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【医師監修】 毎日9時間以上眠ってしまうあなたへ:長時間睡眠者のタイプと潜むリスク

坪田聡

坪田聡

テーマ:睡眠障害

◆「寝ても寝ても眠い」その原因は?

「眠るのが好き」「休日は10時間以上眠るのが当たり前」という人は少なくありません。しかし、適切な睡眠時間には個人差があるとはいえ、慢性的に長時間(一般的には9時間以上)眠る必要がある状態は、単なる「ロングスリーパー」として片付けられない場合があります。睡眠専門家の視点から、長時間睡眠に隠された真実と、見過ごされがちな健康への影響について解説します。

◆長時間睡眠者(ロングスリーパー)の2つのタイプ

長時間睡眠者は、大きく分けて2つのタイプに分類できます。

1.本来の体質:真のロングスリーパー

これは、遺伝的な体質によって、健康を維持するために9時間以上の睡眠を必要とする人々です。彼らは長時間眠っても日中の眠気を感じず、集中力や気分も良好です。このタイプは人口のごく一部であり、長時間睡眠=病気ではありません。彼らにとって9時間の睡眠は、ショートスリーパーにとっての6時間と同じように、必要不可欠なものです。このタイプであれば、過度に心配する必要はありません。

2.潜在的な問題:病的な長時間睡眠

最も注意が必要なのは、睡眠時間が長くても「スッキリしない」「日中も強い眠気に襲われる」という人々です。彼らの長時間睡眠は、何らかの病気や生活習慣の問題によって引き起こされている可能性が高いです。

・睡眠負債の蓄積:平日の睡眠不足(睡眠負債)を週末にまとめて取り返そうと「寝だめ」している状態です。これは体調を崩す原因になりがちです。

・睡眠の質の低下:睡眠時無呼吸症候群などにより睡眠が分断され、深い睡眠が十分に取れていないため、必要な睡眠時間を確保しようとして結果的に長く眠ってしまいます。

・過眠症:ナルコレプシーや特発性過眠症などの睡眠障害により、睡眠時間が延長したり、日中の耐え難い眠気(睡眠発作)が起こります。

・精神的・身体的な疾患:うつ病、甲状腺機能低下症、貧血、慢性疲労症候群、薬剤の副作用などが原因で、過度な眠気や倦怠感が生じている場合もあります。

◆「眠りすぎ」が健康を脅かす、意外なリスク

長時間睡眠は、睡眠不足と同様に、健康上のリスクを高める可能性があることが、多くの疫学研究で指摘されています。特に、上記の「病的な長時間睡眠」は危険信号です。

・糖尿病・心疾患リスクの増加:9時間以上の睡眠をとる人は、7~8時間睡眠の人に比べて、糖尿病や高血圧、心筋梗塞などの循環器系疾患の発症リスクが高いという報告が多くあります。これは、長時間睡眠の原因となっている基礎疾患や、活動時間の減少、運動不足などが複合的に関わっていると考えられています。

・うつ病のリスク:長時間眠る習慣は、活動量の低下や社会的な交流の減少につながり、抑うつ傾向やうつ病のリスクを高める可能性があります。

・認知機能の低下:高齢者では、過剰な睡眠時間が認知症の発症リスクと関連するという研究結果もあります。睡眠時間が長すぎると、睡眠の質が低下し、脳の休息とリセットがうまく行われなくなることが一因と考えられています。

◆まず確認すべきセルフチェックポイント

もしあなたが「眠りすぎ」だと感じていて、日中の眠気や倦怠感に悩まされているなら、以下の点をチェックし、必要であれば専門医に相談してください。

・睡眠の質:いびきをかく、途中で何度も目が覚める、朝起きた時に頭痛がするなどの症状はありませんか?(→睡眠時無呼吸症候群の可能性)

・睡眠リズム:毎日、ほぼ同じ時間に眠って起きていますか?(→不規則な生活は睡眠負債の原因に)

・日中の状態:強い眠気で仕事や勉強に支障が出ていませんか?(→過眠症や基礎疾患の可能性)

・気分:落ち込んだり、やる気が出ない状態が続いていませんか?(→うつ病の可能性)

◆専門家からのアドバイス

長時間睡眠が体質的なものではなく、日中の不調を伴う場合は、それは体が発しているSOSのサインかもしれません。健康な睡眠は、単に時間をかければ良いというものではありません。質の高い、適切な時間の睡眠を得るためには、まずその裏に隠れた原因を特定することが重要です。まずは睡眠アプリなどで記録をつけ、専門医(睡眠専門医)の診察を受けることを強くお勧めします。


雨晴クリニックでは、長時間睡眠の検査・治療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。

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坪田聡
専門家

坪田聡(医師)

雨晴クリニック

不眠症など睡眠障害の治療に30年以上携わり、快眠に関する正しい知識の普及に力を入れています。コーチングによる生活習慣の見直しから枕の選び方までサポート。メディア出演や著書、セミナーの実績も豊富です。

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