応対品質とは?

沖本能道

沖本能道

テーマ:経営リスク対策


コールセンターでは、「応対品質を高める」ために、さまざまな取り組みが行われています。

  • 応対をモニタリングして評価する。
  • オペレーターを教育する。
  • FAQやマニュアルを整備する。
  • トークスクリプトを作る。
  • SVがフィードバックする。


どれも、コールセンターを運営するうえで重要な取り組みです。

ところが、こうした対策を続けているのに、同じような問題が繰り返されることはないでしょうか。

「研修をしたのに、また同じ指摘が出てくる」

「評価項目を見直したのに、応対品質のばらつきがなくならない」

「FAQを増やしたのに、SVへの確認が減らない」

「VOCを集めているのに、会社の改善につながらない」

こうしたとき、私たちは「まだ量が足りない」と考えがちです。

  • もっと教育する。
  • もっと評価する。
  • もっとFAQを増やす。
  • もっとモニタリングする。


もちろん、それで解決する問題もあります。

でも、もし対策を増やしても同じ問題が繰り返されるとしたら。

そのときは、対策の量ではなく、そもそも問題の捉え方を変える必要があるのかもしれません。

ここでは、「応対品質」を別の角度から考えてみます。

応対品質とは何か?


一般に、コールセンターの応対品質を考えるときには、さまざまな観点があります。

正確に回答できているか。

迅速に対応できているか。

説明が分かりやすいか。

顧客の話をきちんと聴けているか。

言葉遣いや態度に問題がないか。

顧客に安心感を与えられているか。

共感できているか。

こうした項目は、応対の良し悪しを確認するうえで重要です。

では、これらを高めれば、それだけで顧客の期待に応えられるのでしょうか。

例えば、顧客から「解約したい」と言われたとします。

その言葉に対して、解約手続きを正確かつ迅速に行えば、応対としては間違っていないかもしれません。

しかし、その顧客が本当に解決したかったことが「解約」そのものではなく、

「商品が期待していたものと違った」

「使い方が分からなかった」

「困っていることを解決できなかった」

ということであれば、話は変わります。

つまり、言葉として表れた申し出に正確に対応するだけではなく、その顧客が何を意図しているのかを理解することが重要になります。

当社では、応対品質を、

顧客の意図を理解し、その顧客に必要な応対を選択し、正確かつ迅速に対応できること

と考えています。

ここで大切なのは、「察すること」や「共感すること」そのものを目的にしないことです。

察することも、共感することも、顧客の意図を理解し、その顧客に必要な応対につなげるための行動です。

必要であれば察する。

必要であれば質問する。

必要であれば確認する。

必要であれば共感する。

そして、その顧客に必要な説明、提案、処理につなげる。

これが、私たちが考える応対品質です。

応対品質を高めるために、これまで何をしてきたのか?


このように考えると、応対品質を高めるために行ってきた取り組みの意味も見えてきます。

評価項目を設定する。

オペレーターの応対をモニタリングする。

評価結果をフィードバックする。

不足している知識やスキルを教育する。

FAQやマニュアルを整備する。

トークスクリプトを整備する。

SVが応対を支援する。

これらは、いずれも必要な取り組みです。

特に、何が良い応対なのかを明確にしなければ、オペレーター自身も何を改善すればよいのか分かりません。

そのため、評価基準を明確にし、実際の応対を確認し、フィードバックし、必要な教育につなげる。

これは応対品質を高めるための基本的なサイクルです。

しかし、ここで一つ考えてみたいことがあります。

そのサイクルを回しているのに、同じ問題が再発するとしたら、どうすればよいのでしょうか。

ヒトは評価されることで行動を変える


応対品質を高めるには、オペレーターの行動が変わらなければなりません。

そのためには、

「何ができているのか」

「何ができていないのか」

「何を変えればよいのか」

を本人が理解できる必要があります。

評価は、そのための重要な仕組みです。

評価して、フィードバックする。

フィードバックを受けて、行動を変える。

行動が変わった結果を、もう一度確認する。

この繰り返しによって、応対品質を高めていくことができます。

だからこそ、評価項目をどう設計するのかが重要になります。

では、何を評価すればよいのでしょうか。

応対品質を評価する項目とは?


例えば、

  • 正確性
  • 迅速性
  • 傾聴
  • 説明の分かりやすさ
  • 言葉遣い
  • 共感
  • 顧客満足


など、さまざまな評価項目が考えられます。

しかし、評価項目を増やせば増やすほど、良い応対になるとは限りません。

重要なのは、

その評価項目が、顧客に必要な応対につながっているか

です。

「共感できているか」を評価すること自体が目的になってしまえば、共感する必要のない場面でも共感しようとするかもしれません。

「質問できているか」を評価することが目的になれば、必要のない質問を増やしてしまうかもしれません。

つまり、個々の行動だけを切り取って評価するのではなく、

なぜ、その行動が必要だったのか

まで考える必要があります。

顧客が何を意図しているのか。

何を解決したいのか。

そのために何を理解する必要があるのか。

何を確認する必要があるのか。

そして、どのような応対が必要なのか。

このつながりを考えることで、評価項目の意味も変わってきます。

コールセンターの中だけを見ていて、本当にいいのか?


ここまでの話は、コールセンターの中で応対品質を高めるという視点です。

評価する。

教育する。

モニタリングする。

フィードバックする。

スクリプトやFAQを改善する。

これは、コールセンターを運営するうえで欠かせません。

一方で、これらの説明だけでは、どうもしっくりこない方もいるのではないでしょうか。

特に、

「コールセンターを、単に問い合わせに対応する場所とは考えていない」

「顧客の声を会社の改善に活かしたい」

「顧客との接点を、会社の機能として捉えたい」

という方にとっては、もう一段違う見方が必要になります。

ここからは、コールセンターの「中」だけではなく、社の中にあるコールセンターという「枠」まで含めて、応対品質を考えてみます。

コールセンターを「会社の一機能」として考える


コールセンターには、顧客からさまざまな情報が入ってきます。

問い合わせ。

相談。

苦情。

要望。

返品や交換。

購入後の困りごと。

商品やサービスに対する期待。

こうした情報は、単に電話を処理するための情報ではありません。

そこには、

「顧客は何に困っているのか」

「何を期待しているのか」

「なぜ、その商品やサービスを選んだのか」

「どこで期待と現実の差が生じたのか」

といった、会社が知るべき情報が含まれています。

そう考えると、コールセンターの役割は、「問い合わせに答えること」だけではありません。

顧客と会社との接点として、顧客の意図や期待を理解し、それを会社が知るべき情報として捉えること。

これも、コールセンターの重要な役割になります。

顧客の意図を理解することから、応対を考える


顧客が話した言葉だけを見ていると、応対は「質問されたことに答える」という形になりやすくなります。

しかし、顧客が本当に解決したいことは、その言葉の奥にあるかもしれません。

「解約したい」

という言葉の背景に、

「商品が使えない」

「期待していた機能がなかった」

「困っていることを解決できなかった」

という問題があるかもしれません。

だからといって、すべての顧客に詳しく質問すればよいわけでもありません。

顧客によって必要な理解は違います。

すぐに答えればよい場合もあります。

一つ確認するだけで解決する場合もあります。

背景まで確認したほうがよい場合もあります。

重要なのは、情報をたくさん集めることではなく、その顧客に必要なところまで理解することです。

顧客が解決したいことから、必要な応対を考える


良い応対を考えるとき、最初に「どんな言葉で話すか」を決めるのではなく、

顧客は何を解決したいのか?

から考えてみます。

顧客が解決したいことが分かれば、

そのために何を理解する必要があるのか。

何を確認する必要があるのか。

どんな質問が必要なのか。

どんな説明や提案が必要なのか。

どんな処理を行えばよいのか。

という順番で考えることができます。

つまり、

応対の言葉や手順を先に決めるのではなく、顧客が解決したいことから逆算して、必要な応対を考える。

この見方を持つことで、「良い応対」の捉え方そのものが変わります。

顧客との会話から、会社が知るべきことを捉える


さらに、顧客との会話には、会社にとって重要な情報が含まれています。

例えば、一件の返品があったとします。

返品処理を正確かつ迅速に行えば、業務としては完了します。

しかし、

「なぜ返品したのか」

「購入前には何を期待していたのか」

「実際に商品を受け取って、どこに違いを感じたのか」

まで分かれば、単なる返品処理とは違う情報になります。

その情報が、商品、サービス、販売方法、説明、業務などの改善につながるかもしれません。

ここで重要なのは、オペレーターに「もっと情報を聞いてください」と求めることではありません。

顧客にとって必要な応対を行う中で、会社が知るべきことにも気づける状態をつくること。

これが、コールセンターを会社の一機能として見るということです。

VOCをコールセンターの中だけで終わらせない


顧客との会話から得られた情報を、コールセンターの中だけで蓄積しても、それだけでは顧客期待に応えたことにはなりません。

必要なのは、

顧客との接点で得た情報を、

必要な人が、

必要なときに、

必要な形で使える状態にすることです。

例えば、

「この商品について同じ困りごとが起きている」

「この説明では顧客の期待と合っていない」

「購入時には分からなかった問題が、商品を受け取った後に表れている」

といった情報があれば、それを商品、サービス、営業、マーケティング、業務、システムなど、必要な部門につなげることができます。

こうして初めて、顧客との一件の会話が、会社の改善につながります。

会社の機能として考える「応対品質」とは?


ここまで考えると、「応対品質」という言葉の意味も少し変わってきます。

コールセンターの中だけを見れば、

「正確に答えられたか」

「迅速だったか」

「適切な言葉遣いだったか」

「顧客に寄り添えていたか」

という評価になります。

もちろん、これらは重要です。

しかし、会社の一機能として見るなら、それだけではありません。

顧客の意図を理解できたか。

その顧客に必要な応対を選択できたか。

顧客が解決したいことに応えられたか。

そして、その会話から会社が知るべきことを捉えられたか。

さらに、それを会社の改善につなげられたか。

ここまで含めて考えると、応対品質は単なる「オペレーターの話し方や対応技術」ではなくなります。

顧客期待に応えるために、顧客接点としてどのように機能できているか。

という視点が加わります。

では、何を評価すればいいのか?


ここまで読んで、

「では、結局、何を評価すればいいのか?」

と思われるかもしれません。

ここで重要なのは、評価項目を増やすことではありません。

まず、

何を実現したいのか

を明確にすることです。

顧客の意図を理解することなのか。

顧客が解決したいことに応えることなのか。

顧客との会話から、会社が知るべきことを捉えることなのか。

あるいは、そのすべてなのか。

目的が変われば、必要な評価も変わります。

だからこそ、応対品質を高めようとするとき、

「評価項目をどう増やすか」

から始めるのではなく、

「私たちは、顧客に何を実現したいのか?」

から考えてみることが重要です。

今まで行ってきた評価、教育、モニタリング、FAQ、スクリプトなどをやめる必要はありません。

それらを土台にしながら、

「それでも収まらない問題は何なのか?」

を見つめる。

そして、

「その問題は、本当に今までの対策を増やせば解決する問題なのか?」

と問い直してみる。

そこから、応対品質をもう一段違う角度から考えることができます。

おわりに


応対品質を高めることは、コールセンターにとって重要なテーマです。

評価することも、教育することも、モニタリングすることも、FAQやスクリプトを整備することも、決して無駄ではありません。

ただ、それらを続けても同じ問題が繰り返されるのであれば、

「もっとやる」以外の選択肢を考えてみる。

その一つが、

顧客が何を解決したいのかを起点に、必要な理解、質問、確認、応対を考えること。

そして、顧客との会話を、その場の問題解決だけで終わらせず、会社が顧客期待に応えるための情報として活かしていくことです。

応対品質を考えるとき、

「どのように話すか」

だけではなく、

「顧客は何を解決したいのか」

「そのために何を理解する必要があるのか」

「その会話から、会社は何を知るべきなのか」

まで視野を広げてみる。

今までの対策で解決できなかった問題があるなら、対策の量を増やす前に、問題の捉え方そのものを変えてみる。

そこから、新しい応対品質の考え方が始まるのかもしれません。

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沖本能道
専門家

沖本能道(コールセンター運用改善コンサルタント)

株式会社アクティブ・コーチング・システム

クレーム(コールセンター)を基点にして、独自AIと業務改善の実績を融合したサービスを提供し、会社組織横断で課題解決を推進支援します。

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