【人事トラブル】引き継ぎをせずに社員が退職をする場合には
パワハラを防ぐ方法は「叱らないこと」ではない
管理職が今すぐ見直すべき5つの行動——「言い方」を変えるだけで、職場は変わる
▌ある月曜の朝
提出期限を過ぎた報告書を手に、田中課長は部下の山田を呼び止めた。
「また遅れたのか。だから君はダメなんだ」。
周囲に聞こえる声で、10秒ほどの会話だった。
田中課長は「指導した」と思っている。
山田は「否定された」と感じた。
その日の午後、山田は人事部に電話を入れた。「パワハラではないかと思うのですが……」
この10秒の会話で、会社に何が起きたか。
そして何を変えれば防げたのか——本記事はその一点を解説します。
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ハラスメント対策の本質は「禁止」ではなく、
「管理職の日常行動を整える」ことにある。
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■ 制度は土台にすぎない
近年、企業にはパワーハラスメント防止措置が法的に義務付けられています
(労働施策総合推進法)。方針の明確化・相談窓口の整備・従業員への周知教育——
これらは最低限の土台です。
しかし、相談窓口を作っても、管理職の関わり方が変わらなければ、
現場の空気は変わりません。就業規則に書いてあっても、
上司が感情で部下を叱れば、職場の安心感は失われます。
厚生労働省のデータによると、職場のいじめ・嫌がらせに関する個別労働紛争相談は
年間8万7千件超(令和元年度)で、相談カテゴリー中最多です。
「露骨な暴言」だけが原因ではなく、日常のグレーゾーンの蓄積が数字を押し上げています。
現場を左右するのは、上司の「日々の行動」です。
■ 現場で起きているのは「明らかな暴言」だけではない
ハラスメントと聞くと露骨な怒鳴り声や侮辱をイメージしがちですが、
実際にはグレーな不満から問題が大きくなるケースが大半です。
【よくある現場のシーン】
Aさんは真面目で断れない性格だ。だから仕事が集まる。残業も増える。
上司は「頼れるから任せている」と思っている。
Aさんは「なぜ自分だけ」と思っている。
ある日、Aさんは突然休職届を出した——
問題社員の怒鳴り声より、こうした「意図のない追い詰め方」の方が、
現場では圧倒的に多く起きています。
■ ハラスメントを防ぐ管理職の5つの行動
特別なテクニックではありません。基本的なことを、ぶれずに続けることです。
各ポイントで「NG」と「OK」の言葉を対比しながら解説します。
【1. 人格ではなく、行動にフィードバックする】
上司の言葉は、本人が思っている以上に部下に強く届きます。
「正しいことを言う」だけでなく、「どう伝えるか」を整える力が管理職には必要です。
NG(人格への攻撃)
「何回言えば分かるの?だから君はダメなんだ。この仕事、向いてないんじゃない?」
→ 相手が受け取るのは「ミスの指摘」ではなく「自分の否定」。
改善より萎縮を生む。
OK(行動へのフィードバック)
「この報告書、締め切りを過ぎている。
次回から提出前日にこちらに確認を入れてほしい。」
→ 何が問題で、次にどうすればいいか。これだけで部下は動ける。
【2. フィードバックは「ダメ出し」で終わらせない】
部下のミスを指摘すること自体は管理職の大事な役割です。
問題は、そこで終わってしまうことです。
「怒られた」「否定された」という印象しか残らない指導は、成長支援ではありません。
NG(ダメ出しで終わる)
「このレポート、全然ダメ。やり直して。」(終了)
→ 何がダメで、どう直せばいいか分からない。部下は手が動かない。
OK(次の行動まで示す)
「数字の根拠が弱い。第2節にデータを補足してほしい。
判断に迷ったら先に相談して。」
→ 何を・どこを・どうするか。具体的だから部下は動ける。
【3. 役割・期待値をあいまいにしない】
職場トラブルの多くは、最初から「誰が何をやるのか」「どこまでやればいいか」が
あいまいです。そのズレが不満に変わります。
NG(期待値が見えない)
「この件、よろしく。いい感じで進めておいて。」
→ 「いい感じ」の基準が分からない。
後から「そういうことじゃなかった」が発生する。
OK(期待値を言語化する)
「来週金曜までに提案書1枚でまとめてほしい。
コストと工数の比較を必ず入れて。判断は私がする。」
→ 期限・成果物の形・役割分担が明確。部下は安心して動ける。
【4. 人によって対応を変えない】
社員は、厳しさそのものより「不公平さ」に強く反応します。
同じミスでも人によって対応が変わる、機嫌で言うことが変わる——
これが職場の信頼関係を崩します。
NG(基準がない対応)
Aには厳しく叱る。Bには何も言わない。同じミスなのに。(理由の説明なし)
→ 「結局、好き嫌いで見られている」という不信感が積み重なる。
OK(基準を見せる配慮)
「Bさんは今月初めてのことだから今回は説明にとどめる。
2回目は同様に対応する。」
→ 基準が見えれば、異なる対応でも納得感が生まれる。
【5. 仕事の偏りを放置しない】
頼みやすい人に仕事が集中する状態は、上司が意図していなくても
「追い詰められている社員」を生みます。
仕事の公平な配分は、単なる業務管理ではなく信頼を守るマネジメントです。
NG(偏りの放置)
「Cさん、これもお願いできる?忙しいのは分かってるけど、
頼れるのが君しかいなくて。」(毎週)
→ 「なぜ自分だけ」という不満が溜まる。突然の休職リスクが高まる。
OK(状況を確認してから判断)
「Cさん、今週の稼働状況を教えてほしい。
状況を見てから誰にお願いするか決める。」
→ 配慮が見える。「見てもらえている」という安心感が生まれる。
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管理職セルフチェックリスト — 今週の自分の行動を振り返る
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□ ミスを指摘するとき、「人格」ではなく「行動」を対象にしていたか
□ フィードバックで「次にどうすればいいか」まで伝えていたか
□ 仕事を振るとき、期限・成果物の形・判断者を明示していたか
□ 特定のメンバーにだけ厳しくなっていなかったか
□ 特定のメンバーに仕事が集中していないか、今週確認したか
■ 「研修1回で終わり」にしない
ハラスメント対策を「年1回の研修をやったから終わり」にしてしまう会社は
少なくありません。しかし本当に必要なのは、管理職が日常でどう振る舞うかを
継続的に整えることです。
注意の仕方・面談の仕方・仕事の振り方・評価の伝え方——
こうした日々の関わり方が変わらない限り、根本的な予防にはつながりません。
■ まとめ
・ パワハラ防止の法制度は土台にすぎない。現場を変えるのは管理職の日常行動
・ 「人格への攻撃」と「行動へのフィードバック」は、言葉一つで切り替えられる
・ 指導は「ダメ出し」で終わらせず、「次の行動」まで示して初めて成長支援になる
・ 期待値・役割・判断者を明示しない「丸投げ」は、後のトラブルの温床になる
・ 対応の一貫性と仕事配分の公平性が、職場の信頼関係を守る
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「うちの管理職、大丈夫だろうか」と思ったら
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問題が表面化してからでは、対応コストが一気に上がります。
「まだ大きなトラブルにはなっていないが、不安がある」という段階での相談が、
最も効果的です。
・ 現在の状況を整理し、どこから手をつけるべきかを一緒に考えます
・ 管理職への個別指導・社内研修の設計についてもご相談いただけます
・ 労基署対応・ハラスメント相談の初動サポートも対応可能です
まずは30分・無料相談をご利用ください。
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相談内容に応じて、社会保険労務士・産業カウンセラーが対応します。秘密厳守。
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