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森田療法カウンセリングとは?日記を用いたやり方、厳しいと言われる理由について解説

カウンセリングでよく用いられる森田療法をご存じでしょうか?主に神経症に対する療法として、恐怖症、パニック障害、うつ病、不安障害に対して用いられます。あるがままに受け入れるという森田療法の特徴や効果、日記を用いた方法などについて解説します。

あるがままに受け入れる森田療法とは

森田療法とは日本の精神科医・森田正馬が創始した神経症に対する治療法です(森田正馬の「正馬」は「まさたけ」、また「しょうま」とも読みます)。森田正馬は幼少の頃から神経症的な症状があり、成長してからも心臓神経症やパニック発作に苦しみました。森田療法はそうした自身の体験から生み出されたものです。

森田療法は日本独自の療法といわれます。その理由は、神経症に対するアプローチが、西欧で生まれたアプローチと大きく違う点にあります。

例えば、認知行動療法では、神経症に見られる不安やおそれを認知、つまり、物事に対する見方・考え方の誤りと捉えます。そして、その誤りを修正するとともに、不安が起こる状況に段階的に直面させ(危険を伴うことない方法で)、慣れを起こし症状の改善をはかります。いわば、不安やおそれを取り除こうとするアプローチです。

それに対し森田療法は、不安やおそれを「あるがまま」に受け入れることを基本に据えます。不安やおそれの原因を探ったり、あるいは、偏った見方・考え方を論理の力で説得するということはしません。なぜなら、森田療法においては、神経症の根底にある不安やおそれは、人間がもつ普通の感情であり、神経症の症状としてあらわれるのは「不安やおそれを感じる度合いが高いため」と考えるからです。

森田療法における「死の恐怖」と「生の欲望」

また森田療法では、この不安やおそれの裏側に「よりよく生きたい」という願望がある、としています。

例えば神経症の症状の一つに「パニック発作」があります。不意に動悸や息切れが生じ、「このまま死んでしまうのではないか」という強い不安が伴う発作です。森田正馬は「このまま死んでしまうのではないか」という「死の恐怖」の裏側に「生きたい」という強い願い、つまり「生の欲望」があることを見つめます。

「生の欲望」は、「病気は怖い」に対する「健康でいたい」、「人に会うのが怖い」に対する「人とごく普通に会いたい」など、「より良く生きたい」というさまざまな願いを含みます。

森田療法は、この「死の恐怖」と「生の欲望」を表裏一体のものと捉えます。コインの表と裏のようなものと捉えるわけです。表と裏ですから、どちらか片方だけにするというわけにはいきません。「死の恐怖」と「生の欲望」を持ちながら生きるのが「人間のごく自然なありよう」というのが森田正馬の人間観です。

「弱気」と「強気」が共存する性格傾向

森田正馬は自身も神経症に苦しみましたが、ドクターとしてさまざまな症例に接し、神経症に共通する性格傾向を「弱気」と「強気」の共存と捉えました。内向的、内省的、小心、心配性、過敏という「弱気」と、完全主義、理想主義、負けず嫌いという「強気」の共存です。そして、弱気な自分を強気な自分が許せないため、心に葛藤が起こるとしました。

赤面恐怖症を例にすると、スピーチなど人から注目される場で顔が赤くなってしまう「弱気」な自分を、そうであってはならないとする完全主義で「強気」な自分が許せないため、心に葛藤が起こり、人前に出られないなど日常生活に支障をきたすようになる、としたのです。

そして、この弱気と強気の共存をベースに、神経症の患者さんの心に「悪循環」が生じていることを洞察し、その悪循環を「とらわれの機制」と名づけました。「機制」とは「しくみ」ということです。

二つの「とらわれ」と森田療法が目指すもの

森田療法では、「とらわれの機制」には「精神交互作用」と「思想の矛盾」の二つがあるとしています。

「精神交互作用」とは、自分の中に不安やおそれがあると、そこにばかり注意がいき、その不安やおそれを除こうとする。そして、そうすることでかえって不安やおそれを増してしまう悪循環をいいます。

「思想の矛盾」とは、上にあげた赤面恐怖症でいえば、人前で顔が赤くなる自分に対し、「人の目など気にせず堂々としている自分でなければならない」と考えて、自分を責める。つまり、理想の自分と現実の自分とのギャップから生じる悪循環です。森田療法は、この「とらわれの機制」から抜け出すことを目指します。

どのように抜け出すかといえば、まず、不安やおそれを持つ自分を「あるがまま」に受け入れることによってです。そして、自分の不安やおそれをコントロールしようとすること、森田療法ではそれを「はからい」といいますが、そうしたはからいをなくすことによってです。

その一方、「死の恐怖」と表裏の関係にある「生の欲望」、より良く生きたいという願いを具体的な行動を通してカタチにしていきます。森田療法は、ありのままの自分を受け入れ、自分らしい生き方を実現することを目指す療法なのです。

森田療法の治療対象

森田療法の治療対象は、強迫症(強迫性障害)、社交不安症(社交不安障害)、パニック症(パニック障害)
、広場恐怖症(広場恐怖)、全般性不安症(全般性不安障害)、身体症状症(身体表現性障害)、病気不安症(心気症)。また、慢性化したうつ病、不登校やひきこもり、がんの患者さんのメンタルヘルスなどにも応用されています。なお、必要であればお薬も使います。

森田療法の治療<入院治療と通院治療>

森田療法には入院治療と通院治療があります。

入院期間は人によって異なりますが1~3カ月程度が一応の目安になります。通院治療は、1~2週間に一度通院することになります。通院期間も人によって異なり、数カ月で終わる場合もあり1年程度かかるケースもあります。

入院治療は、終日個室で過ごし、あるがままの自分に向き合う「臥縟期(がじょき)」に始まります(原則7日間)。そして、一人で簡単な作業をする「軽作業期」、他の患者さんと一緒に庭の手入れや犬の散歩などを手分けして行う「作業期」、社会復帰への準備をする「社会復帰期」を経て退院になります。

ありのままの自分を受け入れる、はからいをなくす、具体的な行動・作業を通して自分らしい生き方を獲得するという流れです。軽作業期から日記をつけ始めます。

通院治療には、入院治療にある臥褥や作業はありませんが、あるがままの自分に向き合うことから始まる治療全体の流れは同じです。そして、入院治療でも重視されている日記がより大切になります。

治療に用いる日記と効果について

森田療法では日記を毎日つけます。日記を書くということは、その日の自分の行動や考え方を省みる機会になりますし、後で読み返すことで発見や気づきを得ることにもなります。なお、森田療法の日記は治療のための日記です。そのため普通の日記とは違う点があります。

まず、日記用のノートを用意します。そして、ノートの下のほう、あるいは右はしにスペースをとります。治療者がコメントを書くスペースをあけておくのです。通院治療の場合は通院の日に治療者に提出します。

日記の書き方にも注意点があります。一つは、その日の行動を中心に書くということです。例えば「今日は、あまり症状が出ずよかった」ではなく、「今日は近所のスーパーに買い物に行きました。症状が出ないか不安でしたが、あまり症状が出ずよかった」というように、行動を具体的に書きます。そうすると治療者は、例えば「不安はあるがままに、必要なことができたところがいいですね。この調子で目の前にある用事をやっていきましょう」といった励ましやアドバイスを記します。

また、自分の症状や不安についてはなるべく書かないようにします。というのは、症状や不安をこと細かに書くことで、症状や不安に注意が集中してしまうからです。そして「不安やおそれに注意がいく→不安やおそれを除こうとする→不安や恐れが増す」という悪循環を繰り返すことになりかねません。

森田療法の根本は、不安やおそれはそのままに、目の前にあることをすることで「とらわれの機制」を抜け出すことにあります。それは日記においても変わらないのです。

なお、通院治療ではノートではなくメールを使う例もあります。その日の出来事、行動をその日に送ることができるほか、コメントやアドバイスもタイムリーに受けることができます。

森田療法が厳しいと感じられる理由

森田療法は「厳しいのではないか」と思われることもあるようです。その理由はいくつか考えられますが、一つには、森田療法のキーワードに禅や仏教の修業を思わせる語句があるせいかもしれません。

例えば「外相整えば内相自ずから熟す」という言葉があります。「内相」とは心や気持ち、「外相」は表情や行動です。心や気持ちが落ち込んでつらいとき、その心や気持ちをコントロールするのは難しいですが、つらそうな顔をせず元気そうに行動することで、いつのまにか心や気持ちが落ち着くということがあります。つまり、「外相整えば内相自ずから熟す」とは、「まず行動や生活を整えていけば、気持ちや心の状態は後から自然に良い状態になる」ということを短く言い表したものです。禅や仏教にある厳しい修行が必要ということではありません。

森田正馬は「神経質に対する余の特殊療法」という論文のなかで、自分が創始した治療法はごく普通に人間が持っている自然治癒力を発揮させるもので、「心身の自然療法である」と述べています。森田療法は禅や仏教の厳しい修行とは別のものです。

ただ、もし「厳しい」と言えるとすれば、不安やおそれをあるがままに受け入れ、目の前にある必要なことをしていくのも、自然治癒力を発揮させるのも、神経症に悩む自分自身ということです。神経症の治療は他の病気のように、「薬を飲んでベッドに横になっていればいつかは治る」というものではないからです。

まとめ

森田療法は日本で生まれた精神療法です。神経症の根底にある不安やおそれを取りのぞこうとするのではなく、あるがままに受け入れ、よりよく生きたいという「生の欲望」を行動によってカタチにしていこうとするものです。

日本人の心性に合った療法としてカウンセリングにも取り入れられていますが、海外でも高い評価を得ています。