第78回 青森県の発明者の特許発明が、第37回世界天才会議(World Genius Convention & Education Expo)で特別賞受賞
§1 八戸市と弘前市では被害の程度が異なる:
2011年の3月11日にマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生した。宮城県では震度7という最大震度が栗原市で記録されている。東北地方太平洋沖地震による青森県内の震度は、八戸市、東北町、おいらせ町、東通村、五戸町、階上町で震度5強という状況であった。
更に東北地方太平洋沖地震の震度として、十和田市、野辺地市、七戸町、六戸町、三戸町、南部町で震度5弱、三沢市、青森市、弘前市、黒石市、五所川原市等で震度4が記録されている。この結果、八戸市で254棟、おいらせ町で23棟、階上町で12棟、三沢市で19棟の住家の全壊が記録されている。
又、気象庁の現地調査によれば、八戸市で6.2mの津波の痕跡が確認された。この津波により八戸市で1名の死亡、三沢市で2名の死亡、及び八戸市で1名の行方不明者が報告されている。津波による大被害が発生しているので、東北地方太平洋沖地震は「東日本大震災」と呼ばれる。
図1は、東日本大震災の発生する以前の5年間において、青森県のどの地域からどのくらいの特許出願の件数があったのかを調べた結果である。即ち2011年以前の特許出願に対応するであろう、2007年~2011年の5年間に公開された特許公開公報のデータから、青森県内を地域別に見たときの特許の出願件数の分布を示している。
例えば2011年の公開公報の件数のデータは、その1年6月前の時期である2009年7月~2010年6月に出願された特許の件数に対応する。図1から、大震災以前の特許の出願件数が第4位と読める八戸市が震度5強の被害であったことが分かる。又、大震災以前に特許の出願件数が第3位であった十和田市が震度5弱の被害であったことが分かる。
【図1】
図1に示すように、東日本大震災以前の特許の出願件数が第4位の八戸市と第3位の十和田市が青森県内では、東日本大震災で震度が大きく、八戸市では津波による被害も受けている。
図2は、震度5強の八戸市、震度5弱の十和田市、震度4の六カ所村の主要な法人A,B,C,Dの特許公開公報から読める出願件数の変化を示している。「主要な法人」とは、特許出願の件数の多い順に並べたときの青森県内のランキングで上位に位置する法人という意味である。
【図2】
特許出願後1年6月で特許出願の内容が特許公開公報によって公開されることを考慮すると、2011年3月の東日本大震災の影響は2012年9月以降、特に2013年以降の特許公開公報の件数の減少として現れるはずである。図2をみると、八戸市、十和田市、六カ所村に関しては、東日本大震災が特許出願の件数に影響を与えているように思われる。
図3は、震度4の青森市、弘前市、黒石市の主要な法人P,Q,T及び個人Sの特許公開公報から読める出願件数の変化を示している。2011年から1年6月を経過した時期に対応する2013年の特許出願公開の件数に小さなディップとなる減少が読める。しかし、図2に比すれば、青森市、弘前市、黒石市に関しては、東日本大震災が特許出願の件数にあまり顕著な影響を与えていないような印象を受ける。
【図3】
このような背景を考慮して、以下の図4に示すデータでは、東日本大震災が発生した2011年に少し落ち込み、その後2012年になり、特許出願件数が少し回復している状況が理解できる(図4は、特許庁が発表した青森県の特許出願件数のデータを基礎として筆者が計算して加工したものである)。
§2 最近5年間の青森県の特許出願の傾向:
2010年に青森県の特許出願件数は119件であり、青森県は全国で最下位の47位であった。2011年の青森県の特許出願件数は109件であり、引き続き全国最下位であった。
しかし、2012年に青森県の特許出願件数は127件となり、ついに全国最下位を脱却し、全国で46位のランキングとなった。そして、2013年には、青森県の特許出願件数は124件で、全国で43位のランキングとなり、2014年も青森県の特許出願件数は119件であり、全国で43位のランキングを維持している。
残念ながら、青森県の特許出願件数の絶対値そのものは図4から分かるように低迷している。これは我が国全体の特許出願件数が2010年に29.0万件、2011年に28.8万件、2012年に28.7万件, 2013年に27.2万件、2014年に26.6万件と次第に縮小傾向にあることを反映しているものと思われる。そこで、図4では、青森県の特許出願件数の全国の特許出願件数の総数に対する割合も同時に示している。
図4から分かるように青森県の特許出願件数の全国の特許出願件数に対する割合は、2010年に410 ppm(=0.041%)、2011年に379 ppm(=0.0379%)、2012年に442 ppm(=0.0442%), 2013年に456 ppm(=0.0456%)、2014年に447 ppm(=0.0447%)であり、東日本大震災のあった2011年には低下しているが、2012年以降は2010年のレベルよりも上昇しており、僅かながら改善をしているものと判断できる。
【図4】
即ち、図1の特許公開公報のデータから読める東日本大震災以前の特許の出願件数のデータに示すとおり、青森県においては、特許の出願件数が第1位であった弘前市と第2位であった青森市は震度4であった。
このように、弘前市と青森市では、青森県全体の特許出願件数に影響を与える程の大きな被害が発生しなかったので、青森県全体としては、図4に示すとおり特許出願件数に対する東日本大震災の影響はあまり大きくない印象である。
ただし、図4から分かるとおり、2012年以降は全国的な特許出願件数の低調傾向の影響を受けているようである。青森県の特許出願件数は2012年以降も殆ど横ばいの状況になってしまっていると理解できる。
しかしながら、青森県の特許出願件数の全国の特許出願件数に対する割合をみると、東日本大震災のあった翌年の2012年以降の割合は2010年のレベルよりも上昇しており、青森県の特許出願は、全国の傾向よりも、僅かながら改善をしているものと判断できそうである。
辨理士・技術コンサルタント(工学博士 IEEE Life member)鈴木壯兵衞でした。
そうべえ国際特許事務所ホームページ http://www.soh-vehe.jp