トークスクリプトがあるのに、オペレーターの応対品質がそろわないのはなぜ?

沖本能道

沖本能道

テーマ:経営リスク対策


コールセンターの応対品質をそろえるために、トークスクリプトを整備している企業は少なくありません。

質問の仕方や案内の手順を決め、研修を行い、定期的にスクリプトを見直す。それでも、オペレーターによって質問や確認の仕方が異なり、応対品質にばらつきが残ることがあります。

ベテランなら問題なく対応できるのに、新人は次に何を聞けばよいか分からない。担当者によって確認する情報が異なり、同じ問い合わせでも対応の進め方が変わってしまう。

こうした問題が続くと、教育や指導を強化しようと考えるかもしれません。

もちろん、教育は大切です。

しかし、応対品質のばらつきは、本当にオペレーターの経験や努力だけで解決できるのでしょうか。

今回は、トークスクリプトを整備しているのに応対品質がそろわない理由と、改善するために考えたいポイントを解説します。

トークスクリプトがあっても、会話の進め方は担当者任せになっていないか


トークスクリプトと聞くと、オペレーターが話すセリフや、顧客の回答に応じた分岐を記載したフローチャートを思い浮かべる方も多いでしょう。

実際、フローチャートは会話の流れを整理し、対応手順を共有するために役立ちます。

ただし、フローチャートが存在することと、必要な会話の進め方まで設計されていることは同じではありません。

例えば、次のような構成を考えてみます。

  • 冒頭の挨拶
  • 問い合わせ内容の確認と問題解決
  • 終了時の挨拶


これだけでも、業務の大まかな流れは表現できます。

しかし、顧客が問い合わせ内容を説明した後、具体的に何を質問するのでしょうか。

顧客の回答によって確認すべき内容が変わった場合、どのように分岐するのでしょうか。

顧客の説明だけでは必要な情報がそろわない場合、どこまで質問を掘り下げるのでしょうか。

こうした具体的な会話運びが設計されていなければ、オペレーターは自分で次の質問や確認事項を考えなければなりません。

経験豊富な担当者なら、過去の経験や身につけた知識から適切な質問を組み立てられるかもしれません。

一方、経験の浅い担当者にとっては、何を聞けばよいのか、どこまで確認すればよいのかを、その場で判断すること自体が難しい場合があります。

当社が実証実験に向けて確認したスクリプトのサンプルにも、会話の大まかな展開は示されていても、具体的な質問や確認の進め方は担当者に委ねられる構成が見られました。

つまり、スクリプトがあるにもかかわらず、会話を進めるための重要な部分が、オペレーター個人の経験や能力に依存している可能性があるのです。

トークスクリプトを細かくすれば、解決するわけではない


それならば、質問や確認事項を細かく記載し、考えられる分岐をすべてフローチャートに盛り込めばよいのでしょうか。

必ずしもそうとは限りません。

会話の分岐を増やし、さまざまな状況に対応できるようにすると、フローチャートは複雑になります。

顧客の回答を確認しながら、該当する分岐を探し、次の質問や案内を確認する。その操作が複雑になれば、実際の応対中にスクリプトを追い切れなくなる可能性があります。

また、実際の応対に合わせてスクリプトを修正する際にも、注意が必要です。

ある分岐を変更した結果、別の経路で不整合が生じることも考えられます。変更箇所や影響範囲を把握できなければ、改善するつもりの修正が、かえって問題を生むことにもなりかねません。

ここには、二つの課題があります。

一つは、スクリプトが大まかすぎると、会話の進め方が担当者任せになること。

もう一つは、細かくしすぎると、応対中に使いにくくなり、修正や管理も難しくなることです。

必要なのは、単にフローチャートの項目を増やすことではありません。

必要な会話の進め方を設計しながら、実際の応対中にも無理なく利用できる仕組みを考えることが重要です。

応対品質のばらつきは、オペレーターの努力だけで解決できるのか?


応対品質にばらつきがあると、研修を増やしたり、ベテランが新人を指導したり、応対後にフィードバックを行ったりすることがあります。

これらは、オペレーターの知識や技能を高めるために重要な取り組みです。

しかし、実際の顧客応対では、事前にすべての状況を想定できるとは限りません。

顧客がどのような事情を抱えているのか、何を知りたいのか、何に不安を感じているのかによって、必要な質問や説明は変わります。

そのため、オペレーターには、マニュアルに記載された情報を覚えるだけでなく、顧客の回答を受けて、次に何を確認するかを考える力も求められます。

経験豊富な担当者が自然に行っている質問や確認の中には、本人が意識していない経験則が含まれていることもあります。

こうした知識を言葉にして共有し、誰もが実際の応対で活用できるようにすることは、簡単ではありません。

教育を強化しても、実際の会話を進めるための手順が担当者の経験に委ねられたままであれば、同じ課題が繰り返される可能性があります。

だからこそ、個人の努力を求めるだけではなく、組織として必要な会話を実行できるようにする視点が必要なのです。

必要なのは、会話運びと資料参照をナビゲートできる仕組み


応対品質をそろえるためには、オペレーターが次に何をすべきかを、自分の経験だけに頼らず確認できることが重要です。

そのために考えたいのが、会話の状況に応じて、質問・確認・分岐をたどれる仕組みです。

例えば、顧客から商品について質問された場合、必要なのは単に商品説明のセリフを表示することだけではありません。

顧客が何を知りたいのかを確認し、回答に応じて次の質問を選び、必要な情報がそろった段階で適切な案内につなげることが求められます。

また、会話を進めるために必要な情報が、社内のマニュアルや商品資料などに記載されている場合もあります。

このとき、資料が社内サーバーに保存されているだけでは、オペレーターが必要な情報をすぐに利用できるとは限りません。

どの資料を参照すればよいのか分からなければ、検索に時間がかかったり、必要な情報を見つけられなかったりすることがあります。

そこで重要になるのが、会話の文脈と参照資料を結び付けることです。

例えば、商品の仕様を確認する場面では、その仕様を確認できる資料を参照する。配送条件を確認する場面では、配送条件に関する資料を参照する。

このように、会話の状況に応じて必要な資料を特定できれば、オペレーターが自分で資料を探し回る負担を減らせます。

つまり、必要なのは、単にトークスクリプトを表示することでも、資料を検索できるようにすることでもありません。

  • 顧客の回答に応じて、次に必要な質問や確認をたどれること
  • 必要な情報を取得するための会話の進め方が分かること
  • 会話の文脈に応じて、参照すべき資料を特定できること


これらを結び付けることで、経験の浅いオペレーターでも、設計された会話の流れに沿って対応しやすくなります。

当社のAIコーチングエンジンは、こうした会話運びをナビゲートするための仕組みです。単にセリフを統一するのではなく、質問や確認、分岐を含めた会話の進め方を構造化し、実際の応対で利用できるようにすることを目指しています。

トークスクリプトを作って終わりにせず、実際の応対から改善する


トークスクリプトは、一度作成すれば完成するものではありません。

実際に顧客と会話する中で、想定していなかった質問が出たり、確認事項が不足していることが分かったり、案内の仕方を見直す必要が生じたりすることがあります。

そうした気づきを次のスクリプトに反映できれば、会話の進め方を継続的に改善できます。

一方、顧客からの問い合わせ内容や応対後の評価を集計するだけでは、どのような会話が行われ、なぜその結果になったのかを十分に把握できない場合があります。

改善につなげるには、実際の応対を確認し、どのような質問が行われ、顧客がどのように回答し、どこで問題が生じたのかをたどれることも重要です。

そのうえで、必要な質問を追加したり、分岐を見直したり、参照資料を更新したりする。

改善後のスクリプトを実際の応対で確かめ、再び見直す。

この循環を回すことで、スクリプトを作成するだけでなく、顧客との会話を通じて知識を蓄積し、改善し続けることにつながります。

また、顧客の声から得られた気づきは、コールセンター内の応対改善だけにとどまりません。商品やサービス、関連部門の業務を見直すための情報としても活用できます。

顧客との直接的な接点であるコールセンターの応対を改善することと、顧客の声を商品やサービス、会社全体の業務に反映すること。その両方が、会社として顧客の期待に応えるために重要です。

応対品質をそろえるために、まず見直したいこと


トークスクリプトがあるのに応対品質がそろわない場合、まずは自社のスクリプトが実際の応対でどのように使われているかを確認してみましょう。

例えば、次の点を見直すことが考えられます。

  • スクリプトには、会話の大まかな流れだけでなく、必要な質問や確認事項まで記載されているか
  • 顧客の回答によって対応が変わる場合、次に進むべき分岐が分かるようになっているか
  • 経験の浅いオペレーターでも、次に何を聞けばよいかを確認できるか
  • 応対中に必要な資料を、会話の文脈に応じて特定できるか
  • 実際の応対から問題を把握し、スクリプトや資料の改善につなげられるか


これらを確認することで、問題が教育にあるのか、スクリプトの設計にあるのか、応対中の利用方法にあるのか、あるいは改善の仕組みにあるのかを整理しやすくなります。

応対品質のばらつきを、オペレーター個人の能力だけの問題として捉える必要はありません。

大切なのは、顧客が何を求めているのかを理解し、必要な質問や確認を行い、適切な情報を使って応対できるようにすることです。

当社では、顧客応対の実態を踏まえ、トークスクリプトの設計や運用、改善の進め方についてご相談いただけます。

自社のスクリプトが実際の応対で十分に活用されていない、教育を続けても応対品質のばらつきが解消しないといった課題があれば、まずは現状を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

トークスクリプトは、作成すること自体が目的ではありません。

顧客の期待に応える会話を、担当者の経験だけに頼らず実行できるようにし、その会話から学んで改善し続けること。

その視点が、応対品質の標準化を考えるうえで重要になります。

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沖本能道
専門家

沖本能道(コールセンター運用改善コンサルタント)

株式会社アクティブ・コーチング・システム

クレーム(コールセンター)を基点にして、独自AIと業務改善の実績を融合したサービスを提供し、会社組織横断で課題解決を推進支援します。

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