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室岡宏

「心のストレッチ研修」で人材を定着させる社会保険労務士

室岡宏(むろおかひろし) / 社会保険労務士

社会保険労務士事務所スローダウン

コラム

【Q&A】自然災害で事業不能⇒給料はどうなる?

2019年10月12日 公開 / 2020年4月23日更新

テーマ:厚生労働省

コラムカテゴリ:ビジネス



台風15号・19号の被害に遭われました
皆様には心よりお見舞い申し上げます。

一日も早く日常生活に戻られますことを
お祈り申し上げます。

【厚生労働省 ホームページ紹介】
 「台風19号の被災者の皆様へ」
令和元年台風第19号に関する情報を掲載しています。
(情報は随時更新)
 ■健康・医療  ■介護・福祉
 ■雇用・労働  ■年金   


【疑問!】
台風被害で事業不能(会社が休業)
となってしまった場合、
従業員は給料(休業手当)を
もらうことはできるのでしょうか?

【回答(原則)】
 簡略化した回答(詳細は後段)

企業側に責任のある休業を行った場合、
本来、企業は従業員に対して
休業手当(平均賃金の100分の60以上)
を支払わなければなりません。
 (労働基準法 第26条 休業手当)

しかし
休業の原因が天災事変等の不可抗力であって、
企業が最大限の回避努力をしていたにも
かかわらず事業不能となってしまったと
判断される場合は、
企業に休業手当の支払い義務を負わせない。
これが法律的な原則的判断となります。
(詳細は最下段のQ&A抜粋欄 をご参照ください)

ただし不可抗力・回避努力等は実態により
判断されますので、自然災害であれば常に
認められるというわけではございません。

また休業中の給与を支給する企業もあり、
年次有給休暇を使うケースもあろうかと
思います。
ご自身のお勤め先の就業規則・賃金規定等
をご確認ください。





災害救助法が適用された場合の支援策
として、国は、雇用保険の特別措置を
実施しております。


【災害救助法適用時の国の支援策】
   (雇用保険の特別措置)

<個人向け支援策(雇用保険の特別措置)>
 失業した場合と同様に基本手当を支給する
 雇用保険制度の特別措置が設けられて
 おります。

 この特別措置は、
 災害救助法の適用地域(確認要)の事業所が
 災害により事業が休止・廃止したために
 一時的に離職を余儀なくされた方について、
 事業再開後の再雇用が予定されている場合
 であっても、雇用保険の基本手当を
 受給できるという措置です。
(通常は再雇用が予定されていれば受給できません)

 ただし、
 この特別措置にはデメリットもございます。
 再離職した場合に振りとなり、あとから
 「請求しなければ良かった」と後悔するケースも
 出てくる可能性のある制度です。
 申請にあたりましては
 ハローワーク又は専門家にご相談の上、
 慎重にご判断ください。
 (下記Q&A:Q-5、A-5をご参照ください)

内閣府:災害救助法の適用状況:内閣府防災ページ
厚労省:台風19号 雇用保険の特別措置に関するQ&A

 

<企業向け支援策(雇用調整助成金)>
台風15号・19号に伴う「経済上の理由」により
休業等を行う事業主を対象として、
特例措置が実施されます。
(詳細は下記パンフレットをご確認ください)

雇用調整助成金の特例実施パンフレット


上記パンフレットをご確認の上、
事前に労働局・ハローワーク又は社会保険労務士へ
ご相談ください。








台風19号の被害に伴う労働基準法や
労働契約法の判断につきまして、
厚生労働省からQ&Aが公表されております。

「令和元年台風第19号による被害に伴う
 労働基準法や労働契約法に関するQ&A


その中に休業手当についての説明が
記載されておりますので、
以下に一部抜粋して掲載いたします。


【労働基準法等Q&Aの一部抜粋】
  (休業手当に関する部分)
Q1-4
 今回の台風による水害等により、
 事業場の施設・設備が直接的な被害
 を受け労働者を休業させる場合、
 労働基準法第26条の
 「使用者の責に帰すべき事由」による
 休業に当たるでしょうか?

A1-4
 労働基準法第26条では、
 使用者の責に帰すべき事由による
 休業の場合には、使用者は、
 休業期間中の休業手当
 (平均賃金の100分の60以上)
 を支払わなければならない
 とされています。

 ただし、
 天災事変等の不可抗力の場合は、
 使用者の責に帰すべき事由に当たらず、
 使用者に休業手当の支払義務は
 ありません。

 ここでいう不可抗力とは、
 ①その原因が事業の外部より発生した
  事故であること、
 ②事業主が通常の経営者として
  最大の注意を尽くしてもなお
  避けることのできない事故であること
 の2つの要件を満たすものでなければ
 ならないと解されています。

 今回の台風による水害等により、
 事業場の施設・設備が直接的な被害を
 受け、その結果、労働者を休業させる
 場合は、休業の原因が事業主の関与の
 範囲外のものであり、事業主が通常の
 経営者として最大の注意を尽くしても
 なお避けることのできない事故に
 該当すると考えられますので、
 原則として
 使用者の責に帰すべき事由による
 休業には該当しないと考えられます。

 なお、Q1-2・A1-2 及び Q1-3・A1-3
 もご覧ください。





Q1-5
 今回の台風により、
 事業場の施設・設備は直接的な被害
 を受けていませんが、
 取引先や鉄道・道路が被害を受け、
 原材料の仕入、製品の納入等が
 不可能となったことにより
 労働者を休業させる場合、
 「使用者の責に帰すべき事由」
 による休業に当たるでしょうか?

A1-5
 今回の台風により、
 事業場の施設・設備は
 直接的な被害を受けていない場合には、
 原則として
 「使用者の責に帰すべき事由」
 による休業に該当すると考えられます。
 (※原則、休業手当の支払い義務あり)

 ただし、休業について、
 ①その原因が事業の外部より発生した
  事故であること、
 ②事業主が通常の経営者として
  最大の注意を尽くしてもなお
  避けることのできない事故であること
 の2つの要件を満たす場合には、
 例外的に「使用者の責に帰すべき事由」
 による休業に該当しないと考えられます。

 具体的には、取引先への依存の程度、
 輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、
 災害発生からの期間、使用者としての
 休業回避のための具体的努力等を
 総合的に勘案し、判断する必要がある
 と考えられます。

 なお、Q1-2・A1-2 及び Q1-3・A1-3も
 ご覧ください。




被災された皆様が
一日も早く日常生活を取り戻されることを
心よりお祈り申し上げます。



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 特定社会保険労務士
 カスタマー・ハラスメント対策コンサルタント
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