【医師監修】もしかしてむずむず脚症候群? 睡眠を妨げる不快感の原因と対策
皆さんは、朝起きて家族に「昨晩、寝言を言っていたよ」と指摘された経験はありませんか?あるいは、同居人の寝言に驚いたことがある方もいるかもしれません。睡眠中に発せられる寝言は、時に面白おかしく、時に不可解に感じられる現象です。今回は、睡眠障害の専門家として、この寝言について詳しく解説していきます。
◆ 寝言の種類は?
寝言は、単に言葉を発するだけでなく、さまざまな形で現れます。大きく分けて以下の2つのタイプがあります。
・独り言型:意味不明な単語の羅列や、短いフレーズ、うめき声、笑い声などがこれにあたります。最も一般的な寝言といえるでしょう。
・会話型:実際には誰もいないのに、あたかも誰かと会話しているかのように言葉を発するタイプです。質問に答えたり、何かを説明したりすることもあります。
また、寝言の音量も人によってさまざまで、ささやくような小さな声から、はっきりと聞こえる大きな声まであります。
◆ 寝言の原因・メカニズムは?
寝言は、睡眠中に脳の一部が覚醒に近い状態になることで起こると考えられています。睡眠は大きく分けて、脳の休息である「ノンレム睡眠」と、体の休息である「レム睡眠」があります。
・ノンレム睡眠中の寝言:ノンレム睡眠は脳波がゆっくりな眠りですが、この最中に言葉を発することがあります。これは、脳の一部が一時的に覚醒し、運動機能に関わる部位が活性化されるためと考えられています。夢を見ているわけではない場合も多いです。
・レム睡眠中の寝言:レム睡眠は夢を見る時間帯であり、通常は体の筋肉が脱力して動かないようになっています。しかし、この筋肉の脱力が不十分な場合、夢の内容が言葉として発せられることがあります。これは、後述するレム睡眠行動障害と関連が深い場合があります。
ストレスや疲労、睡眠不足、アルコールの摂取なども、脳の覚醒水準を不安定にし、寝言を誘発する要因となります。
◆ 寝言を伴う病気があるって本当?
ほとんどの寝言は、病的なものではなく、特に心配する必要はありません。しかし、以下のような場合は、医療機関での診察が必要となることがあります。
・レム睡眠行動障害(RBD):通常、レム睡眠中は夢の内容が言葉や行動につながらないように体が麻痺(まひ)していますが、レム睡眠行動障害(RBD)ではこの麻痺が不十分なため、夢の内容に合わせて叫んだり、手足を動かしたり、暴れたりします。寝言も非常に多く見られます。
・睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。苦しさから覚醒反応が起こり、寝言やうめき声を発することがあります。
・てんかん:夜間に発作が起こるタイプのてんかんの中には、寝言や奇声、あるいは複雑な行動を伴うものもあります。
・精神疾患や神経変性疾患:うつ病やパーキンソン病などの神経変性疾患の初期症状として、寝言や異常な行動がみられることもあります。
◆ 検査でわかること
寝言自体を診断する特別な検査はありませんが、もし寝言が頻繁で、激しい、または睡眠の質が著しく低下していると感じる場合は、睡眠専門医を受診することをお勧めします。専門医は、以下のような検査を通じて、寝言の背景にある病気を特定しようとします。
・問診:寝言の内容や頻度、睡眠の質、日中の眠気などについて詳しく伺います。
・睡眠ポリグラフ検査(PSG):脳波や眼球運動、筋電図、呼吸、心電図などを同時に測定し、睡眠中の体の状態を総合的に評価します。これにより、レム睡眠行動障害や睡眠時無呼吸症候群の有無を確認できます。
◆ 寝言の治し方
病的な寝言でない限り、基本的には治療の必要はありません。しかし、寝言がレム睡眠行動障害や睡眠時無呼吸症候群などの病気によって引き起こされている場合は、その病気の治療を行うことで寝言も改善されることが期待できます。睡眠の専門医と相談して、適切な治療法(薬物療法やCPAP療法など)を受けましょう。
◆自分でできる寝言対策
寝言が気になる、あるいは睡眠の質を向上させたい場合は、以下の対策を試してみてください。
・規則正しい生活リズムを:毎日同じ時間に寝起きし、体内時計を整えることが質の良い睡眠につながります。
・ストレスの軽減:ストレスは睡眠の質を低下させ、寝言を誘発しやすくなります。適度な運動や趣味、リラクゼーションなどを取り入れ、ストレスを上手に解消しましょう。
・眠る前の工夫:眠る前のアルコールやカフェインの摂取は控えましょう。また、眠る直前の激しい運動やスマートフォン、パソコンの使用も避け、リラックスできる環境を整えましょう。
・快適な睡眠環境:寝室をなるべく暗く静かに、そして適度な温度と湿度に保つことで、質の良い睡眠を促進します。
寝言は、私たちの睡眠中に起こる不思議な現象の一つです。多くの場合、心配はいりませんが、もし気になることがあれば、一人で悩まずに睡眠専門医に相談してみてください。あなたの睡眠がより快適になるよう、お手伝いできるかもしれません。
雨晴クリニックでは、 寝言の診療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。