紹介で来院され、「できるだけ練習を休みたくない」というのが、最初にうかがった一番の願いでした。
痛みの正体は骨だけではありません
一般的にシンスプリントは「すねの骨の問題」だと思われがちです。しかし私が初回の評価で必ず確かめるのは、骨よりもまず、ふくらはぎの筋肉の状態です。
この生徒さんの場合も、ふくらはぎを構成する腓腹筋とヒラメ筋に、はっきりとした強い緊張が認められました。この二つの筋肉は、すねの骨と密接につながっています。運動のたびに硬くなった筋肉が骨を引っ張り続ければ、その付着部(筋肉が骨にひっついている部位)に炎症が起きます。痛みの出どころは、骨そのものというより、こうした「引っ張りの繰り返し」にあるわけです。
お話をうかがうと、体育の授業で二十分間走った翌日、痛みがさらに強くなったとのことでした。部活動だけでなく、階段の昇り降りや、しゃがんで立ち上がる動作でも痛む。一方で、安静時や夜間の痛みはありませんでした。
この「動くと痛いが、休むと痛くない」という状態は、負担が下腿に集中しているサインです。そのため、筋肉の緊張をゆるめることを第一に考えました。
成長期の体は、骨と筋肉の速度が違う
中学から高校へ進学した時期は、私がとくに注意して見ているタイミングのひとつです。
成長期には、骨の伸びる速さに筋肉や腱の柔軟性が追いつかないことがあります。そこへ、進学にともなって練習量と運動強度が一気に上がると、体の成長と練習負荷のバランスが崩れやすくなるのは必然です。
この生徒さんが「中学でも同じ痛みを繰り返していた」ことは、単なる偶然ではなく、こうした体の事情が背景にあったと私は考えています。競技レベルが上がって再発したのも、同じ理由です。
私が鍼灸院を開いて長く感じてきたのは、慢性の不調には必ず「積み重ね」があるということです。痛みが出るきっかけは一瞬でも、その手前には冷えや疲労の蓄積、体の使い方の癖がある。すねの痛みも同じで、ある日突然壊れるのではなく、少しずつ限界に近づいていくのです。
練習を続けながら、負担を減らしていく
「休めば治りますよ」と伝えるのは簡単でしたが、高校に入ったばかりで部活動を頑張りたいという気持ちが、この生徒さんからはとても強く伝わってきました。
そこで私が立てた方針は、痛みを取ることだけを目的にせず、競技を続けながら改善を目指すことでした。初回の施術では、次のような組み合わせを行っています。
・低周波鍼通電療法(鍼に微弱な電気を流し、筋肉の緊張をゆるめる施術)
・下腿の筋肉への置鍼(一定時間、鍼を留置する方法)
・長生灸ハードを用いた温熱刺激
・円皮鍼(パイオネックス)による持続刺激
・足裏の「湧泉」への温灸
あわせて、練習中の負担を軽くする目的でテーピングも併用するよう指導しました。施術室を出たあとの時間をどう過ごすかまで含めて、はじめて施術は完結すると考えているからです。
二回目の来院時は、テスト期間中で運動量が減っていたにもかかわらず、痛みに大きな変化はありませんでした。ここが判断の分かれ目です。運動量を落としても改善しないのなら、筋肉の緊張だけが原因ではない可能性がある。そう考え、脛骨神経周囲への低周波鍼通電療法と、腓腹筋への低周波鍼通電療法、さらに腓腹筋へのキネシオテーピングを加えました。筋肉に加えて、神経や筋膜へのアプローチも取り入れたわけです。
我慢して練習を続けると、何が起こるか
経過としては、初回の施術後すぐに劇的な改善があったわけではありません。二回目までの時点では、日常生活にはほぼ支障がなく、運動時に痛みが残る状態でした。競技復帰を目標に、今後も経過を見ながら施術を続けていく予定です。
私が正直にお伝えしたいのは、こうした症例では「一度で全部よくなる」ことは、まずないということです。筋肉の柔軟性を取り戻すことと、運動の負荷に体を対応させていくこと。この二つを、時間をかけて並行して進める必要があります。
だからこそ気になるのが、「少し痛いだけだから」と我慢したまま練習を続けてしまう方が少なくないことです。痛みを押して走り続ければ、疲労骨折など、より重いスポーツ障害へ進行する可能性があります。そうなってから休むほうが、結果として競技から離れる期間は長くなってしまいます。
反対に、早い段階で筋肉の柔軟性を改善し、練習量を調整しながら施術を受けることで、競技への早期復帰につながるケースも少なくありません。
この生徒さんが見せてくれた、練習を休むことへの不安をかかえながらも「続けながら少しでも痛みを軽くしたい」という前向きな姿勢は、私にとっても印象的でした。トキの森鍼灸院が目指しているのは、痛みを消すことそのものではなく、その人がやりたいことをできるようにすることです。走りたい人には、走れる体を。私がこの仕事で一番うれしいのは、その報告を聞ける瞬間です。
運動時のすねの痛みが続くようでしたら、無理をせず早めにご相談ください。当院では、初診時のカウンセリングで体の状態を明確にしたうえで、施術計画を立ててご提案しています。詳しくは当院ホームページをご覧ください。
まとめ
シンスプリントは、我慢して乗り切るものではなく、体の変化に合わせて整えていくものです。早めに手を打てば、競技を続けながら前に進めると私は考えています。
・走ると、すねの内側が痛む学生の方
・部活動を休まずに痛みを軽くしたい方
・同じ痛みを何度も繰り返している方
当院までお気軽にお問い合わせください。Web予約も承っています。


