観護措置決定に異議がある|取消し・抗告の手続
少年事件について調べていると、「弁護人」と「付添人」という二つの言葉が出てきます。どちらも弁護士が務めることが多く、同じ弁護士が続けて担当する例も珍しくないため、呼び名が違うだけのように見えるかもしれません。
しかし、この二つは、よりどころとなる法律も、依頼するときの手続も、手続の中で使える権限も、それぞれ別に定められた立場です。しかも、事件が置かれる場所が変わったときに、立場が自動的に引き継がれるわけではありません。ここでは、どの段階で誰がどの立場で動くのか、そして立場が切り替わる場面で何が起きるのかを整理します。
呼び名が変わるのは、手続そのものが入れ替わるからです
20歳に満たない少年の事件でも、警察や検察官が捜査を行っている間は、おおむね大人の刑事事件と同じ法律の下で手続が進みます。この間に少年を支える弁護士は「弁護人」です。
一方、捜査を終えた事件は、原則として家庭裁判所に送られます。家庭裁判所の手続は、刑罰を科すかどうかを決める刑事裁判とは別の仕組みで、少年審判と呼ばれます。ここで少年を支える弁護士の呼び名が「付添人」に変わります。
つまり、弁護人と付添人の違いは、担当する弁護士の資格や経験の違いではありません。事件がいまどの手続の中に置かれているかの違いが、そのまま呼び名の違いになっています。
役割の置かれ方も同じではありません
弁護人は、刑事手続の中で被疑者や被告人の側に立ち、その言い分と利益を守る立場です。これに対して少年審判は、責任を追及して刑罰を決める手続ではなく、少年に必要な働きかけを見極める手続として組み立てられています。
そのため付添人は、少年の側に立って言い分を伝えるだけでなく、少年の生活や環境について家庭裁判所が判断するための材料を届ける役割も担います。争う場面が中心になるとは限らず、審判までの間に生活の立て直しを一緒に進める活動が大きな比重を占めることもあります。
同じ弁護士でも、立場は自動では続きません
捜査段階で弁護人だった弁護士が、そのまま家庭裁判所で付添人として動くことはよくあります。ただしそれは、付添人としての手続をあらためて踏んだ結果です。書面が出ていなければ、家庭裁判所からは付添人として扱われません。この点はあとで詳しく見ます。
段階ごとに、誰がどの立場で動くのか
| 段階 | 少年を支える弁護士の呼び名 | よりどころとなる法律 |
|---|---|---|
| 警察・検察官の捜査中 | 弁護人 | 刑事訴訟法 |
| 14歳未満の少年に対する警察の調査 | 弁護士である付添人 | 少年法 |
| 家庭裁判所に送られたあと | 付添人 | 少年法・少年審判規則 |
| 検察官に送り返され、起訴されたあと | 弁護人 | 刑事訴訟法 |
| 審判の結果に不服を申し立てたあと | 付添人 | 少年法・少年審判規則 |
一つの事件の中で、立場が何度か入れ替わることがあると分かります。ご家族から見ると「同じ先生に最後までお願いしている」という感覚でも、手続の上ではその都度、地位を取り直していることになります。
入れ替わりが起きる場面は主に二つです
実務で大きな意味を持つのは、捜査機関から家庭裁判所へ事件が送られる場面と、家庭裁判所から検察官へ事件が送り返される場面です。以下ではこの二つを順に見ていきます。
家庭裁判所に送られたときに起きること
裁判官が付けた弁護人の選任は効力を失います
勾留された少年に、国の費用で弁護人が付いていることがあります。少年法は、事件が家庭裁判所に送られたときは、裁判官による被疑者の弁護人の選任は効力を失うと定めています。担当していた弁護士が少年と無関係になるという意味ではありませんが、国の費用で付いていた弁護人という地位は、送致とともにいったん終わります。
付添人としての届出をあらためて出します
家庭裁判所で付添人として扱われるには、少年審判規則にしたがい、付添人と連署した書面を家庭裁判所に差し出します。この書面には、少年と付添人との関係も記載します。
私選で依頼していた場合も同じです。捜査段階に検察庁や警察署へ提出した弁護人選任届が、そのまま家庭裁判所に引き継がれるわけではありません。事件は思っていたより早く家庭裁判所に送られることがあるため、弁護士の側では、捜査段階の書面と付添人選任の書面を早めにそろえておく対応が取られます。
大人の刑事手続との違いが出るところです
大人の刑事事件では、起訴される前に差し出した弁護人選任届は、第一審の裁判が終わるまで効力が続きます。これに対して少年事件では、付添人の選任は審級ごとに行うものとされています。手続の場所が変わるたびに選任し直す仕組みだと考えると、届出が二重に必要になる理由が分かりやすいと思います。
検察官に送り返され、起訴されたときに起きること
家庭裁判所は、刑事処分が相当と判断した事件を検察官に送り返すことがあります。送り返された事件について起訴されると、手続は刑事裁判に移り、少年を支える弁護士は再び弁護人と呼ばれます。
少年や家族が選んだ付添人は、そのまま弁護人として扱われます
少年法は、少年やその保護者などが選任した弁護士である付添人を、弁護人とみなすと定めています。少年審判規則にも、この付添人がいる場合には、裁判所が弁護人を選任できる旨をあらためて告げなくてよいという規定が置かれています。私選で依頼していた事件では、立場が途切れずに移る部分だといえます。
国が付けた付添人の場合は切替えの手続が要ります
これに対して、家庭裁判所が国の費用で付けた付添人は、この「みなす」規定の対象に入っていません。同じ弁護士が引き続き担当する場合でも、国の費用で弁護人となるための手続を別に取ることになります。ここでも、立場が自動的に続くわけではないという構造は変わりません。
国の費用で弁護士が付く仕組みは、段階でそろっていません
「捜査段階で国選の弁護人が付いたのだから、家庭裁判所でも同じように付くはずだ」と受け止められることがあります。しかし、二つの制度は対象の決め方が違います。
| 段階 | 国の費用で弁護士が付く場面 | 付き方 |
|---|---|---|
| 捜査段階 | 勾留されている場合など | 条件を満たせば請求により選任される |
| 家庭裁判所に送られたあと | 検察官が審判に出席する事件、被害を受けた方に審判の傍聴を許す事件 | 弁護士である付添人がいなければ付される |
| 家庭裁判所に送られたあと | 死刑または無期もしくは長期3年を超える拘禁刑にあたる罪の事件で、少年鑑別所に送致されている場合 | 事案の内容などを考慮して裁判所が判断する |
対象の範囲がずれている理由
国の費用で付添人を付ける仕組みは、法改正のたびに対象が広げられてきました。一時期は捜査段階の国選弁護人と対象がそろっていましたが、その後に捜査段階の側だけがさらに広げられたため、現在は範囲にずれが残っています。
その結果、捜査段階では国の費用で弁護人が付いていた事件でも、家庭裁判所に送られたあとは付添人が付かないことがあります。審判の日が近づいてから弁護士がいないと気づく事態を避けるためには、送致の前後で誰が担当するのかを確かめておくことが大切です。
あわせて知っておきたいのは、逮捕された直後の段階では、いずれの制度によっても国の費用で弁護士が付かないという点です。この時期に弁護士と会うには、私選で依頼するか、弁護士会が用意している当番の窓口を利用することになります。
費用の負担が難しい場合
国の費用で付添人が付かない事件でも、弁護士会による費用の援助の仕組みが用意されている場合があります。利用できるかどうかは資力などの条件によりますので、相談の際に確認してみてください。
付添人は弁護士でなければならないのか
付添人は弁護士が務めることが大半ですが、法律上は弁護士に限られていません。ここは弁護人と考え方が違うところです。
弁護士以外の人が付添人になる場合
少年法は、弁護士を付添人に選任するときは家庭裁判所の許可が要らないと定めています。裏返すと、弁護士以外の人を付添人に選任するには家庭裁判所の許可が必要だということです。少年の事情をよく知る人が、許可を受けて付添人となる例があります。
保護者が付添人になることもできます
保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、自ら付添人となることもできます。この場合は、その旨を書面で家庭裁判所に届け出ます。
ただし保護者は、審判の中で質問を受け、意見を求められる立場でもあります。役割が重なることを踏まえ、弁護士に付添人を依頼したうえで、保護者は保護者として審判に臨む形が選ばれることが多いといえます。
選任できる人と、人数の決まり
付添人を選任できるのは、少年本人と保護者だけではありません。少年法は、法定代理人や保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹も選任することができると定めています。親と連絡が取りにくい状況で、祖父母や兄姉が動けることには意味があります。なお、弁護士である付添人の数は3人までとされています。
付添人だからできること
付添人には、少年審判の中で使える権限が定められています。主なものは次のとおりです。
- 審判の席に出席することができます。
- 審判の期日について通知を受けられます。
- 裁判長の許可を得て意見を述べることができます。
- 証人尋問などの証拠調べを申し出ることができます。
- 審判の開始が決まったあとは、事件の記録を閲覧することができます。
少年に直接質問できるのは付添人です
少年審判では、付添人は裁判長に告げて少年に質問することができます。少年が自分の言葉では説明しにくい部分を、手続の中で補うための規定です。同じ場にいる保護者には、これにあたる定めは置かれていません。
記録を見られる時期には区切りがあります
事件の記録は、誰でも自由に見られるものではありません。付添人であっても、閲覧できるのは審判の開始が決まったあとです。写しを取るには、さらに裁判所の許可が必要になります。大人の刑事裁判における証拠の受け取り方とは、進み方が違う部分です。
14歳に満たない少年の場合は入口が違います
14歳に満たない少年は罪に問われませんが、刑罰法令に触れる行為をしたとして、警察の調査を受けることがあります。少年法は、この調査に関して、少年と保護者はいつでも弁護士である付添人を選任することができると定めています。
捜査段階であっても最初から「付添人」という呼び名になるのは、そもそも刑事手続に乗っていないためです。ただし、この段階で選任された付添人は、家庭裁判所の記録を閲覧できる規定の対象からは外されています。同じ付添人という言葉でも、選任の根拠によって扱いが違う場面があるということです。
身体を拘束されている間の面会
少年が少年鑑別所にいる間、家族との面会には職員の立会いがあります。これに対し、付添人や弁護人との面会は立会いの対象から外されています。面会の場所や時間帯には決まりがありますが、やり取りの中身が記録されることは想定されていません。
選任の届出前でも会える形があります
法律は、すでに選任された付添人だけでなく、少年や保護者の依頼を受けて付添人になろうとする弁護士も同じ扱いにしています。依頼を受けた直後で書面がまだ整っていない段階でも、立会いのない面会ができる形が用意されているということです。捜査段階の弁護人についても、同じ考え方の規定があります。
依頼する前に確かめておきたいこと
- 事件がいまどの段階にあるのか。警察や検察官の捜査中か、すでに家庭裁判所に送られているか。
- 国の費用で弁護士が付いているか、付いている場合はどの制度によるものか。
- 家庭裁判所に送られたあとも同じ弁護士に担当してもらえるか、そのための手続をいつ取るのか。
- 少年鑑別所に入っている場合、面会はいつから、どのような形でできるのか。
- 費用の見込みと、援助の仕組みを利用できるかどうか。
これらは、相談の入口で確認しておくと、そのあとの見通しが立てやすくなる項目です。とくに、送致の前後で担当が途切れないようにできるかどうかは、早い段階で確かめておきたいところです。
当事務所の対応について
弁護士法人若井綜合法律事務所は、池袋と新橋に事務所を置き、刑事事件と少年事件のご相談をお受けしています。捜査段階から家庭裁判所の手続まで、立場が切り替わる場面を含めて対応します。ご本人と連絡が取りにくい状況で、ご家族だけでご相談いただくこともできます。
まとめ
- 弁護人と付添人の違いは、事件がどの手続の中に置かれているかの違いです。
- 捜査段階では弁護人、家庭裁判所に送られたあとは付添人と呼ばれます。
- 家庭裁判所に送られると、裁判官が付けた弁護人の選任は効力を失います。
- 付添人として動くには、付添人選任の書面をあらためて家庭裁判所に差し出します。
- 付添人の選任は審級ごとに行うものとされ、大人の刑事手続とは仕組みが違います。
- 検察官に送り返されて起訴された場合、少年や家族が選んだ付添人は弁護人とみなされます。
- 国の費用で付添人が付く場面は限られており、捜査段階の国選弁護とは対象の範囲がずれています。
- 14歳に満たない少年についても、警察の調査の段階から弁護士である付添人を選任できます。


