【医師監修】 月経と睡眠の関係～月経随伴睡眠障害について知ろう～
◆はじめに
このコラムでは、多くの人が抱える健康問題、高血圧症と睡眠障害の間にある見過ごされがちな関係について、深く掘り下げていきます。「血圧が高いのは体質だから」と諦めている方、「眠れないのは歳のせい」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの二つは、お互いに影響を与え合い、あなたの健康を静かに蝕んでいる可能性があるのです。
◆睡眠不足が血圧を上げるメカニズム
なぜ、睡眠が足りないと血圧が上がってしまうのでしょうか。私たちの体は、夜眠っている間に心身を休ませ、血圧を下げるという重要な調整をしています。これは、夜間ディップと呼ばれる現象で、健康な人であれば、眠っている間に血圧が日中よりも10～20%ほど下がります。この夜間ディップがあることで、心臓や血管は休息を得られます。
しかし、睡眠時間が短くなったり、睡眠の質が低下したりすると、この夜間ディップが十分に起こらなくなります。
具体的には、質の悪い睡眠は交感神経を優位にさせます。交感神経は、体を活動させるアクセルの役割を果たしており、これが活性化すると、心拍数が上がり、血管が収縮し、結果として血圧が上昇してしまうのです。
さらに、睡眠不足はコルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を促し、体内の炎症を増加させます。これらすべてが、血管の内側の細胞（内皮細胞）にダメージを与え、長期的に動脈硬化を進行させ、高血圧を悪化させる要因となります。
◆特に注意すべき「睡眠時無呼吸症候群」
高血圧症と関連の深い睡眠障害の中でも、特に警戒が必要なのが睡眠時無呼吸症候群（SAS）です。睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする病気で、いびきが大きいのが特徴です。
呼吸が止まるたびに、体は酸欠状態に陥り、危機を感じた脳が無理やり体を覚醒させようとします。この一連の反応が、夜間に血圧を急激に上昇させます。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、夜間の血圧が下がらないどころか、かえって上昇する非ディッパーやライザーと呼ばれるパターンを示すことが多く、このことが高血圧、さらには心筋梗塞や脳卒中のリスクを大幅に高めることがわかっています。
高血圧の治療を受けているにもかかわらず、なかなか血圧が安定しない難治性高血圧の患者さんの多くに、睡眠時無呼吸症候群が隠れているケースが見られます。もし、あなたが高血圧と激しいいびき、日中の強い眠気に悩んでいるなら、すぐにでも睡眠専門医に相談すべきです。
◆質の高い睡眠を取り戻すための具体的な対策
高血圧のリスクを減らすためにも、質の高い睡眠を取り戻すことが何よりも重要です。今日から実践できる対策をいくつかご紹介しましょう。
・規則正しい生活リズムの確立：
毎日なるべく同じ時刻に寝起きし、体内時計を整えましょう。週末の寝だめは、かえってリズムを乱す原因になります。
・寝室環境の整備：
寝室は、暗く静かで、快適な温度と湿度に保ちましょう。特に、血圧に影響を与える光には要注意です。眠る前のスマートフォンやパソコンの使用は避けましょう。ブルーライトが脳を覚醒させ、入眠を妨げます。
・カフェインやアルコールの摂取制限：
特に就寝前のカフェイン（コーヒー、エナジードリンクなど）は、交感神経を刺激し、眠りを浅くします。また、アルコールは一時的に眠気を誘いますが、睡眠の後半で覚醒を促し、深い睡眠を妨げるため、控えるべきです。
・適度な運動：
夕方から夜にかけての適度な運動は、入眠をスムーズにし、睡眠の質を高めますが、激しい運動は就寝の3時間前までに済ませましょう。
◆終わりに
高血圧の改善は、食事や運動、そして薬物療法だけではありません。質の良い睡眠は、治療効果を最大限に引き出すための、いわば土台です。
あなたの眠りと血圧は密接につながっています。ご自身の睡眠習慣を見直し、改善に取り組むことが、健康な未来への第一歩となります。気になる症状がある場合は、我慢せずに専門医にご相談ください。睡眠の専門家として、皆さんの健康を心から応援しています。
雨晴クリニックでは、高血圧症と睡眠障害の検査・治療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。
