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コラム
「ヨーデル」がもたらしてくれたもの
2020年10月26日 公開 / 2021年3月1日更新
毎年10月26日、灰田勝彦先生のご命日に、港区の麻布十番にある先生の菩提寺のお墓参りをさせていただくようになって、十数年になる。亡くなられてから、今年で38年もの時間が経過した。当時私は19歳だったから、その時の自分の年齢の2倍の年月を、灰田先生の明るい歌とともに生きて来ることができたのである。今日はお墓の前で、長い時間、そのことに感謝して頭を垂れていた。いつものように秋のおだやかな日ざしがお墓に差し上げた水のおもてにきらめいて、明るく照り返していた。
拙著『遠い道、竝に灰田先生』(1992年10月画文堂版)にも書いてあるし、本稿でもいく度か述べたことがあると思うが、灰田勝彦先生の『アルプスの牧場』を歌えるようになりたいと、私は19歳の時に深く念じ、教えてくれる人もいなければ教本などもない裏声(ヨーデル)を出すために2か月あまり手さぐりで練習した。そしてようやく『アルプスの牧場』が歌えるようになったのだが、そのことは自分でも予想もしていなかった、「人格の明るさ」を手に入れる結果につながった。
今、言問学舎を経営していて、生徒や検定受検で訪れた方たちの保護者の方々から、「先生の明るい人柄が・・・」というお言葉を頂戴することがあるが、それは灰田先生の明るい歌唱を身につけようと努力したことが、結果として身にもたらしてくれた幸いなのである。
今日はそんな幸いを思いながら、灰田勝彦先生が自らヨーデルを聴かせるために作曲なさった『アルプスのヨーデル唄い』を歌わせていただいた。今年から「言問学舎」として新しく立ち上げたYouTubeのチャンネルに投稿したので、ご紹介させていただく次第である。
令和2年(2020年)10月26日
小田原漂情
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