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小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(おがわよしお) / ファシリテーター

BTFコンサルティング

コラム

会社の会議:オンライン会議のファシリテーション :準備段階の確認項目

2020年11月30日 公開 / 2021年8月23日更新

テーマ:会議活性化

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 業務効率化 手法働き方改革チームビルディング

このコラムは、会社で会議のファシリテーションを行っているファシリテーターの方々を対象に書いています。

2020年はコロナ禍でオンライン会議が増えました。ファシリテーターの方々はどのように対応しておられますか?
このコラムでは、オンライン会議やオンライン・ワークショップのファシリテーションについて、ファシリテーターとして、準備段階で確認すべき項目を考えます。なお、多くはリアルな会議室での会議にも適用することができるものです。

このコラムは次の3つの章で構成します。7分程度で読める内容です。


米国MURAL社が出している 『リーモート参加者がいるワークショップをファシリテートするための最も信頼できるガイド』(THE DEFINITIVE GUIDE TO FACILITATING REMOTE WORKSHOPS) を参照しながら、私の実体験を基にして考察します。
このガイドは英語で記述されていて、タイトルは "THE DEFINITIVE GUIDE TO FACILITATING REMOTE WORKSHOPS" です。『リーモート参加者がいるワークショップをファシリテートするための最も信頼できるガイド』は私の訳です。なお、MURAL はクラウド上でホワイトボード・ツールを提供している有名な会社です。

なお、準備段階以外の、例えば開催中や開催後の確認項目などは、別の機会に書くことにします。

私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション(Facilitation)。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。


1. 綿密に計画を立てる

綿密に計画を立てることが大切です。
ここでの目標は、次の3点です。

  • 確実にチームが目標に到達できるようにすること
  • 適切なステークホルダー部門からの参加を確実にすること
  • 異なる場所から参加する人たちの協働を最適化すること


目標を設定する

ここで言う目標とは、会議やワークショップの終了時点で、何が決まっていればよいのか、どこに到達したいのか、といったゴール・イメージです。

参加者全員が明確に理解できる目標を、参加者に伝え、参加者が納得・理解することが大切です。
リモート参加者が会議やワークショップ中に目標を見失わないようにすることが大切なのです。


あなたがファシリテートする会議やワークショップ終了時に到達したい目標は何か、しっかり考えることが大切です。そして、会議やワークショップのオーナーと相談することが必要です。

参加者を選ぶ

会議やワークショップの目標が決まったら、議論に誰々が必要かを決めます。

どの部門から何の責任を負える人が必要なのかを考えます。議論に参加すべき人は誰か。専門家として責任を持って発言できる人は誰か。専門家として助言できる人は誰か。合意するであろう事項の責任者は誰か。

例えば、RACIというフレームワークを活用して参加者を人選します。RACIについては、『RACIを活用して実施可能なTo Doを合意しよう』でわかりやすく説明しています。

どのように協働するのかを決める

会議やワークショップの目標が決まり、参加者も決まりました。
次は、どう協働して議論を進めるのか、議論プロセスを決めます。


これは、参加者がリモートで参加して、どんなツールを活用して議論するのかを決めることを含みます。

例えば、音声は Zoom、議論の見える化はクラウド上のホワイトボード・ツール miro、プロトタイプは prott を活用して、◯◯のフレームワークを使って議論をする。参加者は自分の手指を動かしてホワイトボードに自分のアイデアを書き込む。ファシリテーターはアイデアとアイデアを紡ぎ合わせながら、アイデアを引き出す触媒の役割に徹する。このようなことを決めます。

日時と時間を決める

ワークショップであれば、2〜4時間程度が良いです。それ以上長いと参加者の集中が続きません。場合によっては、何回かに分けることを考えます。
会議なら1時間以内が良いでしょう。


アイデア出しなど、参加者に何かやってもらうことがあるのであれば、会議やワークショップの事前にできることがあれば、やってもらうことを考えます。
最後に、オンラン会議ツールでスケジュールし、参加者は静かな場所から参加するように依頼します。


2. 議論プロセスを決める

議論プロセスとは、どのように議論を進めるのか。どんなフレームワークを使って議論するのか。参加者にはどんなワークをしてもらうのか。等々議論の進め方の詳細です。

議論プロセスを決める目標は、次の3点です。

  • 参加者たちに創造性を培う
  • 円滑な議論の流れを作る
  • 会議やワークショップに積極的に参加してもらう(自ら積極的に参加する(したくなる)仕掛け)


会議やワークショップの活動を選択する

参加者が議論に積極的に参加し、会議やワークショップの目標に到達できるような活動を選択します。

例えば、お客様をペルソナとして、共感マップを用いてお客様を見える化することです。議論を促進させるための道具として、フレームワークを組み合わせて使うことは良くあることです。共感マップを使って顧客視点で課題を洗い出し、ペイオフ・マトリックスを使って何をすべきかを優先順位付けをし、RACIを使って実施可能な粒度のTo Doを作成するといった具合です。

なお、共感マップについては『共感マップ(考える・感じる)』で説明しています。

手法をカスタマイズする

一般的に言われている議論プロセスを、そのまま使うのではなく、オンライン会議に即した形にカスタマイズすることを検討してください。

他の会議やワークショップでうまくいった手法であっても、今回の議論プロセスにしっくりくるのかを検討し、カスタマイズすることが必要かもしれません。

例えば、食べ物に関することであれば、共感マップに「鼻で匂いを嗅ぐ」や「味覚」に関する切り口を付け加えた方が良いかもしれません。

時間を割り振る

議論プロセスの各ステップにどのくらい時間を使うのかを決めます。ここでのキーポイントは、参加者の集中をキープすることを優先して考えることです。

例えば、1つのステップの長さは10分程度にするなどです。アイデア出しをブレスト的に行う場合、クラウド上のホワイトボードを活用して、会議やワークショップの事前にアイデアを出しておくように参加者に依頼し、オンライン会議では出されたアイデアについての議論に集中する、ということを検討することも有効です。

流れを作る

議論の流れについてこれるように、議論の流れを見える化して、参加者が見れるところに貼っておくと良いです。

リアル会議やワークショップではフリップチャートに書き、会議室のどこからでも見れる場所に貼ります。オンライン会議やワークショップでは、クラウド上のホワイトボードに書いておきます。こうすることで、参加者は、今まで何を議論してきて、今どこにいて、これから何を議論するのかを確認することが容易になります。

積極的に参加してくれるよう計画する

積極的な参加は大切です。当事者として、参加者意識が最大になるような仕組みを考えます。できるだけ具体的に考えることが大切です。

例えば、◯◯を議論する時には、△△のフレームワークを使って、参加者自ら付箋に書き込み自分でフレームワークに貼ってもらう、ということを計画します。
自分の手指を動かして協働することは、参加者意識を増すことにつながります。

テンプレートを準備する

クラウド上のホワイトボードにフレームワークを貼り付けたり、議論中に書き込むテンプレートを貼ったりします。

そして、フレームワークやテンプレートを使って、どのように議論を進めていくのか、言い換えると、どのようにフレームワークやテンプレートを埋めていくのか、番号をつけて、「1.何何をする」、「2.何何をする」といった具合に参加者にとってわかりやすい説明を加えます。

「参加者にとって具体的でわかりやすい」ということは、とても大切です。

この説明もホワイトボードに書いておきます。

リハーサルする

計画したものをリハーサルします。

ファシリテーターとして、あなた一人でやっても良いでしょうし、サブ・ファシリテーター(co-facilitator)がいるのなら、その人と一緒にやるのも良いでしょう。こうすることで、例えば「ここはもっと時間を使った方が良い」など課題が見つかることがあります。

必ずしもリハーサル通りにはいかない場合もありますが、リハーサルはとても大切です。「もしかしたら、ここからこっちに議論が流れるかも」など事前に準備することも可能になる場合があります。


3. 会議やワークショップを設定する

準備段階の最後は、会議やワークショップを設定することです。

会議やワークショップを設定する目標は、次の3点です。

  • 参加の可能性を上げる
  • 議論プロセスから外れるリスクを減らす
  • 参加者同士が協働する時間を最大にする


ダッシュボードを作る

会議やワークショップの目標と合意内容(成果物)を、クラウド上のホワイトボードに書きます。

多くの場合、To Do項目が合意されると思います。つまり、誰が、何を、いつまでに、何の役割を持って、実施するのかを合意形成します。

「何の役割を持って」については、RACIを意識することが大切です。RACIについては、『RACIを活用して実施可能なTo Doを合意しよう』でわかりやすく説明しています。

このTo Doもテンプレートとして、誰が、何を、いつまでに、何の役割を持って、実施するのかを空白の表を事前にホワイトボードに書いておき、参加者全員で共有します。このようにすることで、会議やワークショップで何を作成するのか(合意するのか)成果物の具体的なイメージを持つことが可能になります。

参加者を招待する

会議の招待状を送り、リマインダーも送ります。(メールなどで)

招待状やリマインダーには、会議やワークショップの目的と目標を明示します。
どのような議論プロセスで会議やワークショップを進めるのか、どんなツールを使うのか、どのようなワークをするのか、等々概要を伝えることにより、具体的な議論プロセスをイメージしてもらえるので、かなり大切なことです。


ツールを紹介する

もし、参加者の一人がツールをうまく使えなかったら、それだけでオンライン会議やワークショップが滞ってしまいます。

ですから、参加者全員がツールにアクセスできること(例えばログインできること)や、事前に会議やワークショップで使う機能の使い方を学んでいて、当日問題なく使えるようになっていることが大切です。場合によっては、事前に手取り足取り教えてあげる練習会を開催することを考えなければならないかもしれません。

その上で、練習会を開催しても習得してもらえない人がいる場合は、本当にその人が参加者として必要なのか否かを、会議やワークショプのオーナーと相談すべきかもしれません。もし、本当に必要な人なのであれば、特訓するしかないでしょう。

事前作業を割り当てる

幸先良いスタートを切るために、事前作業を参加者に割り当てることがあります。

例えば、会議やワークショップで使う資料作成や、情報まとめなど、事前にやることを依頼することがあります。
カレンダー招待状を送って、完了期日を思い出してもらうようにすることもあります。

資料作成や情報まとめ。その領域に詳しい専門家が、参加者のレベルに合わせてわかりやすく作成することが求められます。会議やワークショップを設計する責任はファシリテーターにありますから、ファシリテーターが専門家にお願いをする役割を持ちます。

何故その資料が必要なのか。会議の目的と目標に照らして、その資料はどんな価値があるのか。何故その人に依頼したいのか。等々を説明し、理解してもらい、作成を引き受けてもらえるように交渉する必要があるのです。

ここでの武器はソフトスキルです。ソフトスキルとは、対人系のスキルで、体系化されていない・するのが難しい、また文書化されていない・しにくい、コミュニケーション、プレゼンテーション、ファシリテーション、リーダーシップ、チームビルディングなどのスキルです。
ソフトスキルにつきましては、下記のコラムで説明しています。


さらに、準備段階からチームビルディングを意識することは大切です。私はファシリテーションを推進していることもあり、ファシリタティブなリーダーシップが必要だと考えています。ファシリタティブなリーダーシップについては、『ファシリタティブなリーダーシップとは』 で説明しています。

以上書いたことは初心者のファシリテーターにとっては、かなり高いハードルです。初心者の方は、経験があり頼れるファシリテーターのアドバイスを受けながら、しっかり準備すると良いと思います。

数日前に短時間の確認のためのオンライン会議を開催する

ツールが使えるようになっている準備状況や、割り当てた事前作業の進捗状況を確認する目的で、実際の会議やワークショップの2〜3日前に、短時間のオンライン会議を開催すると良いでしょう。

その際、会議やワークショップの目的と目標を今一度確認し、どのような議論プロセスで会議やワークショップを進めるのか、どんなツールを使うのか、どのようなワークをするのか、等々概要をリマインドすることは大切です。

事前作業に関する質問に答える

事前作業を割り当てたら、その作業を担当する参加者に、会議やワークショップの当日は参加可能であることを確認し(より優先度の高い別スケジュールが入っていないことを確認し)、事前作業に対する質問があれば答えます。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いたプロ

小川芳夫

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小川芳夫(BTFコンサルティング)

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