言葉は誰かに届いていい。でも、文脈を失ってはいけない
・・・ある。
運がいい人を見ていると、
いつも不思議に思う。
こっちは必死。
あっちは無表情。
こっちは神頼み。
あっちは昼ご飯のことで頭がいっぱい。
なのに。
運は、
なぜかあっちへ行く。
……解せぬ。
運に片想いしている人
運を愛する人は、本当に真面目。
神社へ行く。
お守りを買う。
財布を替える。
ラッキーカラーを身につける。
玄関を磨く。
トイレも磨く。
・・・もう家じゅうピカピカ。
運より先に、
掃除の神様が住み始めそう。
それでも運が来ない。
運に毎日ラブレターを書いているのに、
返信ゼロ。
既読ゼロ。
通知すらオフ。
恋愛なら、
友達が肩をつかんで言う。
「その人、やめとき。」
でも運だけは、
誰も止めてくれない。
運に愛される人は、だいたい雑
一方で、
運に愛される人。
この人たちって、
びっくりするくらい雑。
財布を落としても戻る。
締め切りを忘れても延びる。
満席なのに一席だけ空く。
「もう無理。」
と言った五分後に解決する。
本人は、
「へぇ。」くらい。
感動も薄い。
運からすると、
ちょっと腹が立つレベル。
・・・いや、
腹が立ってるのは、周りか。
運は、努力 フェチじゃない
努力すれば報われる。
もちろん、
努力は大事。
でも。
運は努力 フェチじゃない。
「頑張ってます!」
「努力してます!」
「ほら見てください!」
そう言われても、
運は腕を組んだまま。
・・・しかも怖い顔。
「……で?」
そんな空気を出してくる。
お願いしても動かない。
媚びても動かない。
空気も読まない。
期待にも応えない。
気分で人生をひっくり返して帰る。
台風より自由。
猫より気まぐれ。
親戚のおじさんより余計なお世話。
運は人生の交通整理をしている
昔は思っていた。
運はご褒美を配る係だと。
違った。
あれ、
交通整理のおじさんだった。
「はい、そっち。」
「はい、違う。」
「止まって。」
「戻って。」
本人の希望なんて、
ほとんど聞いていない。
「私はこっちへ行きたいんです!」
と言っても、
「うん。でも、そっち。」
で強制終了。
強い。
笑わない。
説明もしない。
あとになって分かる
不思議なのは、
そのときは最悪なのに、
何年かすると、
「あっちじゃなくて良かった。」
になること。
あの失敗。
あの別れ。
あの転職。
あの遠回り。
全部、
腕を組んだ運が、
怖い顔で方向転換させていたのかもしれない。
運は優しくない。でも、案外いいヤツなのかもしれない
運は優しくない。
笑顔でもない。
腕を組んでいる。
しかも、
だいたい怖い顔。
そして何も言わず、
「そっちじゃない。」
たったそれだけで、
人生の予定表をぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱へ投げる。
・・・ほんと迷惑。
でも。
あとになって振り返ると、
「あのとき予定どおりだったら、今の私はいない。」
そんなことが結構ある。
だから今日も運は、
腕を組んで、
怖い顔をしたまま、
誰かの人生を勝手に曲げている。
文句を言われても、
たぶん気にしていない。
だって運は、
好かれる仕事じゃない。
連れていく仕事だから。



