「説明したつもり」という謎の完了通知

鎌田千穂

鎌田千穂

テーマ:心のあり方のヒント

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「これ、お願いします。」

「はい。どこまでやればいいですか?」

「普通にやってもらえれば。」

……「普通に」が、一番分からない。

でも、
言った本人は、
たぶん説明したつもりです。

しかも、かなりちゃんと。

説明する側だけ、答えを知っている

よくあるのが、
「例の件、どうなりました?」
「例の件って、どれですか?」

「ほら、この前の。」
「この前、いくつかありましたけど。」

「○○さんと話したやつ。」
「○○さんと、何の話ですか?」

「だから、あれ。」
「あれが分からないんです。」

「え?」
「え?」

ここまで来ると、
会話ではありません。

出題者だけが答えを知っているクイズです。

しかも出題者は、
なぜか不思議そうな顔をする。

「普通、分かるでしょう。」

……その「普通」、
こっちには配布されてません。

「言った」は、なぜか「伝わった」に出世する

「ちゃんと伝えました。」
「何て?」

「○○してくださいって。」
「どこまでですか?」

「そこは普通、分かるでしょう。」

良く出没する言葉。

「普通」。

この言葉が出てくると、
説明が一個ずつ消えていきます。

「いつまで?」
「適当に。」

「どんな形で?」
「いい感じに。」

「誰に確認する?」
「必要なら。」

……**「いい感じ」の採用範囲、広すぎません?

説明する側には、
完成したものが見えている。

だから、
途中を言わなくても分かる。

本人の中では、
「○○を、こうして、ああして……」まで全部ある。

口から出たのは、
「お願いします。」だけ。

そして後日。
「なんで、こうしたんですか?」となる。

・・・こうするしかない情報量でした。

「説明した」は、本当に説明した

ここが、
ややこしいところ。

「説明したつもり」の人は、
別に嘘をついていません。
本当に説明したと思っています。

だって、自分の中では話がつながっているから。

昨日の話。
先週の話。
以前のやり取り。
相手のこと。

全部、頭の中にあります。

だから、
「この前の件。」で分かる。

でも、
相手の頭の中に、
「この前の件フォルダ」があるとは限りません。

しかも、
同じ名前のフォルダが、
五つくらいあったりする。

文章を書くと、さらに大胆になる

これ、
文章になると、
もっと面白いことになります。

「先日の件ですが。」
……どの件?

「あのときお話ししたように。」
……あのとき?

「以前からお伝えしている通り。」
……いつから?

「ご存じだと思いますが。」
……知りません。

書いた本人には、
全部分かっています。

だから、
省略できる。

ところが読者は、
省略されたところを知りません。

それでも書き手は、

「ちゃんと書いたのに、なんで伝わらないんだろう。」

となる。

そりゃそうです。
書き手だけが、原作を読んでから二次創作を書いてます。

読者は、
いきなり二次創作を渡された。

登場人物の説明もない。
前回までのあらすじもない。

なのに、
「分かるでしょう。」

……分かりません。

「分からない」と言ってくれたほうが、まだ助かる

「すみません。そこ、よく分かりません。」

こう言ってもらえたら、
むしろ助かります。

「あ、そこか。」

そこを説明すればいい。

困るのは、
「はい、分かりました。」と言って、

あとで、
「そういう意味だったんですか?」となること。

このとき、
「いや、ちゃんと説明しましたよ。」と言いたくなる。

分かります。
言いたくなります。

でも、よく考えると、

「ちゃんと説明した自分」と、
「ちゃんと分かった相手」。

二人とも「ちゃんと」を自分で採点している。
採点者不在です。

経験があるほど、途中を飛ばせる

長くやっていることほど、
説明は短くなります。

「これね。」
「ああ、あれね。」
「いつもの感じで。」

これで通じる。

それは、
ちゃんと関係ができている証拠でもあります。

毎回一から説明する必要がない。
これは便利です。

ただ、そこに初めて入ってきた人がいると、

「いつもの感じって何?」

となる。

経験者には、
「いつもの感じ」。

初めての人には、
「いつもの感じって、どの感じ?」です。

だから、
経験があることが悪いわけではない。

むしろ、
経験があるから省略できる。

ただ、
省略できることと、
説明しなくていいことは別。

ここだけは、ちょっとややこしい。

「なんで分からない?」より質問を

「なんで分からないの?」

と言いたくなったら、

「私、どこを飛ばした?」

と考えてみる。

これ、結構見つかります。

「あ!」そこ、言ってなかった。
「これくらい分かると思ってた。」

でも、相手には初めてだった。

「前にも言ったよね。」

でも、
前回は別の話だった。

こういう小さなズレが、
あとから大きなズレになります。

そして最後には、
「ちゃんと説明したのに。」となる。

……「ちゃんと」便利ですね。

困ったときに、
全部引き受けてくれます。

説明の完了通知は、まだ早い

「言った。」
「説明した。」
「書いた。」

これは、
自分で確認できます。

でも、
「伝わった。」
は、自分では決められません。

相手の中で、
どうなったかだから。

だから、
「説明しました。」という完了通知。

もしかすると、
自分にしか届いていない。

相手の画面には、

「???」

が出たままかもしれません。

「例の件。」
「あれ。」
「普通に。」
「前にも言ったよね。」

このあたりが増えてきたら、
一度だけ立ち止まる。

「私、ちゃんと説明した?」

ではなく、「私、説明したつもりになってない?」と。

この二つ、
似ていますが、
結構違います。

説明は、
自分が話したところで終わりではない。

相手が分からなかったら、
もう一回話せばいい。

「そこじゃないです。」

と言われたら、

「あ、そっちじゃなかったか。」でいい。

いちいち、
「私はちゃんと説明した。」
と自分の無実を証明しなくてもいい。

だって、
説明の目的は、
自分が説明したという実績を作ることじゃないから。

「ちゃんと説明しました。」
と言いたくなったときほど。
一回だけ、相手の顔を見る。

そして、
「どこまで分かりました?」と聞いてみる。

もしかすると、
こちらが「説明完了」のボタンを押したあとも、

相手の画面では、
ずっと読み込み中かもしれません。

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鎌田千穂
専門家

鎌田千穂(産業カウンセラー)

Chi-ho’s studio

組織課題を広い視野で捉え、主体性を持った思考と行動力、公私の均衡を図る自律型人材育成を行うこと。分析・統計による業務改善の解決策を示し、個人の悩みを解き放ち、企業の繁栄に繋げることが専門です。

鎌田千穂プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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