第5回 特許制度は創意工夫により人類の幸福を願う制度である
2025年9月19日に青森市で開催された「つながる特許庁 in 青森」のパネルディスカッションで「知的財産権ではなく、知的財産で良いんだ!!」という大変に心配な発言があった。自社の「らしさ」が知的財産になり得るが、その「らしさ」は自社の「強み(コアコンピタンス)」となる本物の「らしさ」か、勘違いの「らしさ」であるかを確認する作業が必要である。孫子が指摘するように、本物の「らしさ」を確認するためには、他社の知的財産権に無関心ではいられない(彼知己知百戦殆)。
パネラーは、知的財産基本法第2条の趣旨や、2025年ノーベル経済学賞を受賞したJ.モキイア(Mokyr)教授の経済成長の3要因を理解していないように筆者には思われた。
確かに知的財産権は、知的財産に含まれる下位概念ではあるが、知的財産権と知的財産では財務諸表に反映する効果や力が異なる。
A.G.ラフリー(Lafley)とR.チャラン(Charan)は、「イノベーションは業績(財務諸表)に反映されて、初めて完了する」と述べている。重要なことは、知的財産には「強い知的財産」と「弱い知的財産」があり、知的財産権にも「強い知的財産権」と「弱い知的財産権」があるという無形資産の本質である。無形資産の本質を理解し、企業の「らしさ」としての強い知的財産や強い知的財産権を用いる努力を伴わなければ知的財産経営は成立しないし、日本の経済を復活させることはできない。
経済学者L.オロウスキー(Wolowski)は、登録され公開された知的財産権と社会は契約していると説明している(§6参照。)。即ち、「我が社は知的財産権などとは関係がない」という言動には過失が推定される、という法律上の規定があることを理解する必要がある。先ずは、孫子の謀功篇の教えに従い、他社の「知的財産権」がどのようなものであるかを知ることが、知的財産経営における第一歩である。
§1、誤解されやすい経済産業省のWEBサイトの図:
経済産業省のWEBサイト「知的資産・知的財産経営とは」の「知的財産権、知的財産、知的資産、無形資産の分類イメージ図」には、図1のような4つの矩形を重ねた包摂関係を示すダイアグラムが提示されている(図1に附した青色とピンク色の吹き出しは、経済産業省のWEBサイトのダイヤグラムに対し筆者が、注釈として附したものである。)。
経済産業省のWEBサイトは、「『知的財産』とは、……(中略)……。これは、特許やノウハウなどの『知的財産』だけではなく、組織や人材、ネットワークなどの企業の強みとなる資産を総称する幅広い考え方であることに注意が必要です」と説明している。
しかし、図1に引用した4つの矩形からは、「知的財産」はブランド、営業秘密、ノウハウ等であり、一番小さな矩形で示された「知的財産権」は、ブランド、営業秘密、ノウハウ等以外の特許権、実用新案権、著作権等であるかのように解釈される畏れがあるので、経済産業省のWEBサイトは説明不足であるように感じる。
【図1】知的財産基本法第2条の趣旨が正確に反映されていない表現
2002年2月に小泉内閣が「知財立国」宣言をしたこと受け、2002年11月に知的財産基本法が制定された。
知的財産基本法第2条第1項は、「この法律で『知的財産』とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう」と規定している。
第1項に対し、知的財産基本法第2条第2項は、「この法律で『知的財産権』とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう」と規定している。
図1に引用した大きさの異なる4つの矩形を重ねたダイアグラムからは「知的財産権」とは特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権等であり、「知的財産」とは特許権、実用新案権、著作権等以外のブランド、営業秘密、ノウハウ等であるかのようなイメージを受ける恐れがあるが、このイメージは正しくない。
2002年から電通の顧問されているD.A.アーカー(Aaker)は、ブランドには5つの構成要素があるとし、その5番目は商標・意匠・特許等の法的部分であると説明している。D.A.アーカーの説明の法的部分ということを考慮すると、ブランドは、知的財産基本法第2条第2項の知的財産権に分類され、図1の1番小さい矩形に対応する。
一方、消費者庁が管轄している特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品及び機能性表示食品の表示は、5番目の構成要素の法的部分がなくても、D.A.アーカーが1~4番目の構成要素として指摘するブランド認知、ブランドロイヤルティ(愛着)、ブランドイメージ(知覚品質)やブランド連想(心理的・感情的)の力を与える。例えば、機能性表示食品の表示は、安全性と機能性に関する科学的根拠を消費者庁に届け、受理の際には消費者庁の確認を受ける手順を経て一定の透明性が確保されているので、消費者に安心と信頼感を与え、同一市場にある一般食品との差別化するブランドとなる。
機能性表示食品のパッケージには、「機能性表示食品」という表示と共に、消費者庁から公表時に付与される届出番号を記載しなければならないが、これらのパッケージの表示により、ブランドの1~4番目の構成要素が実現できる。
よって、ブランドは図1の一番小さい矩形に属するものと、2番目に小さい矩形に属するものがあることになる。2番目に小さい矩形に属するブランドには、法的な独占権を規定する明示の条文が存在しないが、知的財産基本法第2条第2項によって、「法律により保護される利益に係る権利」として、知的財産権として保護され得るので、図1の一番小さい矩形に属するブランドとなり得る。
一般には、法的な保護を一定期間受けた累積的な効果として、ブランド認知、ブランドロイヤルティ(愛着)、ブランドイメージ(知覚品質)やブランド連想(心理的・感情的)が商品やサービスに対して構築されるはずである。
図1の2番目に小さい矩形に示された営業秘密とノウハウも、知的財産基本法第2条第2項で規定された知的財産権として保護される利益を有する権利であるので、図1の一番小さい矩形に属するものとなり得る。
§2 強い知的財産の範囲は、知的財産権の領域に重なる:
図2に示すように、知的財産基本法第2条第2項の「又は」以降に規定している「法律上保護される利益に係る権利」には、図1に示した知的財産としての「ブランド、営業秘密、ノウハウ等」が含まれ得るので、図1の表現には注意が必要になるのである。
【図2】一般に権利付与方式は強い権利になるが、行為規制方式は弱い
冒頭で述べたとおり、自社の「らしさ」を知的財産経営に用いるためには、その「らしさ」は、自社のコアコンピタンス(core competence)となる本物の「らしさ」である必要がある。「コアコンピタンス」とは、企業が持つ他社には真似できない競争優位の源泉となる、知的財産経営の核となる能力である。
「企業のコアコンピタンス」は、ロンドン・ビジネス・スクールのG.ハメル(Hamel)教授とミシガン大学のC.K. プラハラード(Prahalad)教授が、1990年のハーバード・ビジネス・レビュー誌の論文「The Core Competence of the Corporation」で初めて提唱した概念である。
図2から分かるように、行為規制方式の知的財産権である営業秘密やノウハウ等は、知的財産基本法第2条第2項が規定する不正競争防止法等の法律により保護される利益に係る権利である。知的財産基本法第2条第2項により保護されて、始めてコアコンピタンスとなる本物の「らしさ」になり、その本物の「らしさ」が自社が展開する製品やサービスの競争力を支えるスキルや技術等になるはずである。
プロクター・アンド・ギャンブル)社の元会長A.G.ラフリー(Lafley)とビジネスコンサルタントのR.チャラン(Charan)は、
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
発明とは、新しいアイディアが製品やシステムなどの形になったものである。一方、イノベーションとは、新しいアイディアが収益を生み出す形に変わることを言う。……(中略)……特許数と業績の間には何の相関関係もない。客が製品を買い、お金を払い、くり返し買ってくれない限り、それはイノベーションではない。……(中略)……業績に反映されてはじめて、イノベーションは完了したと言えるのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
と述べている(A.G.ラフリー、ラム・チャラン著、齊藤聖美訳、『ゲームの変革者
--イノベーションで収益を伸ばす』、2009年、日本経済新聞社)。
我が国には、48年間ではあるが、知的財産による収入を収益のすべてとし、職員の給与を含むすべての支出を知的財産収入により賄っていた財団法人が存在していた:
https://suiyosha.hondana.jp/book/b651302.html
及び
https://www.amazon.co.jp/dp/486728114X/
製品を販売せず、知的財産による収入のみで経営することは極めてむずかしく、この財団法人は2008年に解散している。
キヤノン株式会社の特許法務本部長をされていた丸島儀一先生は、「いかにその周辺までをも保護した“いい権利”にするかが特許の人間の仕事。最初のアイディアの権利を相手はどうかいくぐるか、だとすればこういう変形があり得るのではないか」と考え、輪を広げて権利化する。そうすれば最初に生まれた権利よりずっと広く使えるものとなります。ここまでしないと本当にいい権利とは言えない。」と言われている。
丸島先生は、業界内部の競争を考えると、輪を広げた権利化ではないと、本当に強い知的財産権とは言えないと説示し、知的財産権を業績に反映させる道を示されている。A.G.ラフリーらは「特許数と業績の間には何の相関関係もない」と言っているが、キヤノンは1992年に米国での特許取得件数のランキングで第1位を獲得し、2021年まで29年間ランキングで3位以下になったことはない。
このコラムの§5で、なぜ強い知的財産権が必要か、そして強い知的財産権の例として、強い特許とは何かを説明する。しかし、その前に、キヤノンの特許法務本部(現知的財産法務本部)は、キヤノンの業績を向上させるために知的財産権を取得する戦略の下、米国での特許取得件数が重要という方針を掲げていたことを理解して欲しい。
1980年代の日本経済の好調の時期には、日本企業が米国での特許取得件数ランキングのトップ10に常に5~6社が入っていた。しかし、1990年代以降、次第にランキングのトップ10から脱落を始め、特許取得件数ランキングは、日本経済の失速のバロメータとなっている。残念なことに、2017年にはキャノン以外の日本企業がトップ10から脱落する状況に陥っているが、2024年までのデータで、キヤノンは41年間連続してランキングの10位以内を維持している。
業界内でのライバル会社との競争意識や、この競争に伴う攻防の戦略を伴うこともなく、特許数を増やすのであれば、特許数と業績の間には何の相関関係もない。しかし、§5で説明する会社の業績を向上させるパテント・ポート・フォリオ戦略では、特許数と業績の間に相関関係が発生するのである。会社の業績への貢献が優れているということで、丸島先生は特許法務本部長兼務の取締役、常務取締役、専務取締役、顧問となっている。
知的財産基本法第2条第2項は、知的財産権には図2に示すような権利付与方式の知的財産権と行為規制方式の知的財産権があることを示している。キヤノンの例から分かるように、自社の業績を向上させる知的財産経営を実施するためには、権利付与方式の知的財産権をコアコンピタンスとして経営することが必要である。キャノンは米国のゼロックスやIBMと特許で争っていた。
権利付与方式の知的財産権に対し、行為規制方式の知的財産権は、裁判所で不正競争防止法等による争いになったとき、証拠能力が弱く、模倣された事実の主張が困難になりやすい傾向にある。このことは、行為規制方式の知的財産権は、特許権等の権利付与方式の知的財産権よりも、模倣の防止が困難になる傾向があることを意味している。即ち、証拠文書等の準備が不十分な状態で権利の争いになった場合、行為規制方式の知的財産権は「コアコンピタンスにならない弱い権利」にならざるを得ない可能性を有していることに留意が必要である。
よって、冒頭に記載した発言が文言通り受け止められるのであれば、企業のコアコンピタンスと言う意味で「知的財産で良いので文書に記録として残さない」という単純な理解は極めて危険である。
§3 モキイア教授は知的財産権の保護を経済成長の要因とした:
2025年ノーベル経済学賞には、経済学史のJ.モキイア(Mokyr)教授、数量経済学者のP.アギヨン(Aghion)教授、金融経済学者のP.ハウイット(Howitt)教授が選出された。今回の授賞理由は、イノベーションが経済成長を生み出す役割に関する研究での功績である。
ノーベル経済学賞を受賞したモキイア教授は、人類の歴史における経済成長には、
(a) 知識と情報の普及によるイノベーション
(b) 国同士の競争による創造的破壊
(c) 知的財産権の保護制度の確立
の三要因があるとしている。
(a)のイノベーションと(b)の創造的破壊は、図1の2番目に小さい矩形で示された知的財産として機能しうるであろう。しかし、(a)~(c)の三要因は三位一体として機能して、始めて人類の歴史における経済成長に寄与しうるのである。即ち、(a)~(c)が三位一体として経済成長に寄与するのであれば、ブール代数における論理積(AND)のベン図が示すように、図1の最も小さい矩形は、2番目に小さい矩形に重なるはずである。
(a)~(c)の三位一体のベン図でなくても、経済産業省のWEBサイトに示された濃い青色で示された2番目に小さい矩形の中には、図2と同様な「権利付与方式の知的財産権」と「行為規制方式の知的財産権」の二つの一番小さな矩形を示すべきであろう。
知的財産基本法の2年後となる、2004年に民法が改正され、民法第709条には、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと、「法律上保護される利益」が明記された。特許法等の権利付与方式の知的財産権は、民法第709条の特則として位置ずけられている。
いずれにせよ、行為規制方式の知的財産権は積極的な管理意識を伴わない場合には、権利範囲が不明確になりやすい。このため行為規制方式の知的財産権は、常に不正競争防止法等により保護されるとは限らない危険性がある。経済産業省のWEBサイトに着目すれば、最も小さい矩形の領域から、2番目に小さい矩形が、保護されない弱い領域として、はみ出す場合がある。
不正競争防止法第2条第6項は、「この法律において『営業秘密』とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう」と、規定している。
不正競争防止法第2条第6項の営業秘密(トレード・シークレット)には、
(a)秘密管理性(秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動)、
(b)有用性(有用な技術上又は営業上の情報)
(c)非公知性(公然と知られていないもの)
の3要件が必要である。
不正競争防止法で保護されるためには、営業秘密やノウハウ等は、不正競争防止法第2条第6項の規定を意識した知的財産権としての管理が必要であり、知的財産権ではなく、知的財産を指向するという安易な理解は危険である。
不正競争防止法第2条第6項が規定する秘密管理性を考慮すれば、日付の証明がある営業秘密文書やノウハウ文書等の客観的な証拠書類を残す管理や努力が、行為規制方式の知的財産権には求められる。
§4 すべてを権利付与方式の知的財産権にすればよいのではない
東京大学政策ビジョン研究センターの小川紘一先生の定義に従えば、「オープン」とは、製造業のグローバライゼーションを積極的に活用しながら、世界中の知識・知恵を集め、そして自社/自国の技術と製品を戦略的に普及させる仕組みづくりを意味し、「クローズ」とは、価値の源泉として守るべき技術領域を事前に決め、これを自社の外、或いは自国の外へ伝搬させない仕組みづくりを意味するということである(小川紘一著、『オープン&クローズ戦略』、翔泳社参照)。
図2に示す権利付与方式の内の登録方式(方式主義)の知的財産権は、公開される。知的財産権の管理として求められるのは、どの知的財産権を行為規制方式の知的財産権として秘匿し、どの知的財産権を権利付与方式の知的財産権として自社の外、或いは自国の外へ伝搬させるかという弁別である。
例えば、ノウハウには、(a)不正競争防止法で規定された営業秘密(狭義のノウハウ)、(b)限定的に公開可能な形式知及び(c)公開可能な形式知がある。限定的に公開可能な形式知には、全体としては「ブラックボックス化された技術」のうちの「コア」の部分を除いた「一部のみが公開や譲渡された情報」が該当する。公開可能な形式知の代表例は、特許権、実用新案権、意匠権等の権利付与方式の知的財産権である。
例えば、特許法は審査主義による登録方式を採用しているので、特許出願された情報のうちには、知的財産権として権利化できない結果、他社が利用可能になる情報もあることに留意が必要である。知的財産権にできなかった知的財産の例である。知的財産権にできなかった知的財産は他社が自由に実施できる。意匠法も審査主義による登録方式を採用しているが、意匠登録出願が権利化されないときは、その情報は公開されない。
2007年4月に特許庁が発表した「戦略的な知的財産管理に向けて(資料3-3)」のp.67には「ノウハウ秘匿を選択する観点」として以下の7つを挙げているので、行為規制方式にするのか、権利付与方式にするのかを、慎重に検討し、自社のコアコンピタンスを構築する必要がある。
① 発明の実施事業(製品の製造や販売、自社内実施など)から発明の内容が漏れない場合
② 発明の内容からして、競合他社が独自に開発することが著しく困難と判断される場合
③ 特許権を取得したとしても、その発明を他社が侵害していることの発見が困難である場合
④ 発明に関する製品市場が、他社が全く興味を示さないようなニッチ市場である場合
⑤ 犯罪防止技術などの発明であるために、発明内容を開示してしまうことによって発明の価値を著しく損なう場合
⑥ 共同開発他社や製品納入先との関係で秘密保持契約の対象となっている場合
⑦ 特許出願しても進歩性などの特許要件で拒絶されてしまう可能性がある場合
§5 特許権には強い権利と弱い権利がある:
ハーバード大学経営大学院のM.E.ポーター(Porter)教授は、(イ)既存企業間の敵対関係、(ロ)新規参入の脅威、(ハ)代替品の脅威、(ニ)買い手の交渉力、(ホ)売り手の交渉力の5つの要因(ファイブフォース)で業界の競争構造を分析する手法を提案している。この内、知財経営で留意すべき要因として、既存企業間の敵対関係と新規参入の脅威がある。
キヤノンの元特許本部長丸島先生の“いい権利”とは、業績に反映されるコアコンピタンスとなりうる強い知的財産権ということになろう。業績に反映される強い知的財産権とするためには、既存企業間の敵対関係と後発会社の新規参入を防ぐ障壁を構築する必要がある。
ライバル会社が存在する業界においては、業績に反映される強い知的財産権とするためには、双方の読み合いの攻防が必要になる。ライバル会社が、自社の先願基本発明を見て、そこから改良発明を考えるのは極自然であるからである。又、業績に反映される強い知的財産権とするためには、後発会社の参入障壁を構築する必要がある。
例えば、甲社の先願特許発明(基本発明)Pに対し、特許発明Pに気がついたライバル会社乙社が後願の改良発明をし、甲社の特許発明P=A+Bに、上位概念・下位概念の関係にない新たな発明特定事項Cを付加してQ=A+B+Cの後願発明をして特許として登録されたとする。この場合、先願優位の原則から乙社の後願発明Qは甲社の基本発明Pを利用することになるから、乙社は甲社から実施許諾を得る必要がある。
一方、後願乙者の特許発明Qを先願甲社が自由に実施できるかに付いては争いがある。専用権説は、先願甲社は後願乙者の特許発明Qを自由に実施できるとするが、排他権説では、先願甲社は後願乙者の特許発明Qを自由に実施できない。
専用権説の場合においても、図3に示すような穴空き説によれば、先願甲社は後願乙者の特許発明Qを自由に実施できない。穴空き説は、先願特許発明Pの特許権には元々穴が空いているのだから、先願特許発明Pと後願特許発明Qは別発明であり、利用関係がないという主張であるので、乙社は甲社から実施許諾を得なくても、後願特許発明Qを実施可能となる。
【図3】1件の特許では強い権利にはできない
排他権説の場合において、甲社が乙社の発明特定事項Cを使用しないように工夫(迂回)して発明特定事項C*とすることができれば、甲社は実施可能である。しかしながら、乙社の発明特定事項Cが非常に経済的技術的に優れた技術的構成であって、どうしても発明特定事項Cを避けて使用することができない事情があれば、排他権説の場合は、甲社も乙社も実施することができない事態が生じる。
特許権は自社の独占排他権の中に他社の独占排他権が発生するという本質的な弱みを有している。自社の独占排他権の中に他社の独占排他権が発生する場合には、甲社は先発メーカーであっても、有利な立場が崩されてしまうことになる。
この特許権の本質的な弱みを考慮すると、1件の特許権のみで知財経営をすることは困難であるという結論に到達するはずである。上述したとおり、キヤノンの丸島先生は、自社の最初のアイディアの権利をライバル会社がどうかいくぐるように迂回するか、ライバル会社が自社のアイディアを迂回したとすれば、迂回した特許に対し、自社が更に変形をしてどのように対抗するかと考え、最初のアイディアを時系列に沿って広げて、ダイナミック(動的)な権利化するという戦略を考えていた。
図3から理解できるであろうが、競争の社会において、ライバル会社は自社の特許を模倣するような愚かな手段を選ばない。そうではなく、自社の特許の侵害にならないように、自社の特許の技術内容を迂回して、ライバル会社は自社の特許と製品(商品やサービス)を攻めてくるのである。丸島先生の知財戦略は、多数の特許の束によりパテント・ポート・フォリオをダイナミックに構築する努力がなければ、自社の特許と製品を、ライバル会社の攻撃から護ることができない、ということを示している。
「知的財産経営」においては、民法第709条の特則の土俵から離れて、如何にしたら不法行為を回避してライバル会社に勝てるかという観点における、緻密かつ複雑な技術開発の争いにも十分な留意が必要である。2025年のノーベル経済学賞のモキイア教授の指摘する「国同士の競争による創造的破壊」も、こうして生まれるのである。
少し前になるが、中国の国有企業が、日本の東北新幹線「はやて」の技術を基にした高速鉄道「和諧号CRH380A型」の特許 を、2010年に米国、欧州、インド、ロシア、ブラジルの5カ国に特許出願(PCT/CN2010/074455及びPCT/CN2010/074448)したというニュースが流れたが、これもライバル会社の攻撃に対する戦略に瑕疵があった結果である。川崎重工は海外に新幹線に関する特許を取得していないとのことであり、特許網(国際的なパテント・ポート・フォリオ)の穴を狙われたのである。
2011年6月以降になると、毎年のように日本を含む複数の指定国を有する新幹線関連のPCT出願が続々と中国の国有企業からされており、川崎重工等の日本の企業の新幹線関連の技術に関する特許網の穴が突かれているということになる。
§6 他社の登録された知的財産権を監視しないことは過失:
「つながる特許庁 in 青森」のパネルディスカッションで「うちは知的財産権なんか関係がない」と言っている会社があると聞いて、大変残念に思う。実は、事業をしている限り、他社の特許権、意匠権や商標権等の登録された知的財産権を監視しないことは過失になる。民法709条に規定された「過失」とは、「必要とされる注意を怠った」ということであるが、特許法第103条には、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、
その侵害の行為について過失があつたものと推定する。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
と規定されている。過失の推定規定である特許法103条は、1959(昭和34)年に民法709条の特則として創出された。
昭和 30年の特許法改正草案において、「他人の特許発明の属する分野の営業を営む者がその営業を行うに当たりその特許権を侵害したときは…原状を回復する責に任ずる。但しその者がその他人の特許発明を実施せざるよう相当な注意を払ったときはこの限りではない」とあり、その注意義務は特許公報調査とされている(露木美幸著、『特許法 103 条と責任法上の注意義務-産業財産権法の過失の推定規定の再検討-』、知財研紀要、 21: 21・1-20・8、 (2012)、p.3-5等参照。)。
特許法第103条は、他社の特許権の特許公報の調査をしない事業者は、必要とされる注意を怠っている事業者であると推定される、規定しているのである。よって、事業者は、インターネットのJ-Platpatで競合他社がどのような特許権を取得しているか、常に検索し、他社の特許公報の調査をする必要があり、他社の特許権に無関心ではいられない。
ポーランド生まれのフランスの経済学者L.オロウスキー(Wolowski)は、1869年に、「…特許は社会と発明者との間の純然たる契約なのである。もし社会が発明者に一定期間の保証を付与するならば、彼は自ら護ることを得たはずの秘密を公開する[クイド・プロ・クオquid pro quo(報償 / 応報的交換)]。これがまさに衡平の原則である」と説明している(Annales de la Societe d'Economie Politique, VIII i869-70, p.125,(1869))。社会と発明者との間の契約である以上、他社の特許権に無関心であってはならないのである。
意匠法第40条と商標法第39条にも同様な過失の推定規定があるので、他社の意匠権や商標権についても、無関心でいることは過失と推定されると、法律で決められているのである。図2に示す行為規制方式の内で、特許権等の登録方式(方式主義)の知的財産権が公開されるのは、他社が知的財産権の内容を調査できるようにしているのである。実用新案法は無審査で登録されるので過失の推定規定はない。
常にJ-Platpatで他社の特許公報を調査する必要があるというのであるから、仮に自社が特許出願しないとしても、「うちは知的財産権なんか関係がない」と言っていてはいけないのである。しかし、日常的にJ-Platpatを検索して特許公報の明細書を読んでいると、「なんだこんなものが特許になるのか!!」と気がつくはずである。
自社の「らしさ」が知的財産であることに気が付けば、知的財産権は中小企業の足下にあることが理解できるはずである。更に、丸島先生のパテント・ポート・フォリオ戦略の意味も分かり、パテント・ポート・フォリオによりコアコンピタンスを構築する知的財産経営の意味も理解できるはずである。
中国の春秋時代(紀元前770~前430年)末期に孫武が著した兵法書(孫子)の謀攻篇は、「彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。」と教えている。ナポレオンも孫子を愛読したと言われいる。
よって、他社の知的財産権を監視し、調査する作業によって、コアコンピタンスとなりうる「らしさ」を見いだすことが知的財産経営の第一歩である。
§7 「デザイン経営」とは課題を見いだすこと:
冒頭で述べた「つながる特許庁 in 青森」のテーマは、『デザインの力で青森を彩る!~価値と魅力の探求へ~』であった。「デザイン」の語源はラテン語の「designare(デジナーレ)」であり、15~16世紀のルネサンスの頃に、「デザインする」という動詞で使われていたようである。
ラテン語の「designare」=「de」+「Sign=印、記号、計画、設計、考案、選択、指定、任命」と分解でき、英語の(designate)に対応する。ラテン語の接頭辞として「de」には分離・除去・降下・否定・反対等の意味がある。
ラテン語の「de」を「下に」という味合いで考えると、「designare」全体では「下に印をつける」「計画を記号で表す」「設計する」という意味になる。よって、「デザインする」は、デッサンする(dessin)と同じように、「ある目的を達成するために構想を練り、計画し、それを具体的な形(記号や図面など)で示すこと」となる。
一方、「de=否定」の意味で捉えると、ラテン語の「designare」全体では、「既存のモノを破壊すること」、即ち、J.A.シュンペーター(Schumpeter)やモキイア教授の「創造的破壊」の意味合いと重なる。
ウェブスター第3版(Webster’s Third New International Dictionary)は、designをto conceive and plan out in the mind 心に想をはらみ、計画すること); to devise or propose for specific function (特定の機能を満たすために工夫または提案をすること); to create, plan or calculate for serving a predetermined end(特定の計画に従って、創造したり計画したり計算したりすること)等のように説明している。
「つながる特許庁 in 青森」のセッション①の対談「デザインの力~デザインで企業と地域を活性化~」の中で、特許庁長官からは、「デザイン思考の考え方で対話型の経営をするのが、デザイン経営である」のような趣旨の説明があった。特許庁長官が言及したデザイン思考(Design Thinking)は、スタンフォード大学のD.ケリー(Kelley)教授が1990年代に提唱した考え方が有名である。
ケリー教授のデザイン思考は、「(a)観察・共感」→「(b)課題設定」→「(c)アイデア出し(アイディエーション)」→「(d)プロトタイプ」→「(e)テスト」の5つの時系列の手順で、“人”に焦点を徹底して当て、人が何を求めているかを考える方法である。
先ず、ケリー教授のデザイン思考の1番目の「(a)観察・共感」の手順は、対象者(多くは顧客)を観察する実際に目で見たり(オブザベーション)、自分自身もコミュニティに属して一緒に生活をする(エスノグラフィ)プロセスである。
次に、ケリー教授のデザイン思考の2番目の「(b)課題設定」の手順は、オブザベーションやエスノグラフィで得られた共感をもとに、人が何を困っているのか、人がどんなことが不便なのか等の人の課題を見いだすプロセスである。
3番目の「(c)アイデア出し(アイディエーション)」の手順は、2番目の手順で見いだされた課題に対して、「ブレインストーミング」「親和図法(KJ法)」「ワールドカフェ」などの方法によって、どんな解決手段があるかのアイデア出しを行って、課題に対する答えを導こうとするプロセスである。
アイデア出しに用いる「ブレインストーミング」とは、複数の人が集まって、あるテーマに関するアイデアを自由に、制限なく出し合い、互いに刺激し合う集団発想法である。「親和図法」は、新QC7つ道具の一つとなるグループ思考の方法である。東京工業大学で文化人類学を研究された川喜田二郎教授が考案した手法の一部であり、あいまいな問題や混沌とした状況に対して、集められた多数の言葉のデータを「親和性」に基づいて分類し、整理して「表札」を付けるグループ思考の方法である。
アイデア出しに用いる「KJ法」は、川喜田二郎(KAWAKITA Jiro)先生の名前のイニシャルに由来し、「親和図法」とは、ほぼ同じ手法ではあるが、「親和図法」の「表札」を付けた分類の構造化のプロセスを更に行う点で異なる。例えば、データや分類間の因果関係を矢印で結ぶ、似た分類を更に大きな分類に纏める。データ間に相反関係があれば、相反関係も記し、統合化を行い、新しいアイデアを創出するグループ思考の方法である。
3番目の「アイデア出し」のプロセスで用いる「ワールドカフェ(The World Café)」は、カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、少人数で対話を繰り返しながら多様な意見や知識を共有するグループ思考の方法である。「アイデア出し」の参加者はテーブルを移動しながらメンバーを入れ替えて話し合い、結論を出すことよりも、参加者全員が自由に意見を交換し、相互理解を深めたり、新たな気づきや新しいアイデアを創出することを目的とする。
ケリー教授のデザイン思考の4番目の「(d)プロトタイプ」の手順は、3番目の手順で出たアイデアをもとに、実際に答えとしてのプロトタイプを作るプロセスである。
5番目の「(e)テスト」の手順は、4番目の手順でえられたプロトタイプを元にテストを行い、そこで得た課題を元に、また3番目の「アイデア出し」以降の手順を繰り返し、課題に対する答えを見いだすプロセスである。
ケリー教授のデザイン思考では、3~5番目の答え(Problem Solving)を出す手順よりも、2番目の「(b)課題設定」の手順における問題を定義すること(Problem Finding)の方が大切としている。
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科の原研哉教授も、「アートは、個人が社会に向き合う個人的な意思表明であって、……(中略)……。一方、デザインは基本的には個人の自己表出が動機ではなく、その発端は社会の側にある。社会の多くの人々と共有できる問題を発見し、それを解決していくプロセスにデザインの本質がある」と述べている(原研哉著、『デザインのデザイン』、岩波書店、(2003年)、pp.28-29)。「社会の多くの人々と共有できる問題を発見」とは、ケリー教授の「(a)観察・共感」→「(b)課題設定」のプロセスに対応する。
デザイン思考の考え方は、§6で説明したJ-Platpatを検索して、公開された他社の知的財産権の内容から技術的課題を見いだすことが、自社のデザイン経営の第一歩であることを示唆している、ということに気がついて頂けたら幸いである。
§8 デザイン思考は日本で生まれたグループ思考の方式
デザイン思考を提唱したケリー教授は、スタンフォード大学の中に、Hasso Plattner Institute of Designいう教育機関を2005年に設立した。このスタンフォード大学の教育機関には「d-school」という通称が用いられている。「design」の頭文字である「d」をシンプルに表現した通称のようである。
d-schoolは、革新的なアイデアを生み出し、アイデアを形にするための創造的なプロセスを、ワークショップやプログラムを通じて教える研修を実施し、シリコンバレーのイノベーションを支える重要な役割を担っている。
2014年の日本創造学会研究大会基調講演で、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科の前野隆司教授(現武蔵野大学ウェルビーイング学部長)は、スタンフォード大学d-schoolのスタッフから、「日本人はデザイン思考を学ぶ必要はない、デザイン思考はアメリカ人が川喜田先生から学んだグループ思考の方式だから」と言われたという。
川喜田先生は、KJ法の原理を1964年に提唱されている。1967年に出版された著書『発想法-創造性開発のために』(中央公論社)で、広く知られるようになった経緯がある。KJ法は、§7では3番目の「(c)アイデア出し(アイディエーション)」の手順の手法として説明したが、グループで集めたアイデアや意見を視覚的に整理するグループ思考の手法であり、グループ思考はデザイン思考の基本となる考え方である。
デザイン研究において「デザイン思考」という言葉が最初に用いられたのは、1987年のハーバード大学のP.G.ロウ(Rowe)教授の『デザインの思考過程(Design Thinking)』と思われる。その前の1973年に、スタンフォード大学R.マッキム(McKim)教授が、『視覚的思考の経験(Experiences in Visual Thinking)』でデザイン工学分野における「デザイン思考」の概念を著しているが、川喜田先生のKJ法の提案の方が早い。
スタンフォード大学では、その後1980年代から1990年代にかけてR.ファステ(Faste)教授が、マッキム教授の業績を拡張している。そして、ファステ教授のスタンフォード大學の同僚ケリー教授が、デザイン思考のビジネスへ応用の研究を1990年代に開始し、その研究が2005年のd-schoolに発展している。
日本創造学会研究大会基調講演での話は、スタンフォード大学d-schoolのスタッフが、KJ法が単なる整理分類ではないことを、見事に見抜いていたということを示している。
§6でJ-Platpatを検索することを説明したが、図2に示した特許権、意匠権、商標権等の権利付与方式の知的財産権は、知らなかったでは済まされない絶対的独占権である。J-Platpatは、自社のらしさが絶対的独占権であるか否かが確認し、自社のコアコンピタンスが抽出できる便利なツールである。
なお、図2に示した知的財産基本法第2条第2項で規定された行為規定方式の権利は、他人が独自に創作したものには及ばない、相対的な支配権なので、「相対的独占権」と言われる。相対的独占権は、ものまねしを、してはいけない権利であるが、ものまねをしたか、しないかの証拠となる文書を残す必要がある。証拠能力を考えれば、権利化しないとしても、知的財産を文書化して自社のコアコンピタンスとすることが必要であるということに十分な留意が必要になる。
例えば、上述したグループ思考に関連するミーティングの経過を記録せず、日付入りの文書として残す習慣を有しないことは、重大な過ちになる恐れがある。権利付与方式の権利として申請に足る具体的成果が得られる以前のレベルや段階であっても、日付入り文書に記録として残す習慣を確立することが知的財産経営になる。将来、知的財産権の所有者や発明/考案/創作日などが問題とされる事態が発生した場合、こうした記録文書が有用であり、企業活動記録の一部としてグループ思考のプロセスを残しておくことは、健全な知的財産経営の基本である。
「つながる特許庁 in 青森」で宮下知事は、青森県の特徴を自慢され、他県が特徴を勘違いしている場合があることを説明された。デザイン思考により自社の「らしさ」を抽出したら、その抽出された「らしさ」が、果たしてコアコンピタンスとなり得る本物の「らしさ」であるのか、勘違いの「らしさ」であるのかを、J-Platpatというツールを用いて確認する必要がある。特に研究・開発の担当者は、自社の研究・開発プロジェクトの開始前に、他社の知的財産権が存在するか否かを確認するIPマップやIPランドスケープを使用する必要がある。
「IPマップ」とは、競合企業との攻守に関わる最適な知的財産戦略を立案するために、膨大なIntellectual Property(知的財産)の情報をJ-Platpatを利用して可視化し、社内で可視化した結果を共有し、自社のコアコンピタンスを抽出するものである。又、IPランドスケープは、Intellectual Property(知的財産)とLandscape(景観や風景)を組み合わせた造語で、将来を見据えた経営戦略・事業戦略を立案するために、J-Platpat等から得られる知的財産情報を活用し、経営者や事業責任者に分析結果を提案し、自社のコアコンピタンスを抽出するものである。
パテントマップやIPランドスケープを使用しないで、研究・開発プロジェクトの終了後に、他社の絶対的独占権の存在し、勘違いの「らしさ」であったことに気がつくのであれば、その研究・開発プロジェクトに費やした時間と労力は無駄になるということである。
J-Platpatを用いた検索により自社のコアコンピタンスを抽出する業務を、日常的な習慣にして欲しい。公開された他社の知的財産権を日常的に検索し、他社の知的財産権の内容から、デザイン思考の手法を用いて、自社の技術分野における技術的課題を見いだし、更にその技術的課題を社内で議論することが、デザイン経営になることを、是非認識して頂きたい。
辨理士・技術コンサルタント(工学博士 IEEE Life member)鈴木壯兵衞でした。
そうべえ国際特許事務所は、知的財産経営やデザイン経営のご相談にも積極的にお手伝いします。
http://www.soh-vehe.jp



