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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

電子タバコによる禁煙効果は否定的?

2017年12月19日

テーマ:たばこの害

コラムカテゴリ:医療・病院

電子タバコによる禁煙効果は否定的?

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘電子タバコによる禁煙効果は否定的?’という報告です。
 加熱式電子たばこによる禁煙効果については世界的に意見が分かれている。国立がん研究センターは、同センターがん対策情報センターたばこ政策支援部の研究者らが禁煙施行者を対象に実施した調査の結果、電子たばこによる禁煙の有効性が否定されたとプレスリリースで発表した。「禁煙の手段として推奨または促進すべきではない」との見解を示している。
 電子たばこが禁煙や喫煙本数に及ぼす影響は、世界的に利点と欠点が指摘されている。わが国でも電子たばこが禁煙に有用として販売されているが、禁煙に効果があるかどうかのエビデンスは得られていない。そこで同氏らは、電子たばこによる禁煙への有効性を確認するため、過去5年間に禁煙行動に取り組んだ成人を対象に調査を行った。
 2015年1月31日~2月17日にたばこの使用に関するインターネット調査に参加した9,055人のうち、過去5年間に禁煙に取り組んだ20~69歳の禁煙施行者798人を対象に、禁煙方法(市販のニコチンガム、市販のニコチンパッチ、電子たばこ、禁煙外来の受診、ニコチンを含まない薬の処方、ニコチン置換療法、禁煙本などを用いた自力での禁煙)と禁煙の状況について調査、解析した。
 その結果、禁煙失敗者(現在喫煙者)は545人(68.3%)、禁煙成功者(現在非喫煙者)は253人(31.7%)だった。
電子たばこで禁煙成功率が37%低下
 禁煙方法(複数選択)として実施された割合が最も高かったのは「禁煙本などを用いた自力での禁煙」(禁煙失敗者の81.8%、成功者の87.0%が実施)、次いで「薬局・薬店で販売されている禁煙補助剤」(同27.7%、26.1%)、「電子たばこ」(同22.0%、15.4%)の順だった。
解析により、電子たばこの使用は禁煙成功と負の関連が示された〔危険率0.632倍〕。一方、禁煙外来によるニコチンを含まない薬の処方は禁煙成功と有意に関連していた。
 これらの結果から、電子たばこの使用者は非使用者よりも禁煙成功率が37%低く、電子たばこでは禁煙の成功率が約3分の1低下した。一方、禁煙外来を受診しニコチンを含まない薬物療法を受けた人では、禁煙の成功率が約2倍に上昇した。今回の研究は断面調査であり調査上の限界や制約はあるものの、わが国では電子たばこによる禁煙の有効性を否定する結果が示された。
 最近、とみにその使用が普及してきた電子タバコ。医療関係者の中にもその安全性を過信している人たちがいる反面、受動喫煙や健康被害への懸念が取り沙汰されるようになって来ています。国としても貴重な財源でもあるタバコに対しては徹底的な規制が出来ない現状で登場した電子タバコでもあり、今後さらに様々な検討が必要な時期になって来ているのかも知れませんね?

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