不貞慰謝料の用語集|不真正連帯債務・求償権・清算条項などを平易に
本件は、性風俗店で知り合った女性に多額のお金を貸したものの音信不通となり、訴訟や強制執行を行っても十分な回収に至らなかった事案です。結果として回収額はごくわずかにとどまりましたが、同種のご相談・ご依頼を数多くいただいていることから、被害の発生を未然に防いでいただきたいという思いで紹介いたします。
ご相談の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼者 | Aさん(40代・男性) |
| 相手方 | 性風俗店で知り合ったBさん |
| 貸付総額 | 約2,000万円(約1年間) |
| 回収額 | 数十万円 |
| 対応内容 | 交渉、訴訟提起、強制執行申立て |
ご依頼に至る経緯
交際の広がりと貸付の増加
Aさんは、性風俗店で知り合ったBさんに好意を抱くようになり、次第に店舗の外でも個人的に会うようになりました。店舗外で会う際には、Bさんの希望に応じて数万円を渡すことが続いていました。
その後、Bさんから「親族の借入れを肩代わりする必要がある」「いわゆる闇金からの取り立てに遭っている」といった話を聞くようになり、Aさんは結婚の話も出ていたことから、Bさんの窮状を放っておけず、お金を貸すことを決意しました。結果として、約1年の間に合計2,000万円を超える金銭を貸し付け、その原資として自身の資産を取り崩すだけでなく、借入れも行うことになりました。
音信不通と相談への経緯
Aさんの資産が底をつき、これ以上の借入れもできなくなると、Bさんの態度は一変し、やがて連絡が取れなくなりました。Aさんは自ら返済を求めて動きましたが、一時的な少額の返済があった以外は進展がなく、状況を打開できないまま弊所にご相談いただきました。
弁護士の対応と解決への流れ
証拠の確認と請求可否の判断
まず、Aさんが保有していた資料をもとに、時系列で事実関係を整理しました。すべての貸付に個別の証拠があるわけではありませんでしたが、貸付金額が大きくなった段階で、それまでの貸付をまとめる形の借用書が作成されており、その中に現金受領の記載もあったことから、金銭の交付についても一定の裏付けを取ることができました。
一方で、懸念点も複数ありました。Bさんが退店し収入や資力に不安があったこと、また店舗外でBさんと性的関係を持ったことがあったため、Bさんから「受け取ったお金は関係維持のための金銭であり返済義務を負わない」という、いわゆる不法原因給付の主張が出る可能性があったことです。
Aさんには、回収できなくても、できる限りの対応をしたうえで区切りをつけたいとのご意向があったため、これらの見通しを説明したうえで受任いたしました。
交渉の開始と相手方代理人の登場
弊所からBさんに連絡し、貸付金の清算について話し合いを申し入れました。当初は反応がありませんでしたが、その後話し合いの機会を設けることができ、Bさんは借入れの事実自体は認めたものの、支払能力が十分でないとの回答でした。
連帯保証人を立ててもらう、合意内容を公正証書にするといった対応を検討していたところ、Bさんに代理人弁護士が就任し、一転して借入金額を争う姿勢や、想定していた不法原因給付の主張が示されました。その後もやり取りを重ねましたが折り合いがつかず、訴訟を提起することになりました。
訴訟提起と判決
訴訟では、貸付を裏付ける証拠が一定程度揃っていたことから、Aさんの請求を認める判決が出されました。Bさん側からは不法原因給付の主張もありましたが、証拠上、貸付と性的関係とは別のものとして存在していたと認められ、この主張は退けられました。
強制執行と自己破産による終結
判決確定後、Bさんの代理人に弁済方法を確認したところ、弁済の資力がなく自己破産を検討しているとの回答がありました。それでもできる限りの対応をとの思いから、Bさんの給与に対する強制執行を申し立てましたが、実際の回収には至りませんでした。
その後Bさんは自己破産を申し立て、弊所はAさんの代理人として破産管財人と交渉しましたが、めぼしい資産がないとされ、最終的に免責が認められました。回収という点では十分な結果を得られませんでしたが、Aさんからは「できる限りのことができたので、これで前に進める」とのお話をいただき、終件となりました。
解決結果と弁護士のコメント
請求額は約2,000万円でしたが、実際に回収できた金額は数十万円にとどまりました。
性風俗店で知り合った相手に個人的にお金を貸してしまうというご相談は、弊所でも少なくありません。店舗を通じて知り合ったのち、個人的な悩みを聞くうちに情が移り、貸付に至るという流れは多くのケースで共通しています。本件のように店を離れて会うようになった場合には、貸付金額が高額になりやすい傾向もあります。
相手方との距離が近づくほど、窮状を聞いて力になりたいと感じてしまうのは無理からぬところですが、相手方の資力や信用が十分に確認できない状況での貸付には、返済を受けられないリスクが伴います。金額の大小にかかわらず、貸したお金が戻らなければつらい思いをすることになりかねません。
結婚をほのめかされるなど、信用とは別の事情から判断が難しくなる場面もあるかもしれませんが、そのようなときこそ、回収できない可能性を念頭に置きつつ、どのようにすれば回収の見込みを高められるかを冷静に検討することが大切です。
男女間の金銭の貸し借りでは、口頭やメッセージのやり取りだけで多額のお金を渡してしまうケースも見受けられます。メッセージの記録も一定の証拠にはなり得ますが、できる限り契約書や借用書などの書面を作成しておくことをおすすめします。あわせて、連帯保証人の有無や、相手方の身元・収支状況を可能な範囲で確認し、回収の見込みを見極めることも重要です。
明確な根拠のないまま「必ず返す」「結婚するので安心してほしい」といった言葉を信じて大きなお金を貸してしまうケースは少なくありません。貸したお金の回収は難易度の高い類型のひとつであり、金額が大きい場合や相手方の収入基盤が不安定な場合には、その難しさがさらに増す点にご留意いただければと思います。
同種のトラブルでお悩みの方へ
個人的にお金を貸してしまい返済を受けられていない方、これから相手方にお金を貸すかどうかで迷われている方は、状況が深刻化する前に一度弁護士にご相談ください。証拠の整理や交渉方針の検討など、早い段階からのご相談が解決の可能性を広げることにつながります。


