ビジネス変革:各部門の専門家を集めたワークショップ:ファシリテーターの役割を考察する

小川芳夫

小川芳夫

テーマ:ビジネス変革

このコラムはビジネスパーソンの方々を対象に書いています。

デジタル技術を活用したビジネス変革(DX、デジタル・トランスフォーメーション)の必要性が毎日のように言われています。一方で、うまく行っている企業とそうでない企業に明確な差が出てきているようです。

ビジネス変革は改善活動と異なり、自部門内で改善する部分最適なものではないのです。全社規模で行う全体最適を目指すものです。ですから、デジタル技術を活用したビジネス変革(DX)を実施するためには、社内の様々な部門から専門家に集まってもらいワークショップを開催する必要があるのです。ビジネス変革は多くの部門の参画が必須だからです。このコラムでは、デジタル技術を活用したビジネス変革(DX)を実施するためのワークショップにおけるファシリテーターの役割について考察します。副題は、「各部門から専門家を集めたDXのワークショップにおいて、ファシリテーターは様々な知識が必要になるのか?」です。

できるだけ、例を示しながら、わかりやすく話を進めていきたいと思います。

私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。

このコラムでは、次の3点について考えてみます。10分程度で読める内容です。



1. 先行企業と出遅れ企業で収益格差が広がる

この章では、アクセンチュアが実施した、日本を含む20カ国、8300社以上を対象にIT活用状況や組織への浸透度の実態調査のレポート『IT活用はアプローチ次第、先行企業と出遅れ企業で増収格差が広がる』を参照します。

『調査によれば、業界をけん引する企業の多くに共有するIT活用の方法や考え方があることが分かった。』としています。

『調査は、「テクノロジーの導入状況」「テクノロジーの活用度」「組織文化への浸透度」に関して企業のスコアを算出し、上位10%を先行企業、下位25%を出遅れ企業と定義した。2015年から2023年(予測値)の業績評価指標に基づいて、IT活用と業績との関係を分析した結果、先行企業は出遅れ企業に比べて2倍以上の収益成長率を実現できていることが判明した。』とのことです。

先行企業は人間とマシンの協働によって新たな価値を生み出すための次世代システムを構築しているとする。このシステムは「境界線がない」「適応力に長ける」「人間と調和する」という特徴を持つ。』そうです。

また、『先行企業は、ITシステム間や企業間の境界線を取り払い、自律的な学習と改善、環境変化への順応が可能なシステムを構築することで従業員が迅速かつ的確な意思決定に貢献できるようにしている。』としています。

人材育成の面でも先行企業と出遅れ企業の間に約3倍の差がある。先行企業の73%は従業員に対して体験型学習プログラムを提供するが、出遅れ企業は24%にとどまる。先行企業は従業員のスキルに応じた学習プログラムを提供し、スキル向上に対するニーズ予測やトレーニング内容のマッチングなどにもAIやアナリティクスを活用する。としています。AIやアナリティクスを活用して学習をサポートするか否かは別として、デジタル・トレーニングの重要性が指摘されているのだと思います。

『アクセンチュアでテクノロジーサービスの最高責任者を務めるバスカー・ゴーシュ氏は以下のように分析する。
「企業は、単に個々のソリューションとしてテクノロジーを導入するのではなく、自社が構築すべきシステムの全体像を描くことで、収益と利益それぞれにおいて他社をしのぐ成長を遂げることが可能になる。そのためには境界線がなく、適応力を持ち、人間と調和が可能なシステムの全体像を描くことから始める必要がある」』
としています。

「自社が構築すべきシステムの全体像を描く」とは、「自社が成すべきビジネス変革の青写真を描く」ことだと思います。ここをしっかりやるか、やらないかで、2倍以上の収益成長率があるのであれば、しっかりやるべきなのでしょう。収益は給与・賞与・待遇など、さらに新規事業への投資の原資なのですから。


2. 自社のビジネスは自社の従業員がいちばん良く知っている

1章の最後に書いた、「自社が構築すべきシステムの全体像を描く」こと、すなわち「自社が成すべきビジネス変革の青写真を描く」こと。この章では、このことについて考察します。

この章のタイトル「自社のビジネスは自社の従業員がいちばん良く知っている」。これは正しいですか?「自分の業務は良く知っているものの、社内には自分の知らない業務がある」というのが、ほとんどの従業員に当てはまるのではないでしょうか。

私は、それで良いと考えます。理由は後で述べます。

改善活動をやった事がある方は多いと思います。
自分たちが担当している業務について、チームで改善の余地を見つけ出し、打ち手を講ずるというアプローチですよね。キーポイントは、自分たちが担当している業務なので良く知っている、という事です。自分たちだけで改善できるのです。

大規模なビジネス変革の場合、複数の業務が関係します。複数の部門が関係します。複数の部門が協働するという経験をしたことのある方は、あまり多くないかもしれませんね。

規模の点で、ビジネス変革は改善活動と大きく異なります。
また、組織が異なると組織文化が異なる場合があるのです。異なる組織文化の人たちと協働する必要があるのです。

DXを「デジタル変革」と一単語で表現してしまうと、1章で書いたようにデジタル・トレーニングが必要だ、という短絡的な考えに結びつきやすいです。しかしながら、「異なる組織文化を持った人たちと協働しなければならない。これは今までに経験したことがないことだ。」としたら、デジタル・トレーニングに加えて、ソフトスキルの研鑽も必須となる、ということに頷いていただけると思います。

ソフトスキルとは、ファシリテーションコミュニケーションプレゼンテーションリーダーシップチームビルディングエモーショナル・インテリジェンスなどの対人系のスキルです。コロナ禍の中オンラインで協働する場面が増してきている今、とても注目されているスキルです。

この章のタイトル「自社のビジネスは自社の従業員がいちばん良く知っている」。これを「自社のビジネスは他社の従業員がいちばん良く知っている」としたらどうでしょう?明らかに間違っていますよね。

「自社のビジネスは自社の従業員がいちばん良く知っている」状態にするために大切なものがファシリテーターファシリタティブなリーダーシップです。

リーダーシップとは、職場のチームで目標に向かって協働し、目標を達成することを成し遂げる力です。目標を達成するよう働きかける力とも言えます。
リーダーとは、役割や職責であり、具体的には主任、課長、部長などです。
リーダーシップは、リーダーの職責を担う人だけに求められる能力ではなく、チームの目標を達成するために活動している従業員一人ひとりに必要な力といえます。

ソフトスキルには、ファシリテーションとリーダーシップが含まれています。
ファシリタティブ (facilitative)は、「物事の進行などを促進する」という意味の形容詞です。ファシリタティブなリーダーシップとは、ファシリテーションを中核に置きながら、チームに働きかけチームを目指す目標に到達するようリードするリーダーシップです。

「自社のビジネスは自社の従業員がいちばん良く知っている」状態にすることを次章で考察します。


3. 自社のビジネス変革は自社の従業員にしかできない

この章では、「自社のビジネスは自社の従業員がいちばん良く知っている」状態にするためにはどうしたら良いのか、具体的な例をとりあげながら考えます。

異なる組織文化を持った人たちが1つの部屋に集まったら、自動的に協働が始まるでしょうか。私の経験からすると、答えはNOです。複数のグループが1つの部屋にいるだけです。一つの目標を目指すチームにはなっていません。これは、ある意味、当たり前のことです。トップが目標をみんなの前で言うことは必要ですが、それだけでは十分ではありません。

では、精神論を訴えれば良いのでしょうか?そんな事では変わりません。

異なる組織文化を持った人たちがひとつの目標を目指すチームになって協働するようになるにはどうすれば良いのか、この章ではこれを考えます。

ファシリテーターは、中立な立場で、議論のプロセスを管理し、チームワークを引き出し、成果が最大となるように支援します。

バイクをショップから受注しショップに販売すると言う業務を行っている会社があるとしましょう。この会社の業務プロセスを、プロセス・マッピングというフレームワークを使って、見える化したものが下図です。(画像のタップやクリックで拡大します)
海外では、LOVEM (Line Of Visibility Enterprise Modeling) とも呼ばれています。
図中に書いたとおり、横軸に業務プロセス縦軸にプロセスに登場する役者(人・部門・システム)を書き、業務プロセスを見える化します。最初は、大づかみな粒度から始めると良いでしょう。
プロセス・マッピング

フレームワークのメリットを3点挙げるとすると下記になります。

  • メンバー全員で共有・理解しやすい
  • 有用性が実証されている
  • 議論に合うフレームワークを使うと仕事が効率化される


プロセス・マッピングは理解するのが難しそうに見えますか?
キーポイントは、大づかみな粒度から始める事です。細かい粒度から始めると、門外漢のプロセスは理解しづらくなります。(その領域の専門家しか分からなくなってしまいます。)

異なる組織文化を持った人たちがひとつの目標を目指すチームになって協働する場を創るにはファシリテーターが必要です。ファシリテーションを活用することが必要です。

私のファシリテーションは次の4つのステップから構成されます。

  1. 場を作る
  2. 意見を引き出す
  3. 意見をかみ合わせる
  4. 意見をまとめる

大づかみな粒度から始めるというプロセスを設計するのは、場を作るステップでやるべきことです。

例えば、営業本部と生産本部はあまり仲が良いとは言えない関係だとします。ファシリテーターもなく、議論プロセスの設計もなされていないような場合、いきなり今今現在の懸念となっている課題の話が始まってしまうかもしれません。議論プロセスが設計されていないので、ゴールの共有もされていないので、不思議ではありません。そのために集まってもらったのではないのに。こんな事ではビジネス変革なんて、できるはずがありません。時間の浪費です。

さて、上図のプロセス・マッピング。登場する役者は、お客様、ショップ、営業本部、生産本部です。初期の段階で、営業本部と生産本部から、専門家が集まりました。ファシリテーターが議論プロセスを説明します。この例では、空白のプロセス・マッピングを示し、現状のプロセス・マッピングを完成することが目標であることを言い、参加者の同意を得ます。現状を表現するので、問題なく進んで欲しいものです。しかしながら、実際に現状の見える化をし始めると、「もっとこうして欲しい」「こうするべきだ」「なんでこんな非効率なことをあなたの部門ではやっているのか」等々、現状の見える化から脱線してしまう事が往々にしてあり得ます。そして、その議論に熱中してしまいがちです。時間の浪費とまでは言いませんが、時間の使い方が下手なパターンです。

ファシリテーターは中立な立場ですので、熱中した議論に参加せずに、脱線したことを検知します。そして、例えば「今は現状の見える化をしているので、そこに集中しましょう。とはいえ、今議論になっていることは、現状の見える化が完了した後に、課題を考える上でとても参考になることだと思いますので、忘れないようにパーキングロットに書き留めておきましょう。よろしいでしょうか?」などと言ったりします。パーキングロットは、日本語で「駐車場」と訳されますが、会議におけるパーキングロットは、「大切なことなんだけど、それを議論するのは今じゃないよね。だから、書き留めておいて後で議論しよう」というものです。ファシリテーターが入る会議では、良く使われるものです。

なぜパーキングロットは良く使われるのか。
「今は現状の見える化をしているので、そこに集中しましょう。」とだけ言ったとしましょう。「私たちが大切だと思って真剣に議論していることを無駄だというのか?」とか「あなたは、この議論を無視するつもりなのか?」など強い反発を受けることもあります。ですから、日本だけでなく欧米でも普通に使われています。そもそも、parking lotと言っている時点でアメリカから来たのかな、と思う方もいらっしゃると思います。

冒頭で、「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーション(facilitation)だと書きました。ファシリテーションはアメリカで生まれました。あの国にはディベート文化がありますから、放っておくとディベートっぽくなってしまう事が、昔あったのだと思います。しかしながら会議は合意形成するために開催している。「何故こんなに長い時間を使っても合意できないのだ?もっと良いやり方があるに違いない。どうすれば良いのだ?」という課題が、ファシリテーションを生み出したのかもしれない、と私は考えています。

さて、一つずつ議論プロセスを進めることはとても大切なことです。例えば、①現状を正確に見える化する、②課題を探す、③打ち手をみんなで議論する、などといった具合です。これらをごちゃ混ぜにすると、議論は爆発します。収拾がつきません。ファシリテーターの役割「中立な立場で議論のプロセスを管理する」が大切になります。

さて、上図のプロセス・マッピンングを見てみましょう。
営業本部の生産依頼業務担当者。自分たちのチームの範囲内の改善活動レベルでは気づき得ない事があるのです。さらに長年やっていると、それが日常になってしまって、疑問を持ちにくいという危険性もあります。上図のように大づかみに把握する事によって、全員にわかりやすく見える化する事ができるのです。

全社規模でプロセス・マッピングする事が初めての場合、あるプロセスは詳しくて、あるプロセスはザックリしすぎ、など粒度の点で問題が出ることもよくあります。この辺りの粒度をうまくバランスをとるのもファシリテーターの役目です。

私のような外部のファシリテーターが入ることもあります。「あれ?ここはとても詳しいですね。逆にこっちはとても荒い。粒度のバランスをとってみませんか?」などと提案したりします。

ところで、大づかみなプロセス・マッピングをレベル1として、もう少し詳しくしたものをレベル2、さらに詳しくしたものをレベル3とする。などレベル分けすることもあります。

さて、現状の見える化が完了し、課題を探していると、注文がショップから営業本部を経て生産本部に流れるところで、「店から来る注文書は書式が変わるだけ。内容はそのまま生産依頼書に転記される」(下図中の赤字)という事がわかりました。(画像はタップやクリックで拡大します)

ここを営業本部と生産本部で検討します。
具体的には、下図で虫メガネを置いたところをズーム・インします。
プロセス・マッピング虫眼鏡付
営業本部で行っていることは、下記の5点でした。

  • 受注番号を振る。
  • FAXで送られてくるので、記入漏れがある場合がある。また手書きなので、文字が読みにくい場合がある。このような場合はショップに電話で問い合わせている。
  • FAXで送られてきた発注書を、人手でチェックし、問題がなければ生産依頼書に手書きで転記している。
  • 発注書に誤りがある場合はFAXでショップに連絡する。
  • 生産本部にFAXする。


上図の青い破線矢印のように、「ショップから直接生産本部にFAXすれば良い?」というアイデアが出ました。このアイデアについては、生産本部から猛反対が出ました。上記営業本部でやっている5点を生産本部でやる余裕はない、という理由でした。

この例は非常に単純化しているので、どうすれば良いのか、既に想像がついている方も多いかと思います。しかし、複数の部門が関係すると、こんな感じのことは良く起こるものです。

仮に、営業本部と生産本部との間で議論が平行線になってしまい、膠着状態になってしまったとします。ファシリタティブなリーダーシップを持った人がいる場合、その人はチームを目標に到達するようにリードするので、膠着状態から抜け出すために知恵を絞るのです。

みんなでプロセス・マップを見ながら、会議室にはいない役者、お客様とショップがいることをリマインドしました。そもそも、この事業は「バイクを運転して、風を切りながら楽しくドライブしてリフレッシュしたい」あるいは「安全な壊れにくいバイクで毎日の仕事をしたい」というお客様の顧客体験価値を満たすためにやっている、ということをリマインドしました。

いくつかのショップの人たちに生の声を聞こう、ということになりました。この段階で、このビジネス変革に関わる人は社内だけでなく、社外とも協働することになります。

ショップの意見をまとめると、「今どきFAXでの注文は時代遅れ」、「手書きが面倒臭い」、「他社はスマホやタブレットでも発注できるのに...」などの意見が出てきました。

会社に戻り、再び会議が開かれます。
検討した結果、ショップはオンライン発注できるようにしよう、ということになりました。

意見を出してくれたショップと発注アプリを協働してデザインすることになりました。共創です。ショップの発注時の手間を省くことを目標として、まずは紙上にアプリの画面を描きながらデザインします。アプリ側で発注情報に誤りがないことをチェックする機能を入れることになりました。また、ショップに完成車を納入する納入予定日(おおよその日)を発注時にアプリに表示することになりました。確定納入日は後でアプリから確認できるようにします。アプリから受注書と納入書を印刷できるようにします。

ショップを巻き込んだビジネス変革ができそうです。あとはアプリを開発し、意見を出してくれたいくつかのショップで先行して使ってもらい、フィードバックをもらい、アプリを洗練していくことになります。

この章で書いたことを振り返り、ポイントを洗い出します。

  • 人を集めただけでは協働は始まらない。
  • 適切なフレームワークを使って議論する。大づかみなレベルから始める。
  • ファシリテーターが、中立な立場で、議論のプロセスを管理し、チームワークを引き出し、成果が最大となるように支援する。
  • ファシリタティブなリーダーシップで、困難な状況になっても、目標に到達するようにチームをリードする。
  • 真剣な協働を通して、ビジネス変革チームで活動する体験の価値を上げることで、チームワークを醸成する。


最後に、このコラムの副題、「各専門家を集めたDXのワークショップにおいて、ファシリテーターは様々な知識が必要になるのか?」について私の考えを書いてこのコラムを閉じたいと思います。

様々な深い知識は必要ない、というのが私の考えです。ただ、新入社員研修などで学ぶ、基本的な様々な業務知識は必要だと考えます。

要点をわかりやすくするために、外部の私がファシリテーターとしてこの章に書いたビジネス変革チームの会議に入ったと仮定しましょう。

例えば、営業本部。会社によって営業のやり方の詳細は異なります。私が、知ったかぶりをして、営業本部と生産本部との議論に入ってしまったとしましょう。「外部のあなたに、ウチの業務の細かいところはわからないだろう」とか「今議論しているのはそういうことじゃないんだよ。ちょっと、黙っていてくれないかな。」など、と反発を受けるかもしれません。そもそも、当事者でない外部の私が、議論の中身に口を出すことは不可能ですし、やるべきではありません。

ファシリテーターは、中立な立場で、議論のプロセスを管理し、チームワークを引き出し、成果が最大となるように支援する役割なので、そこに集中すべきなのです。

ただ、何を話しているのかさっぱり分からない、という状態になってしまってはいけません。基本的な業務知識は必要です。例えば、営業本部の仕事。その会社の営業の仕事の詳しいことは知らなくても、営業とはどういう仕事なのか、抽象的な理解で構いませんので、理解している必要があると考えます。

今から、様々な業務の基本を身につけたい、と思ってくださった方への、私からのアドバイスは、本を読むことです。新入社員研修レベルのものから始めても良いかもしれません。ちょっと、物足りなければ、さらに詳しいものが書店に並んでいます。

もし、営業本部か生産本部からファシリテーターを出す場合はどうでしょう。私の考えは、「やめた方が良い」です。
かなり熟練のファシリテーターであれば、適切に「中立な立場で、議論のプロセスを管理し、チームワークを引き出し、成果が最大となるように支援する役割」を担い、時として、ファシリテーターの役を降りて当事者として議論に参加し、またファシリテーターに戻る、という一人二役を演じられるかもしれませんが、これはかなり難しいことです。当事者なのに中立になる、というのはかなり難しいのです。とはいえ、一人二役を演じる必要があるのであれば、かなり熟練のファシリテーターを入れるしかないというのが私の考えです。


他部門からファシリテーターを出すのであれば、外部の私と同じ立場でファシリテートすべき、と考えます。「私は以前営業本部にいたから分かるんだけど...」などは、ファシリテーターとして地雷を踏むようなものです。議論の中身は当事者のものです。ファシリテーターのものではないのです。ファシリテーターの役割は、議論のプロセスを管理し、成果が最大となるように支援することである、ということを忘れてはなりません。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 

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小川芳夫プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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