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【医師監修】夜中にピクッ!その正体は?〜知っておきたい入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)〜

坪田聡

坪田聡

テーマ:睡眠運動障害

リンゴ・女性・ベッド
「寝入りばなに体がビクッと跳ねて目が覚めた」「夢の中で高いところから落ちて体がピクッとなった」──そんな経験、ありませんか? 多くの人が一度は経験するこの現象、実は入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)という、ごく一般的な生理現象です。今回は、この入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)について詳しく解説していきます。

◆種類:なぜ体がピクッとなるの?

入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)は、睡眠への移行期(入眠時)に起こる、不随意で瞬間的な筋肉の収縮のことです。専門的には生理的ミオクローヌスの一種に分類されます。これは病的なものではなく、健常な人にも見られる現象です。

特徴としては、以下のような点が挙げられます。

・単発的であること:ほとんどの場合、一度または数回のピクつきで終わります。
・非周期的であること:特定のパターンなく不規則に起こります。
・左右非対称であること:片側の手足や全身に起こることがありますが、左右同時に規則的に起こることは稀です。
・自覚症状がないことが多い:ほとんどの場合、本人は気づかず、一緒に寝ている人が気づくことの方が多いでしょう。

◆原因・メカニズム:脳の誤作動?それとも…

入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)の正確なメカニズムは完全に解明されているわけではありませんが、いくつかの説が提唱されています。

最も有力なのは、脳の興奮と抑制のバランスが崩れることに関係しているという説です。覚醒状態から睡眠状態へ移行する際、脳は興奮を抑え、リラックスへと向かいます。この切り替わりの際に、脳内の神経伝達物質のバランスが一時的に乱れ、手足の筋肉を司る部分が誤って興奮し、筋肉の収縮を引き起こすと考えられています。

また、夢が関係していると考える人もいます。夢の中で高いところから落ちる、つまずくといった状況と同時に体がピクッとすることが多いため、脳が夢の内容と体の動きを連動させている可能性も指摘されています。しかし、夢を見ているわけではないのに起こることも多いため、これが唯一の原因とは言えません。

その他、ストレス、疲労、カフェインやアルコールの摂取なども、ミオクローヌスを誘発しやすい要因として考えられています。

◆検査:診断に必要?

入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)は、ほとんどの場合、特別な検査を必要としません。医師が問診で症状を聞き、他の病気の可能性がないことを確認すれば、診断がつきます。

もし、あまりにも頻繁に起こる、睡眠の質が著しく低下している、日中の生活に支障が出ているといった場合には、念のため睡眠専門医を受診し、詳細な検査(ポリソムノグラフィーなど)を行うこともあります。しかし、これは稀なケースです。

◆入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)と似た症状を示す病気:見分け方は?

入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)と間違えやすい症状を示す病気もいくつかあります。これらの病気との鑑別が重要です。

・むずむず脚症候群:眠りにつく前や安静時に、脚に不快なむずむず感や痛みが生じ、脚を動かすことで症状が一時的に和らぐ病気です。入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)とは異なり、不快感が強く、脚を動かしたいという強い衝動を伴います。

・周期性四肢運動障害:睡眠中に手足が周期的にぴくつく(伸びたり曲がったりする)病気です。入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)が単発的であるのに対し、周期性四肢運動障害は規則的なパターンで繰り返されるのが特徴です。本人は気づかないことが多いですが、睡眠が中断され、日中の眠気や疲労感につながることがあります。

・てんかん:まれではありますが、入眠時てんかんの一部がミオクローヌスのように見えることがあります。てんかんの場合は、意識障害を伴ったり、より広範囲な筋肉の収縮や、ピクつきが覚醒時にも起こったりするなどの特徴があります。

これらの病気は、入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)とは異なり、治療が必要となる場合があります。ご自身の症状に不安がある場合は、専門医に相談しましょう。

◆治し方:治療は必要?

基本的には、入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)は治療の必要はありません。生理現象であり、健康上の問題を引き起こすことはほとんどないからです。

しかし、もしあまりにも頻繁に起こり、ご自身が不快に感じる、あるいは睡眠の質に影響が出ていると感じる場合は、生活習慣の改善で症状が軽減することがあります。

◆自分でできる対策:快適な眠りのために

入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)を完全にゼロにすることは難しいですが、症状を軽減させ、より快適な睡眠を得るために、自分でできる対策がいくつかあります。

・規則正しい睡眠習慣:毎日決まった時間に寝起きし、体内時計を整えることが重要です。
・カフェインやアルコールの制限:特に寝る前のカフェインやアルコールの摂取は、脳の興奮を促し、ミオクローヌスを誘発しやすいため控えましょう。
・リラックスできる環境作り:寝室を暗くし、静かで快適な温度に保ちましょう。アロマセラピーや温かいお風呂も効果的です。
・適度な運動:日中の適度な運動は、良質な睡眠を促しますが、寝る直前の激しい運動は避けましょう。
・ストレスの軽減:ストレスは心身の緊張を高め、ミオクローヌスを悪化させる可能性があります。趣味やリラックスできる時間を作るなど、ストレス解消法を見つけましょう。
・寝具の見直し:自分に合った枕やマットレスを使用し、快適な寝姿勢を保つことも大切です。

入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)は、多くの人が経験する自然な現象です。過度に心配する必要はありませんが、もし症状が気になる、あるいは睡眠の質に影響が出ていると感じる場合は、上記でご紹介した対策を試してみてください。それでも改善しない場合は、一人で悩まず、睡眠専門医に相談することをお勧めします。安心して眠れる夜を取り戻しましょう。


雨晴クリニックでは、 入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)の診療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。

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坪田聡
専門家

坪田聡(医師)

雨晴クリニック

不眠症など睡眠障害の治療に30年以上携わり、快眠に関する正しい知識の普及に力を入れています。コーチングによる生活習慣の見直しから枕の選び方までサポート。メディア出演や著書、セミナーの実績も豊富です。

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