お墓が「思ったものと違う」と言われた③最終話:トラブルの発生を防止するには?【石屋の法律相談】
~前のコラムからの続きです~
建物建築や宅地造成には法令上耐震性の基準があり、墓地とは異なる面があります。
したがって、建物や宅地造成についての判例の基準がそのまま適用されることはないでしょう。
しかし、参考判例④は、ブロック塀が倒壊した事案について、
安全性の基準として震度5に耐えられることをあげているので、
墓地・墓石に類似することから、安全性の判断基準は、
ほぼ同一のものになるという見解もありうるでしょう。
しかし、宗教的・歴史的にみて、墓地・墓石の形状はある程度限定され、
建物などと同じ水準の耐震性・安定性は、社会的には求められてはいないと思います。
そこで、震度5弱もしくは震度4に耐えられない場合には、
安全性にかけるということになる、という見解に改めたい考えます。
震度5を超えるような大地震が発生した場合、
ほとんどの墓石が転倒すると考えられるものであり、
そのような場合には不可抗力による被害であり、
隣地墓地の所有者に責任を問うことはできないと思います。
ましてや、この度の東日本大震災のように、
津波が発生したりして墓石が倒壊したような地域では、
誰に対しても法律的責任を追求することができないのは、当然です。
【参考判例】
④仙台地判昭和56年5月8日(判例時報1007号30頁)
≪事案≫宮崎県沖地震で倒壊したブロック塀の下敷きによる死亡事故につき、
ブロック塀の所有者に、ブロック塀の設置、保存に瑕疵があるとして、
土地工作物責任に基づく損害賠償請求を求めたケース。
≪判旨≫ブロック塀が築造された当時、通常発生することが予想された
地震動に耐えうる安全性を有していたか否かを基準に、
そのような安全性が欠けていた場合に瑕疵があると判断したうえ、
当該ブロック塀が震度5の地震に耐えうる安全性が欠けていたことの
立証がなされていないとして、責任を否定した。
~おわり~
※参考文献:日本石材工業新聞 第1910号(日本石材工業新聞社発行)
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