組織力強化:自分を育てる・組織を育てる:大切な3つのポイント
このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。
はじめに、ファシリテーションについて説明します。
次に、コロナ禍の今ファシリテーションが必要な理由について考えます。
最後に、ファシリテーションを定着させるためのマインドセットを考えます。
このコラムは次の3つの章で構成します。10分程度で読める内容です。
私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。
1. ファシリテーションとは
ファシリテーションとは
ファシリテーション(Facilitation)
「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。
発祥の地はアメリカです。アメリカにはディベート文化があります。そもそもディベートは合意形成を目的としていないので、いくら時間をかけても合意に至ることはありません。ディベートではなくても、何時間も延々と会議をして何も決まらずに疲れ果てて会議が終わった。こんな経験をお持ちの方もいらっしゃるだろうと思います。私はそういった会議の経験者です。これは問題ですよね。解決すべき課題です。
その課題を科学的に考えながら試行錯誤しながらファシリテーションという手法は作られました。
どんな場面で使えるのか
人と人とが合意を目指して議論する場面であれば、ファシリテーションは広く活用することができます。
例えば、下記のような場面です。
- ビジネス変革
- ビジョンやミッション策定
- 営業戦略や事業計画策定
- 問題解決
- チームビルディング
私は会社以外に勤務した経験がありませんので、このコラムは会社の会議について考えることとします。
なお、ファシリテーションをご存じない方々へ向けたコラム『会社の会議:ファシリテーションとは?:ファシリテーションをご存じない方へ』を書いています。わかりやすい内容になっておりますので、今一度ファシリテーションを理解したい方は是非お読みください。
もう一つ。私は次の問いを ChatGPT に質問しました。
あなたはビジネスパーソンにとってファシリテーション能力を高めることは価値があると思いますか?
ChatGPT は次のように返してきました。
はい、私はビジネスパーソンにとってファシリテーション能力を高めることが非常に価値があると考えます。ファシリテーションは、グループの意思決定や問題解決プロセスを支援するために行われるコミュニケーションの技術です。ビジネスの現場では、多くの場合、チームやグループが協力して仕事を進める必要があります。しかし、それぞれが異なる考え方やバックグラウンドを持っているため、コミュニケーションがスムーズにいかないことがあります。そこで、ファシリテーション能力を持った人がグループのコミュニケーションを支援することで、より円滑な意思決定や問題解決ができるようになります。
また、ファシリテーション能力を高めることで、以下のようなメリットがあります。
- チームの調和を促進し、コンフリクトを解決することができる
- 参加者の意見を引き出し、多様な意見を収集することができる
- 参加者がプロセスに参加しやすい環境を作り出すことができる
- 効率的かつ効果的なミーティングやブレインストーミングセッションを行うことができる
以上のようなメリットから、ビジネスパーソンにとってファシリテーション能力を高めることは、非常に価値があるといえます。
この返答は私にとって違和感を感じるものではなかったので、引用いたします。
2. コロナ禍の今ファシリテーションが必要な理由
この章では、下記2つの期間についてファシリテーションの観点で考え、課題を洗い出します。
- 新型コロナウイルスの蔓延以前
- 新型コロナウイルスの蔓延以降
そして、課題について、ファシリテーションは何ができるのかを考えます。
新型コロナウイルスの蔓延以前
ひとりのリーダーがいて、メンバーはそのリーダーに従っていれば仕事を全う出来ていた時代がありました。ひとりのスーパーマンやワンダーウーマンのような人がいて、その人についていけばOKという感じです。個人事業や小規模事業で「社長が決めたことを従業員が実施する」という形もここに当てはまると思います。
この場合、従業員は指示を待つ形になります。
上の段落で書いた組織形態は、軍隊的な上意下達のヒエラルキーと言われています。とても昔からある形ですね。
会社の規模が少し大きくなると、専門性の高いスタッフが集まっている組織になります。 ある領域では、部長・課長・主任などリーダーよりもスタッフの方が専門性が高い、そういう人たちの集まりになってくると思います。(そういう組織にすべきである、と私は思います)
例えば、課長は部下よりも全ての面で専門性が高く優れている、という状況。こういう状況は稀ではないかと思います。ある分野はAさん、ある分野はBさん、というように分野ごとに専門性を持っている人を採用し配置している組織が多いと思います。みんなの専門性を最大限引き出すことができるような組織にする必要があります。
個人だけでは解決できない課題を、チームで解決することが求められるようになりました。
例えば、Aさん一人では達成することができない課題でも、別の分野の専門家のBさんと協働することで、チームとして解決出来るかもしれません。各自の能力を最大限引き出すことが出来れば解決できるかもしれません。そういうことが求められるようになっています。チームがうまく機能することが求められているのです。
また、変革のスピードが速く、破壊的なビジネスモデルが、突然現れるようになりました。例えば、宅配の Uber Eats や、アップルのアップルカーです。
こういうことは、珍しいことではなくなっていると感じています。
新型コロナウイルスの蔓延以降
VUCA(ヴーカ)
VUCAとは、Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字です。不安定で、不確実で、複雑で、不明確といったところでしょうか。
コロナ禍になり、不安定性、不確実性、複雑性、不明確性は増していると感じます。予測困難です。
不安定で不確実で複雑で不明確な予測困難な時でも、いや予測困難な時だからこそ、前の節で書いたような、自律的にチームで協働し各自の専門性・能力を最大限引き出すことが求められています。
コロナ禍の中、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が出され、テレワークが強く求められたり、出張を控えるように求められたりしています。
人流を抑える目的から、自宅などオフィス以外の場所で仕事をすることが求められています。
ビジネスを止めずに、オフィス以外の場所で働く人たちが協働して、オフィスで働いているのと同じように働けることが求められています。もちろん、全てのビジネスパーソンがテレワークできるとは思いません。一方、テレワークできるようにしておくことは、大型台風、集中豪雨、大地震などの自然災害が発生した時でも会社のビジネスを継続させる BCP の観点から、とても大切なことです。自然災害も毎年どこかで発生していて、珍しい現象ではないですから。
ファシリテーションは何が出来るのか
この章で洗い出した課題は下記でした。
- (a)個人では解決できない課題をチームで解決することが求められている
- (b)不安定で不確実で複雑で不明確な予測困難な時でも、自律的にチームとして協働できることが求められている
- (c)オフィス以外の場所で働く人たちが協働して、オフィスで対面で協働していた時のように協働できることが求められている
これらの課題について、ファシリテーションは何が出来るのかを考えます。
(a)個人では解決できない課題をチームで解決することが求められている
問題は日常的に発生します。大きなものから小さなものまで。
チームで集まって会議を開きます。
問題は何なのかチームで共通の認識を持ち、解決すべき課題は何々なのか特定します。そして、解決するための打ち手を考えます。各々の課題と打ち手に優先順位を付け、誰が何の役割を持っていつまでに打ち手を実施するのか具体的な計画を立てます。
ファシリテーションは、こうした一連のチームでの協働を促進することができます。スピードアップすることができるのです。質の向上も期待できます。
ファシリテーションは、メンバーが積極的にチームに参加し、自分が役に立ったと実感できるよう、支援することができます。ファシリテーターは、中立な立場で、議論のプロセスを管理し、チームワークを引き出し、チームの成果が最大となるように支援することで、メンバーが積極的にチームに参加することを支援します。メンバーは積極的に参加することで「自分がチームの役に立っている」と実感できるように支援します。
議論のプロセスとは、例えば上の段落で述べた『問題は何なのかチームで共通の認識を持ち、解決すべき課題は何々なのか特定する。そして、解決するための打ち手を考える。そして、各々の課題と打ち手に優先順位を付け、誰が何の役割を持っていつまでに実施するのか具体的な計画を立てる。』という一連のプロセスです。
ファシリテーターがいない会議では、全員が当事者です。例えば、『問題は何なのかチームで共通の認識を持とう』を話し合っている時、解決すべき課題や打ち手を話し始める人がいるとしましょう。こういう事は良くあるのではないでしょうか。当事者意識があればあるほど、先走ってしまうことが起こります。ある人は問題は何なのかを話し、ある人は打ち手を話す。みんな良かれと思って、みんなが勝手な方向を向いて話し出す。話がごちゃ混ぜになってしまいます。話がかみ合わなくなり、時間が浪費されることになります。
ファシリテーターは中立な立場で議論のプロセスを管理します。
例えば、『問題は何なのかチームで共通の認識を持とう』を話し合っている時、解決すべき課題や打ち手を話し始める人がいたら、「今は問題についてチームで共通認識を持つための時間です。みなさんで共通認識を持つまで、いま少しお待ちいただけますか?」などと言って議論に介入します。
実は、『問題は何なのかチームで共通の認識を持とう』を話し合っている時、解決すべき課題や打ち手を話し始める人は、最初から自分の考えを持っていることがあります。チームで共通認識を持つことを話し合う段階で、今までその人には見えていなかった意見が出る可能性があります。自分では思いもつかなかった意見から、新しい考えが思いつくことがあります。ですから、チームで問題についての共通認識を話し合うことには意味があります。自分の思考の範囲外の考えを知り、思考の範囲を広げる事ができます。自分ひとりで自分の思考の枠組みの外に出ることはとても困難です。
一連の協働を通して、ファシリテーターは、メンバーが積極的にチームに参加することを促進し支援します。すると、メンバーは自分が役に立ったと実感できるようになります。これはチームで協働することのモチベーションになり、充実感を感じることができるようになります。会議に参加することに充実感を感じるのです。会議というと「時間が長い」「結論が出ない、物事が決まらない」「一部の人しか発言しない」などという不満や悩みを良く見聞きします。これを放置したままでは、モチベーションは下がり続けますし、充実感を感じることはあり得ないでしょう。
会議での議論の見える化。
あなたのチームでは議論を見える化していますか?
Allan Paivio という米国の心理学者の "dual-coding theory" という研究によれば、頭脳の感覚神経の75%は視覚に使われているそうです。
言葉だけの会話の場合、3日後に覚えている確率は10%。ビジュアルな表現も活用した場合、3日後に覚えている確率は65%に増えるそうです。下の数十秒の YouTube 動画(無音)はこれを説明しています。
Dual coding とは、上の動画が表現しているとおり、言葉とビジュアル表現の2つ(dual)を脳に記憶する(coding)ことと言えます。
もう一つ YouTube 動画を添付します。
典型的な会議(Traditional Meeting)では、4人が会議室のテーブルの前に座り、各々何かを思いながら言葉だけを使って話をしています。各々空白の紙をテーブル上に置いていますが、使っていないようです。ビジュアルな表現は使っていません。あなたが参加する会議はこんな感じですか?
一方、ビジュアルな協働(Visual Collaboration)では、4人がホワイトボードの前に集まって、言葉とビジュアルな表現の2つを使って議論しています。下の数十秒の YouTube 動画(無音)はこれを説明しています。
議論は見える化するべきです。
改善活動をしたことがある方は、特性要因図(フィッシュボーン図)を使ったことがあると思います。親和図も使ったことがあるかもしれませんね。言葉だけではなく、ビジュアルな表現を使って改善活動をしたと思います。これら、特性要因図や親和図は、フレームワークです。フレームワークは見える化された議論をするための強力なツールです。
フレームワークは、経営戦略や業務改善、問題解決などに役立つ分析ツールや思考の枠組みです。MBAなどで教わることが多く、ビジネスに必要とされるロジカルシンキングや発想法などを体系的にまとめたものです。 (Wikipediaより)
先達が苦労して考え出したものです。見える化されているので、会議参加者で共有・理解しやすい特徴があります。有用性が実証されているので、議論に合うフレームワークを使うと、会議が効率化されます。
会議参加者にとっては、「コレはいい」ということが体験できれば、自分たちの日頃の仕事にも使ってみようというムーブメントが起きる可能性があり、これによりチームの知的生産性が高まる可能性があります。また、書籍やインターネットで使い方や事例を見ることができるので、使いやすいとも言えます。
(b)不安定で不確実で複雑で不明確な予測困難な時でも自律的にチームとして協働できることが求められている
私は自身の経験から、不安定で不確実で複雑で不明確な予測困難な時には、アジャイルな働き方をすることが大切だろう、と考えています。
アジャイルという言葉を最近良く見聞きします。
英語の agile で「機敏な」という意味の形容詞です。
アジャイルはソフトウェア開発で使われている開発手法の1つです。ソフトウェア開発で使われている手法が、ソフトウェア開発以外でも見聞きするようになっています。例えば、働き方、経営、組織文化。
自律的に問題を分析し、自律的に課題を洗い出し、そして自律的に解決できるようになること。
そしてこのサイクルを振り返り、何が良かったのか(うまくいった理由は何か)、何が良くなかったのか(うまくいかなかった理由は何か)、次はどうしたら良いのか(次チャレンジすること)を学習して、次のサイクルは今より良いものにすること。
このサイクルを機敏に(アジャイルに)回すこと。これが大切だと思います。
何が正解かわからない。一方、立ち止まって冬眠状態になることもできない。
こんな時には、上の段落で書いたようなアプローチが大切になる、と私は考えます。
「(a)個人では解決できない課題をチームで解決することが求められている」に書いたようにファシリテーションをチームの協働に活用することが大切だと思います。
機敏に対応することが肝ですから、言葉だけを使った典型的な会議はやめてくださいね。ビジュアルな協働が必須です。
なお、アジャイルな働き方について、『働き方:コロナ禍の対応:アジャイルな働き方が注目されている理由を考える』 というコラムを書いています。
(c)オフィス以外の場所で働く人たちが協働して、オフィスで対面で協働していた時のように協働できることが求められている
紙とペンと電話とFAXで仕事をしている方、紙を次工程へ回すことが仕事の方は、テレワークは難しいでしょう。この場合(c)の観点でファシリテーションやファシリテーターは何も貢献できません。オフィス以外で働くことができないのですから。
営業活動でも、感染が激しく拡大している地域からの出張は控えてくれ、と言われるようになりました。
テレワークで協働するためには、紙・ペン・電話などをITツールにすることが必須です。メール地獄に浸り続けても良いかもしれませんが、今は昭和ではないので、もう少しスマートにクラウド上のツールを活用した方が良いと思います。「働き方改革チーム」という名前で、働き方改革を促進する役割を持ったチームを作った会社もあると見聞きします。コロナ禍の今は、昭和の働き方をガラリと変える最後のチャンスかもしれません。どうせ変えるなら、自社で信頼できると決めたクラウド上のツールを活用して、スマートな令和の働き方を目指すべきだと思います。
「(a)個人では解決できない課題をチームで解決することが求められている」で書いたビジュアルな協働をテレワークで可能にするものは、クラウド上のホワイトボードです。例えば、miro や MURAL があります。
テレワークでの会議は下図のように、会議中は顔を見て「言葉だけの典型的な会議」をしていますか?この形の会社は多いですよね。(画像の出所は PIXTA です)
プロジェクトのキックオフの時など、自己紹介やプロジェクトへの抱負を語る時などは、この形でも良いかもしれませんが、それ以外に顔だけ見て話をすることに私は意義を感じません。
クラウド上のホワイトボードを活用すれば、下図のように「ビジュアルな協働」ができます。下図は、共感マップ(Empathy Map)というフレームワークをクラウド上のホワイトボードに載せて、みんなで書き込みながら、会議参加者の課題を見える化し議論している様子です。(画像は PIXTA の画像のパソコン画面に共感マップを貼ったものです)
テレワークで見るものはコンピューター画面だけです。聞くものはスピーカーから聞こえる音や声だけです。情報が限られますので、どの情報を重要視するのか、取捨選択が必要になります。顔を見るのか、議論を見るのか。
ツールはホワイトボードだけではありません。その他のツールの例は、『2021年のテレワークを考える』 で、Zoom の zapps を紹介しています。
3. ファシリテーションを定着させるためのマインドセット
1章でファシリテーション とは何かを概説しました。
2章でコロナ禍の今ファシリテーションが必要な理由について、課題を洗い出し、ファシリテーションは何ができるのかを考えました。
ファシリテーションがコロナ禍の今こそ必要であることをご理解いただけたでしょうか?
必要性をご理解いただけたと仮定して、この章では、ファシリテーションを定着するためのマインドセットをいくつか考えようと思います。
もし今まで2章で書いた「典型的な会議」をしていたとすると、ファシリテーションを活用した会議は、今までの会議とは全く異なったものになります。
ですから、ファシリテーターだけでなく、会議参加者全員が意識すべきマインドセットがあるのです。
安心安全な場
ファシリテーターは、会議の場を発言を否定されない「安心安全な場」にします。そのためには「安心安全な場」とはどのようなものなのか、会議参加者は理解していることが必須となります。ファシリテーターは、チーム全員に「ファシリテーションを活用した会議とはどのようなものか」を、わかりやすく事前に説明しておくと、参加者の混乱や不安を少なくすることができると思います。
なお、『会社の会議における「安心安全な場」とは?』 では、ありがちな事例を挙げて「発言が否定されない安心安全な場」を説明しています。
使えるものは何でも使う
ファシリテーターはファシリテーションだけに固執すべきではありません。話し合いが円滑に進行するための道具にアンテナを張っておく事が大切である、と私は考えます。ここで言う道具とは、ソフトスキルやフレームワークや思考法などです。
「使えるものは何でも使う」くらいの考えでちょうどいいと思います。
アンテナを張って、勉強・研究し続ける事が大切です。ここに終わりはありません。とは言え、最初は自分の道具箱に入れる道具をいくつか探して研鑽することから始めるのが良いと思います。自分で使いこなせる道具を持たないと、ファシリテーションできませんから。
振り返りの実施
会議参加者の人たちは、ファシリテーションという未知のものを取り入れることの不安や、今までのやり方(例えば2章の「典型的な会議」)を変えたくない、変わりたくない、という感情を持つ可能性が高いです。
ファシリテーターとしては、こうした感情は自然なものだと受け入れて、根気よくファシリテーションの利点を説明し、具体的にファシリテーションを活用した会議を体験してもらいながら、地道に対応することも大切でしょう。
一回一回振り返りを実施して、何が良かったのか(うまくいった理由は何か)、何が良くなかったのか(うまくいかなかった理由は何か)、次はどうしたら良いのか(次チャレンジすること)を整理すること。地道な作業ですが、クセになるまで続けると、かなり効いてきます。
セキュリティー・リテラシー
2章(a)でクラウド上のツールを活用すべきだと書きました。クラウド上のツールに入れた情報にアクセスできる人を制限し管理することが必須です。セキュリティーに関するリテラシーが求められます。
先日セキュリティー設定で問題になった Trello を事例とします。
テレワークの環境では、リモートで働いていても、オフィスで働いていても、チーム全員の進捗が把握できるようにしておくことは必須です。チーム全員の進捗を見える化するツールの1つにTrelloがあります。
Trello の件は、初期設定が「非公開」であるにもかかわらず、「公開」にする意味を理解せずに、自分たちの意思で設定を「公開」と変更してしまい、情報をインターネットに晒してしまいました。会社の信頼を毀損する悪質な行為です。設定を変更するとどうなるのかを調べもせずに、勝手に変更した事が悪質です。
セキュリティー事故の多くは社員から発生している事例の1つです。
会社でセキュリティールールがあると思いますので、それに従うことが必須です。(先日のTrelloの件をご存知ないかたは、CNET Japanの 『タスク管理「Trello」、公開範囲の設定ミスで名前や住所が筒抜けに--運営元が注意喚起』 がまとまっていると思いますので、紹介させていただきます)
メンバーひとり一人を尊重し互いを認め合う協働
リーダーの方々、例えば主任、課長、部長の方々。ご自身のアイデア・考えが一番良い、とお考えの方がいらっしゃると思います。あるいは、ついついそうなりがちという方は多いのではないでしょうか。
もしそうならば会議は不要です。時間のムダです。
2章で書いた「軍隊的な上意下達のヒエラルキーの組織」でありたいのならば、そしてチームのメンバーもそう考えているのであれば、会議は必要ありません。
他方、ある分野はAさん、ある分野はBさん、ある分野は部長、というように分野ごとに専門性を持っているチームなのであれば、みんなの専門性を最大限引き出して協働する事で、ひとりでは考えつかないようなアイデアをみんなで作り出すことが可能になります。ですから、メンバーひとり一人を尊重して互いを認め合い協働するマインドセットが大切になります。
新しいことにチャレンジする柔軟性
自分が知らなかった新しいことを体験し、良さそうであれば取り入れる柔軟性も必要になると思います。
何年も「典型的な会議」をやってきた方にとっては、ファシリテーションを活用した会議は違和感を感じるかもしれません。ここで大切なことは、新しいことにチャレンジするマインドです。新しいことを体験し、良さそうであれば取り入れる。そして自分たちに合った形にしていく。こうした柔軟な姿勢で取り組む事が今こそ大切だ、と私は考えます。
この章では、ファシリテーターだけでなく、会議参加者全員が意識すべきマインドセットとして、下記の6つについて考えました。
- 安心安全な場
- 使えるものは何でも使う
- 振り返りの実施
- セキュリティー・リテラシー
- メンバーひとり一人を尊重し互いを認め合う協働
- 新しいことにチャレンジする柔軟性
最後までお読みいただき、ありがとうございました。