判決に納得できない場合|控訴を検討する際の判断材料
この記事は、2023年7月施行の改正刑法(不同意わいせつ罪・不同意性交等罪)と、2026年1月13日に運用が始まった法テラスの「犯罪被害者等支援弁護士制度」を前提に書いています。各窓口の受付時間や制度の要件は変わることがあるため、利用の前にそれぞれの窓口でご確認ください。
女性用風俗を利用した際に、断ったのに行為を続けられた、店で禁止されているはずの行為をされた、知らないうちに撮影されていた、といったご相談が寄せられることがあります。自分で予約して利用したという負い目から、誰にも話せずにいる方も少なくありません。
この記事では、女性用風俗で望まない行為をされたときに、どのような相談先があり、それぞれ何をしてもらえるのかを整理します。警察に届けるかどうかを決めていない段階でも使える窓口があることを、まず知っておいていただければと思います。
「自分で利用したのだから」と相談をためらう必要はありません
女性客が女性用風俗を利用したこと自体は、犯罪にあたりません。利用したことを理由に、相談した側が責められたり処罰されたりする心配は基本的にありません。
また、サービスを申し込んだからといって、あらゆる行為に同意したことにはなりません。女性用風俗の多くは挿入を伴う行為を禁止しており、利用者が同意していたのは、店が定めたサービスの範囲の行為です。その範囲を超える行為や、途中で「やめてほしい」と伝えた後も続けられた行為は、不同意わいせつ罪(刑法176条)や不同意性交等罪(刑法177条)の問題になることがあります。
2023年の刑法改正では、同意しない意思を表したり貫いたりすることが難しい状態でされた性的な行為が処罰の対象として整理されました。驚きや恐怖で体が固まり声が出なかった場合や、飲酒や眠気で意識がはっきりしなかった場合も、その類型に含まれています。「はっきり拒まなかったから仕方がない」と一人で結論を出さないことが大切です。挿入がなかった場合の考え方については、挿入がなくても罪になる場面|不同意わいせつ罪との線引きで、どの類型にあたるかの読み方はどの類型で立件されているのか|不同意性交等罪の8つの要因の読み方で解説しています。
望まない行為として問題になりやすい場面
ご相談の中で多いのは、次のような場面です。
- 禁止されているはずの挿入をされた。
- 「やめて」と伝えたのに続けられた。
- 避妊具を着けると言われたのに、着けずに行為をされた。
- 施術中や行為中の様子を、知らないうちに撮影されていた。
- 飲酒後や眠ってしまった間に、説明のなかった行為をされた。
撮影については、性的姿態等撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)が問題になる場面があります。撮影した画像を材料に連絡を求められているといった事情があれば、【風俗トラブル・女性用風俗】女性客が撮影・拡散を脅された|性別が変わっても手口は同じもあわせてご覧ください。
相談先ごとの役割
相談先は一つに決める必要はなく、目的に応じて組み合わせて使うことができます。主な窓口の役割は次のとおりです。
| 相談先 | 主にしてもらえること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 110番 | その場での保護、警察官の駆けつけ | 今まさに危険がある、相手が近くにいる |
| 警察の性犯罪被害相談電話(#8103) | 警察官による相談、被害届・告訴の案内 | 警察に話すかどうかを含めて相談したい |
| ワンストップ支援センター(#8891) | 医療・相談・付き添いなどの支援をまとめて受けられる | からだのケアを先に考えたい、届け出るか決めていない |
| 法テラス 犯罪被害者支援ダイヤル | 被害者支援に詳しい弁護士の紹介、制度の案内 | 費用の面で弁護士への依頼をためらっている |
| 弁護士 | 告訴の手続、店やセラピストとの交渉、損害賠償の請求 | 相手方との対応を任せたい、示談を持ちかけられている |
今まさに危険があるとき
ホテルの部屋から出られない、相手がまだ近くにいるなど、身の安全が確保できていない場合は、ためらわずに110番通報をしてください。その後の手続をどうするかは、安全を確保してから考えれば足ります。
警察に話すかどうか迷っているとき
警察の性犯罪被害相談電話は、全国共通の「#8103」につながり、匿名でも相談できます。相談したからといって、その場で被害届を出すことを求められるわけではありません。届け出るかどうかは、話を聞いたうえで決めることができます。
なお、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪には公訴時効があり、2023年の改正で延長されています。時間が経っていても相談をあきらめる必要はありませんが、記録や証拠は時間とともに集めにくくなるため、早めに動くほど選べる手段は多く残ります。時効の考え方は風俗トラブルの時効早見表|公訴時効と民事の消滅時効はいつ終わるのかで整理しています。
からだのことを先に考えたいとき
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは、全国共通の「#8891」で最寄りのセンターにつながります。医療機関の紹介、緊急避妊や性感染症の検査についての相談、証拠の採取と保管、警察や病院への付き添いなどを、一か所で相談できるのが特徴です。警察に届け出るかどうかを決めていなくても利用できます。
緊急避妊薬は服用までの時間が限られており、証拠の採取も時間が経つほど難しくなります。被害の直後であれば、着替えた衣類を洗わずに袋に入れて保管しておくと、後で役立つことがあります。
相手方との対応を任せたいとき
弁護士には、告訴状の作成や警察への同行、店やセラピストとの交渉、損害賠償の請求などを依頼できます。店やセラピスト側から「お詫びをしたい」「示談にしたい」と連絡が来ている場合も、弁護士が窓口になることで、ご自身が直接やり取りをせずに済みます。刑事裁判の中で賠償を求める手続もあり、損害賠償命令制度|刑事裁判の中で賠償を求める方法で紹介しています。
費用が心配な場合は、法テラスの犯罪被害者支援ダイヤル(0120-079714)に問い合わせる方法があります。2026年1月13日からは、不同意わいせつや不同意性交等などの被害を受けた方で、預貯金等の資力が一定額以下の方を対象に、原則として法テラスが費用を負担して弁護士の援助を受けられる「犯罪被害者等支援弁護士制度」が始まっています。対象となるかどうかは、法テラスでご確認ください。
店に伝えるかどうかの考え方
被害を店に伝えると、セラピストの処分や返金の話が出ることがあります。ただ、店はセラピストと契約関係にある当事者でもあり、利用者の立場だけを考えて動くとは限りません。
店から、その場で金額を示されて「これで終わりにしてほしい」と書面への署名を求められることもあります。示談書には、被害届を出さないことや、今後一切請求しないことを約束する条項が入っていることが多く、署名した後で見直すのは簡単ではありません。内容に納得できないまま署名しないこと、セラピスト本人と個別に連絡を取り合わないことを、まず心がけてください。
家族や職場に知られたくないとき
弁護士には守秘義務があり、ご相談いただいた内容が、ご本人の了解なくご家族や勤務先、相手方に伝わることはありません。相談した段階で相手方に知られることを心配されている方は、【男女トラブル】相手に知られずに相談できるか|相談しただけで相手に伝わることはないもご覧ください。
刑事手続に進んだ場合も、2024年に施行された刑事訴訟法の改正により、起訴状などで被害者の氏名や住所を相手方に知らせないようにする措置が設けられています。利用した事実が周囲に伝わる経路と、その防ぎ方については、【風俗トラブル・女性用風俗】女性客の身バレ|職場・家族に伝わる経路と遮断の順序で詳しく扱っています。
相談の前に手元に残しておきたいもの
相談の際には、次のような記録があると状況を把握しやすくなります。気持ちの整理がつかないうちに無理にそろえる必要はありませんが、消さずに残しておくことだけは意識してください。
- 予約の確認画面やメール、利用した店の名前とセラピストの名前。
- セラピストや店とのメッセージのやり取り。
- 支払いの記録(カードの明細、振込の記録など)。
- 利用した日時と場所(ホテル名、部屋番号など)。
- 当日着ていた衣類。
- 受診した医療機関の記録や診断書。
- 覚えている範囲で書き出した、当日の出来事のメモ。
よくあるご質問
時間が経ってからでも相談できますか
相談できます。数か月や数年が経ってから、ようやく話せるようになる方も少なくありません。時間の経過で取れる手段が変わることはありますが、何が残っていて何ができるかは、お話を伺ったうえで一緒に確認します。
途中までは自分も望んでいた場合でも、被害として扱われますか
同意は行為ごとに考えるもので、ある行為に同意していたことが、別の行為への同意を意味するわけではありません。途中で拒んだ後に続けられた行為や、説明のなかった行為については、被害として相談することができます。
店外で個人的に会っていたときの出来事でも相談できますか
相談できます。店を通していない場面であっても、同意のない性的な行為が問題になることに変わりはありません。店との関係や、店外で会っていたことへの不安があれば、あわせてお聞かせください。女性客がトラブルの当事者になる場面全体については、女性用風俗のトラブル|利用した女性客が当事者になる場合で整理しています。
ご相談にあたって
女性用風俗での被害は、利用したことへのためらいや、周囲に知られることへの不安から、一人で抱え込まれやすい問題です。からだのこと、警察に届けるかどうか、店やセラピストへの対応は、それぞれ別の窓口で相談できますし、順番を決めかねている段階でも話を聞いてもらうことができます。当事務所では、相手方とのやり取りの窓口になることや、告訴や損害賠償の手続について、ご事情に応じてご相談をお受けしています。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


