会社の会議:ファシリテーションでどう変わる?:共感マップ(考える・感じる)
このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。
会議の進め方、みなさん苦労していますか?
私BTFコンサルティングのファシリテーションを活用した会議の進め方は、次の4つから構成されます。
- 場を作る
- 意見を引き出す
- 意見をかみ合わせる
- 意見をまとめる
2番の「意見を引き出す」でいろいろな意見を引き出しました。「意見を発散させた」ともいえます。
3番の「意見をかみ合わせる」では、引出された意見をかみ合わせます。「意見を収束させる」ともいえます。
複数の意見をかみ合わせることによって、化学変化とも言えるような、新たなキラッと光る「おお!」というようなアイデアが生まれることがあります。セレンディピティ(serendipity)と言っても良いかもしれません。ウィキペディアによると『セレンディピティとは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。』とあります。
このコラムでは、「意見をかみ合わせる」について、今理解すべき3つの視点として、次の3点を書きます。7分程度で読める内容です。
私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。
ファシリテーション(Facilitation)。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。
1. 論理コミュニケーションとは?
「論理コミュニケーションって何だろう?」と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれませんね。引き出されたいろいろな意見やアイデアを、構造化して分かりやすく整理し、参加者の前に見える化し、議論を進めることです。
あなたが参加する会議は、リアルタイムで意見やアイデアを参加者の前に見える化していますか?
もし見える化していないとしたら、意見やアイデアは「声」として会議室内の空気を振動させ、参加者の耳に届いているだけかもしれません。そして、その「声」はやがて消えてしまいます。このやり方は致命的な欠陥があります。
複数の人で複数の意見をかみ合わせる、という協働を実施するには、参加者全員で意見を目の前に共有し、さらに今起こっている議論を目の前に共有することが必須です。頭の中だけで考えるのは効率が悪いのです。マインドマップを使った経験のある方、いらっしゃると思います。アイデアを目の前に書き出すことの有効性を実感されたと思います。同じような感じです。目の前に共有するには、議論を見える化することが必要です。
会議が始まる前に資料を準備して参加者に配布する場合があります。会議の最中にその資料を見つめている人がいる。そういう会議は良くありません。議論はライブで進行しているのに、その人は会議開始時点での紙を眺め自分の思考に浸ってしまうからです。
上の段落で「参加者全員で意見を目の前に共有し、さらに今起こっている議論を目の前に共有することが必須」と書きました。参加者全員で1つの議場を見るべきなのです。
「1つの議場」とは、会議室に参加者全員が集まった会議であれば、模造紙(フリップチャートと呼んでいる会社もあります)やホワイトボードです。模造紙やホワイトボードを活用して議論を見える化するのです。リモート参加者が一人でもいる場合は、クラウド上のホワイトボードを活用して議論を見える化します。クラウド上のホワイトボードの例は、MURAL や miro です。(他にも色々あります)
「参加者全員で意見を目の前に共有し、さらに今起こっている議論を目の前に共有することが必須」なもうひとつの理由があります。短期記憶です。人の短期記憶は短時間で消えてしまいます。ですから、みんなの目の前に共有する(本コラムでは模造紙に書く)ことが必要なのです。
そもそも、議論はその時その時に話し合われていることを記憶することが目的ではありません。議論してアイデアを紡ぎ、合意を形成することが目的です。このことに各自のエネルギーを集中させるべきです。
議論の見える化。そもそもは、デイビッド・シベット (David Sibbet) が提唱したビジュアル・ミーティング (Visual Meeting) が最初だろう、と私は思っています。
彼の本、ビジュアル・ミーティングの冒頭に書いている「クリエイティブで革新的な会議とは」から引用します。(ISBN978-4-02-331176-3)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 引用開始 ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「会議をよりよく進める方法があったらいいな」と思いませんか?生産的であるだけでなく、そのプロセスにもワクワクする。そんな会議になったら...
しかし実際の職場の会議では、メンバーに「もっとアイデアを出せ」と、ただただプレッシャーをかけてしまっていないでしょうか?
そのような会議の課題は万国共通であり、これから紹介する「ビジュアル・ミーティング」ー私が38年間にわたって世界中で実践してきた生産的でワクワクするような会議ーのノウハウが課題解決に役立ちます。
私がこの本を書く理由はそれだけではありません。
人と人とのコミュニケーションが希薄になった現代社会では、お互いのつながりや思いやりが少なくなったために生じる事件や事故が急増しています。職場や学校には「心の悩み」を抱える人が増えています。一方で、組織のスリム化や予算削減が加速し、人と人が対話し、協力して何かを成し遂げる機会が激減しています。
私は、この状況を危惧すると同時に思うのです。私たちは、複雑で激しい経済や環境の変化に、もはや対応できなくなってきているのかもしれないと...
「ビジュアル・ミーティング」は、会議の課題だけではなく、現在の社会が抱える問題に対する直接的な答えになると信じています。今、本当の意味でコミュニケーションのあり方が問われているのです。
(中略)
私たちは皆、一人の力よりもチームの力のほうがはるかに大きいことを知っており、ビジュアル・ミーティングで用いるツールや手法は創造的な成果を導き出すことをサポートしてくれます。人と人を結びつけ、チーム力を拡大してくれるのです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 引用終了 ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ビジュアル・ミーティングの効果を3点ご紹介いたします。
参加意識を向上させられる
自分の発言が書き留められるので、「聴いてもらえた」「存在を認めてもらえた」と感じ、主体的に話し合いに関われるようになります。
全体を俯瞰して見ることができる
グループ分けされたアイデアを比較し、書き出された言葉の中に隠れたパターンを見出すことができます。そして、広い視野で「より大きな全体」を意識して情報の整理ができます。
改善活動などで、KJ法を用いてポストイットに書き出されたものをグループ分けしたご経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。親和図法ですね。議論を構造化すると、関係や位置付けがわかりやすくなります。
記憶が共有化される
適切なフレームワークに落とし込めば、参加者の記憶として定着します。そして、課題が強く意識され、実行が促進されます。
この章では、議論は見える化するべきで、見える化した時の効果を示して、なぜ見える化するべきなのかを書きました。
2. ファシリテーション・グラフィックとは?
1章では議論は見える化するべきで、見える化した時の効果を示して、なぜ見える化するべきなのかを書きました。
2章では、どうやって議論を見える化するのか、ということを書きます。
模造紙(フリップチャート)を壁に貼り、ペンで議論を描いていきます。
ホワイトボードを活用している組織もあるでしょう。
リモート参加者が一人でもいる場合は、1章で紹介したようなクラウド上のホワイトボードを活用します。
ファシリテーターがこれをやる場合もありますし、別の人にこの書記のような役をやってもらう場合もあります。
私BTFコンサルティングでは、議論を見える化するための道具としてファシリテーション・グラフィックを使います。ファシグラと略されることもあります。出てきたアイデアを、発言者の意図に沿って、参加者に分かる言葉で書きます。関係するアイデアとアイデアを、線や矢印でつなげたり、囲ったりしながら構造化します。時にはイラストを書くこともあります。ペンの色は7色程度を用意します。色を使うことで、例えば改善のタネを浮かび上がらせることができます。
ここでのキーポイントは、参加者の方々の合意を得ながら議論の見える化を進めていくことです。議論は議論している参加者のものです。ファシリテーターや書記役が「こう議論されている」と自分勝手な解釈をして書いてはいけません。「私はそんなこと言ってない」「聴いてもらえなかった」「存在を認めてもらえなかった」「あの人は議論を誘導しようとしている」となってしまう危険性があるからです。
スキルとしてはソフトスキルを活用します。
ソフトスキルとは、ファシリテーションに加えて、コミュニケーション、プレゼンテーション、リーダーシップ、チームビルディングなどの対人系のスキルです。ソフトスキルについては『会議効率化:ソフトスキルとは?:今理解したい3つの視点』というコラムで分かりやすく説明しています。
議論を絵に描くグラフィック・レコーディングを見たことはありますか?
グラレコと略されることもあります。あれを見た人は、絵心がないと描けないものだ、自分には無理。そんなことを思ったことがあるかもしれませんね。違うんです。
大切なスキルは、議論を見える化するスキルなのです。絵心ではありません。
議論の展開も分かるように、議論を見える化することは、キーポイントです。
私自身は綺麗でないファシリテーション・グラフィックの方が好きです。(綺麗に書かれたファシグラももちろんありますよ)その方がリアリティーがあると思えるからです。私の頭の中は綺麗に整理整頓されていませんし、私が経験した多くの議論は綺麗な絵にまとめられるようなものではなく、もっとグチャっとしたものが多かったので、そう思うのかもしれません。
デイビッド・シベットが作った Grove Tools という会社があります。
彼らは、自らの経験をいくつかのフレームワークにまとめ、議題によって適切なものを選び、議論をファシリテートしていると思われます。もちろん議論の内容によってカスタマイズして使っているのでしょうね。
彼らは、テンプレートを販売しています。販売サイトは、こちらになります。英語になりますが、YouTube動画が貼られているので、議論を見える化している様子を具体的に感じていただけると思います。
3. フレームワークとは?
意見・アイデアをかみ合わせるための道具として、フレームワークを用います。
フレームワークについては『会議効率化:フレームワークとは?:今理解すべき3つの視点』というコラムでわかりやすく説明しています。
意見をかみ合わせるには、複数のスキルを組み合わせて使うことが必要になります。簡単なことではありません。一つひとつ積み重ねるしかない、と私は思います。運動後に筋肉痛を感じることがあるように、「成長痛」を感じることがあるかもしれません。
想像してみてください。あなたがこのコラムに書いたようなことができるようになったとしたら、どうでしょう?
人が集まって議論し合意を形成する際に必要な人になります。とても大切なスキルを持った人だと思います。人が集まって議論し合意を形成する行為は無くならない、と私は思うからです。
独学でアプローチするのも良いでしょうし、経験者のアドバイスを受けながら研鑽するという選択肢もあります。
後者の方が効率よく研鑽できる、と私は考えます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。