弁護士との連絡手段と頻度|最初に決めておくとよいこと

若井亮

若井亮

テーマ:一般

弁護士に依頼したあと、「連絡がないけれど、進んでいるのだろうか」と感じたことのある方は少なくありません。反対に、想定していたより頻繁に連絡が来て、仕事中の対応に困ったという声もあります。

 こうした行き違いは、対応の良し悪しというより、連絡の取り方を決めないまま事件が動き出したことから生じている場合があります。連絡は事件の中身そのものではありませんが、見通しをどう共有するかを左右する部分です。

 この記事では、依頼するときに決めておくとよい項目と、その決め方の考え方を整理します。

「連絡が来ない」と感じるとき、何が起きているのか


頻度の多い少ないより、予想とのズレが不安をつくる


 同じ「三週間連絡がない」という状況でも、受け止め方は人によって大きく違います。あらかじめ「相手方の回答を待つ間はしばらく静かになります」と聞いていれば、待っている時間として理解できます。何も聞いていなければ、同じ三週間が「放置されているのではないか」という時間になります。

 不安の原因は、連絡の量そのものではなく、何がどうなったら連絡が来るのかを共有していないことにあることが少なくありません。

進んでいないのか、動きがないだけなのかは外から見えない


 事件には、こちらから動かせる場面と、待つしかない場面があります。相手方の回答待ち、裁判所の期日待ち、資料の取り寄せ待ちといった時期は、弁護士の側でも報告できる新しい材料が生まれにくくなります。

 依頼した側からは、その区別が見えません。ここを埋めるのが、最初の取り決めです。

弁護士からの報告は、日付ではなく出来事を基準にしていることが多い


 弁護士の側にも、事件の経過や、結果に影響を及ぼす事柄を依頼者に報告し、協議しながら処理を進めるという職務上の取り決めがあります。ただしそれは「必要に応じ」という組み立てで、毎月何日に報告するといったカレンダー基準ではありません

 つまり、事件が動いたときに連絡が来るのが基本形であり、動きの少ない時期に連絡が減ること自体は、通常起こり得ることです。もっとも、その時期がどのくらい続くのかを説明してもらうことは、依頼した側から求めて差し支えありません。

時期・場面連絡の量そのとき起きていること
受任した直後増えやすい委任状や資料の受け渡し、方針の確認、相手方への通知
相手方の回答を待っている間少なくなりやすいこちらから動かせる場面が限られる
相手方から回答や書面が届いたとき増えやすい内容の説明と、どう返すかの相談が必要になる
期日と期日の間波がある書面を出す前に打合せがあり、出した後はいったん静かになる
審査や取り寄せを待っている間少なくなりやすい第三者の手続の進み方に左右される
解決の条件が固まってきたとき増えやすい金額や時期、書面の文言を確認する場面が続く


最初に決めておくとよい六つのこと


  1. 主に使う連絡手段と、急ぐときの手段
  2. 連絡してよい時間帯と、折り返しの受け方
  3. どんな出来事があったら報告が来るのか
  4. 動きがない時期に、定期の連絡を入れるかどうか
  5. 弁護士本人から連絡が来るのか、事務局からも来るのか
  6. こちらから連絡してよい範囲と、その方法


「頻度」ではなく「きっかけ」で決めると行き違いが減る


 「月に一度は連絡がほしい」という決め方もありますが、事件の動きと噛み合わないと、報告することがないまま連絡だけが入る月が出てきます。

 「相手方から回答が来たとき」「期日が終わったとき」「方針を変える必要が出たとき」といった出来事の単位で決めておくと、連絡の有無そのものが進み具合の目安になります。両方を組み合わせ、出来事があったときに加えて、動きがなくても一定期間ごとに一報をもらう形にすることもできます。

動きがない時期の扱いを決めておく


 待ちの期間が長くなりそうな場合は、「この期間はご連絡が少なくなります」と先に伝えてもらえるかを確認しておくと、待っている時間の意味が分かります。おおよその見込みが立たない場面もありますが、その場合は「見込みが立ちにくい」と聞いておけば十分です。

連絡が来る相手を確かめておく


 日程の調整や資料の受け渡しは、事務局の担当者から連絡が入る事務所もあります。誰から連絡が来るのかを知らないと、事務所名で着信があっても出そびれることがあります。

 あわせて、弁護士本人と直接話したいときにどう伝えればよいかも聞いておくと、必要な場面で時間を取ってもらいやすくなります。

連絡手段は優劣ではなく、用件で選ぶ


 どの手段が優れているという話ではなく、用件との相性の問題です。多くの場合、主に使う手段を一つ決め、急ぐときの手段を別に決めておく形になります。

手段主に向く用件決めておくとよいこと
電話急ぎの連絡、込み入った経緯の説明、意向のすり合わせかけてよい時間帯、留守番電話を残してよいか、非通知でかかることがあるか
メール資料の送付、日程の調整、記録に残したいやり取り返信の目安、どのアドレスを使うか、家族と共用の端末でないか
事務所の専用ページやフォーム進捗の確認、書面の閲覧使える範囲、通知がどこに届くか
メッセージアプリ短い連絡、日程の調整事務所の窓口として運用されているか、誰が見ているか
郵便原本のやり取り、控えの受け取り送付先と、差出人の表記
来所・オンラインの面談方針の決定、書面の読み合わせ、記憶の掘り起こし所要時間、同席者の有無、費用の扱い


記録に残る手段を一つは持っておく


 電話は速い代わりに、話した内容が手元に残りません。後になって「その話は聞いていない」という食い違いが起きたとき、確かめる材料がない状態は双方にとって不便です。

 電話を主に使う場合でも、日程や金額など後で確認する可能性のある事柄は、メールなど文字の残る形でも一度やり取りしておくと、行き違いを減らせます。通話の直後に自分でメモを残しておくだけでも違います。

メッセージアプリの扱いは事務所ごとに分かれる


 受任後のやり取りにメッセージアプリを使う事務所もあれば、相談の予約までに限っている事務所もあります。使える場合でも、事務所の窓口として運用されているのか、担当者個人のやり取りなのかは確認しておくとよい点です。

 画像や音声の保存期間が限られている場合もあるため、証拠として渡す資料の送り方は、手段を決めるときに別途相談してください。

「どのくらいの頻度が普通か」に一般的な答えはない


 一か月に一度程度の報告を運用に組み込んでいる事務所もあれば、動きがあったときに連絡する運用の事務所もあります。分野や手続の種類によっても周期は変わります。

  • 交渉が中心の事件では、相手方の返答のペースに左右されやすい
  • 訴訟や調停では、期日と期日の間隔に合わせて打合せが入ることがある
  • 身体の拘束を伴う刑事の事件では、日単位で動く場面がある
  • 第三者の審査や手続の結果を待つ事件では、待ちの期間が長くなることがある


聞き方を変えると、答えが返ってきやすくなる


 「どのくらいの頻度で連絡をもらえますか」と尋ねると、事件の中身が固まっていない段階では答えにくいことがあります。

 「次にご連絡をいただけるのは、どういうことが起きたときですか」と尋ねると、これから何が起きる見込みなのかという説明とあわせて答えが返ってきやすくなります。相談の段階で聞いておいてもよい質問です。

こちらから連絡するときの工夫


 依頼した側から連絡してはいけない、ということはありません。ただ、伝え方によって、返事までの時間や中身は変わります。

  • 用件は一通にまとめ、件名に何の件かを書く
  • 期限のあるものは冒頭に置く
  • 起きた事実の報告と、感じたことの整理は分けて書く
  • 急ぐときの合図を、あらかじめ決めておく
  • 返事を受け取りやすい時間帯を添える


返事が来る前に重ねて送ると、整理に時間がかかることがある


 同じ件について短い連絡を何度も送ると、どれが最新の意向なのかを確かめる作業が先に必要になります。急ぎでない用件は、いったんまとめてから送るほうが結果的に早く進むことがあります。

相手方から直接連絡が来たときは、そのまま返さずに渡す


 弁護士に窓口を移した後も、相手方本人から連絡が入ることはあります。その場で答えると、主張が二通りになったり、その場の一言が記録に残ったりすることがあります。内容を保存したうえで、担当の弁護士に渡す扱いが基本になります。

連絡の取り方が費用に関わる場合


 個人の事件では、着手金と報酬金を軸にした取り決めが多く、通常のやり取りが別に加算されるとは限りません。

 一方、時間を単位として費用を計算する取り決めでは、打合せや電話に要した時間が費用に反映されることがあります。遠方への出張を伴う面談では、日当や交通費の扱いが別に定められていることもあります。

 連絡や打合せの方法を決めるときは、その方法が費用の計算に関わるかどうかもあわせて確認しておくと、後で認識の差が出にくくなります。費用の内訳そのものについては、見積書や委任契約書の記載を確認してください。

決めたことは、後から変えて差し支えない


 最初に決めた方法が、途中で合わなくなることはあります。転職や転居、同居する家族の状況の変化、体調の変化などで、使える時間帯や手段は変わります。

  • いつから変えたいのか
  • どの手段を、どう変えたいのか
  • 急ぐときの連絡だけは従来どおりにするのか


 この三点を添えて伝えると、事務所側でも運用を切り替えやすくなります。家族に知られたくない事情がある場合は、書面の送付先や封筒の表記まで含めた別の設計の話になりますので、その旨を伝えたうえで相談してください。

それでも連絡が取れないと感じたとき


 受任後に連絡が途切れていると感じる場合、次の順序で確認していく方法があります。

  1. 別の手段で一度連絡してみる(電話だけ、メールだけになっていないかを見直す)
  2. 期限を添えて、記録に残る方法で確認する
  3. 事務局に、担当弁護士の状況と折り返しの見込みを尋ねる
  4. 期限が迫っているものがあれば、その一点を先に伝える
  5. 事務所の他の窓口や、所属する弁護士会の窓口を確認する


 弁護士が期日や接見、出張で数日連絡を取りにくい時期はあります。一方で、着手や処理が滞っている場合もあり、待っている側からその区別をつけるのは難しいのが実際です。だからこそ、推測して待つより、期限から逆算して確認するほうが現実的です。

担当を替える、依頼をやめるという判断の前に


 依頼した側から委任を終わらせることはできますが、費用の清算、資料の引き継ぎ、期限の管理という別の作業が生じます。手続が進行している最中であればなおさらです。

 まずは状況の確認を先に行い、そのうえで判断する順序が無理のない進め方です。弁護士との間で解決しない紛議については、所属弁護士会に調停の仕組みが設けられています。

決めたことを、形に残しておく


 連絡の方法や頻度は、委任契約書に細かく書かれるとは限りません。打合せの場で口頭で決まることも多い部分です。

  • 決めた内容を、その場でメモに残す
  • メールで「このように理解しました」と一度送っておく
  • 契約書に記載された連絡先と、実際に使う連絡先が食い違っていないか確かめる


 こうしておくと、担当者が交代した場合や、期間が空いた場合にも、同じ前提で再開しやすくなります。

よくある質問


依頼した後、事務所には何度くらい行くことになりますか


 事案によって幅があります。書面の読み合わせや方針の決定が続く事件では、来所が重なる時期があります。一方で、最初の打合せの後は電話やメール、オンラインの面談で進み、来所しないまま終わる事件もあります。仕事の都合で日中の来所が難しい場合は、依頼の場でその事情を伝えておくと、進め方を組み立てやすくなります。

連絡が来ないのは、後回しにされているということですか


 そうとは限りません。相手方や裁判所の動きを待っている時期は、報告できる材料が生まれにくくなります。ただし、依頼した側からその区別をつけるのは難しいため、待つ日数を推測で決めるより、こちらの期限から逆算して確認するほうが、結果として前へ進みやすくなります。確認すること自体は、気兼ねの要る行為ではありません。

家族に電話をかけられたくないのですが、伝えてよいですか


 伝えて差し支えありません。連絡してよい番号と時間帯、留守番電話を残してよいか、郵便物の送付先と封筒の表記といった項目は、依頼の場で相談できます。家庭の事情で知られたくない場合は、書面が届く経路まで含めた設計の話になりますので、その前提を最初に共有しておくと組み立てやすくなります。

おわりに


 連絡の頻度に、どの事件にも当てはまる標準の形はありません。決めておく値打ちがあるのは、頻度そのものより、何が起きたら連絡が来るのか、こちらからはどう連絡すればよいのかという運用の部分です。

 依頼の場でここを一度言葉にしておくと、待っている時間の意味が分かり、必要な場面で早く連絡を取り合えるようになります。相談の段階で確認しておいても構いませんし、依頼した後に決め直すこともできます。気になる点があれば、遠慮なくお尋ねください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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