長嶋監督の「地獄の伊東キャンプ」について英語で対話しよう。

豊田朋子

豊田朋子

テーマ:今週の授業(Global youth)

今こそ、長嶋野球と対極の映画『マネーボール』を見よう!


 長嶋茂雄さんがお亡くなりになられました。
野球という分野を超えて、戦後の高度成長期を支えた太陽のような方で、その存在は、子ども時代を昭和で過ごした私も切に実感し、心から追悼したいです。
中高生の皆さんには良く知らない方もいるかもしれませんが、その訃報は、下記英語ニュースでも伝えられていますので、視聴してみましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=JXIz5JdtaKM

 しかしながら、その監督時代の「地獄の伊東キャンプ」についても、訃報を伝える報道番組などで、長嶋監督のカリスマ性のお陰で「怪我人が一切出なかった」などと手放しに賛美されている状況には、違和感があります。
 
 まさに、長嶋氏が他界され、「神格化」されている今だからこそ、その「地獄のキャンプの是非」について、次世代の皆さんに英語でも考て欲しいテーマだと思いました。

 この「伊東キャンプ」は、1970年代〜1980年代初頭に巨人軍(読売ジャイアンツ)の若手選手を中心に行われ、「地獄のキャンプ」と呼ばれるほどのハードな訓練が行われました。
 
 長嶋監督の理念である「勝利には努力と根性が不可欠」を体現し、肉体的訓練にとどまらず、野球への情熱・礼儀・魅せるプレーなど、スター選手に必要な資質を養う目的のものでした。
 
 一方、早朝から深夜まで続く練習、時には食事や睡眠も十分に取れない、「やめたいと思ったら負け」といったプレッシャーがあった状況は、「根性論」が主流だった時代の象徴的な訓練方法で、現代の価値基準からは「パワハラ」に近く、非効率で危険だったとの見方もあります。

 そこで、下記の質問にYes, Noのグループに分かれて議論してみましょう。
“Should athletes go through hard training called like "hell camp" to build mental toughness?”
(選手は精神力を鍛えるために、地獄のキャンプと呼ばれるような厳しいトレーニングキャンプを経験すべきか?)


 同時に、長嶋野球とは対極にある実話に基づいた映画『マネーボール(Moneyball)』のトレイルも観てみましょう。

 この映画の主人公ビリー・ビーン(オークランド・アスレチックスGM)は、「セイバーメトリクス(Sabermetrics)」と呼ばれる統計学に基づいた野球の分析理論を取り入れました。

 これは、従来重視されていた主観的な評価(見た目、スイングの美しさ、足の速さなど、まさに長嶋野球の中心的価値)ではなく、実際の試合データ(出塁率、長打率など)に基づいて選手を評価する方法です。
 オークランド・アスレチックスは小規模球団で、大金をかけてスター選手を獲得することができません。
 そこで、市場価値が過小評価されている選手(例えば出塁率が高いが打率が低いなど)を統計で見抜き、低予算で強いチームを作ることを目指しました。
 
 野球経験は一切ない統計学専門のエコノミストのピーター・ブランドとともに、伝統的なスカウトの反発を受けながらもチーム改革を断行した結果、

最終的に、少ない予算にも関わらずアスレチックスは、なんと20連勝という当時のアメリカンリーグ新記録を達成したのです。

 この「セイバーメトリクス(Sabermetrics)」は、現在スカウトだけでなく、トレーニング理論にも取り入れられ、もはや今、メジャーリーグのnorm(常識)となっています。つまり、現在の大谷選手の活躍にもつながる理論と実践なのです。

この映画のクライマックスの英語のセリフなどは、次回ヒアリング、リーディングをして、その賛否について議論しましょう。↓

https://www.youtube.com/watch?v=fUdQI3Nn4tE


今回のトピックに役立つ問いを下記挙げました。

役立つFollow-up Question日本語訳
“Do you think tough training makes stronger players or just causes injuries?”
厳しい練習は選手を強くすると思う?それともケガの原因になる?
“Can mental toughness be built without pain?”
精神力は苦しみなしに鍛えられると思う?
“Do you know any teams that became strong by using data?”
データを使って強くなったチームを知ってる?
“Would you like to join a ‘hell camp’ yourself? Why or why not?”
君は“地獄のキャンプ”に参加したい?したくない?その理由は?

中高生には、「英語力+自分の経験や価値観」を結びつけられる問いが効果的です。

ディベートで使える 肯定派(Pro)と否定派(Con)それぞれの立場の英語例文 をご紹介します:

肯定派(Pro):“Hell camps” are still important
Opening Statement
“I believe extreme training camps are necessary because they build mental toughness and discipline. These qualities are essential not just in sports, but in life.”

Supporting Arguments
“Tough training teaches athletes how to overcome fear, pain, and pressure.”

“Many legendary players went through these camps and became successful.”

“Team spirit and trust grow stronger when teammates suffer together.”

Deeper Cultural Reflection
“Traditional hard training is part of Japanese sports culture. We shouldn’t forget the value of perseverance and endurance.”

否定派(Con):“Hell camps” are outdated and harmful
Opening Statement
“I think extreme training like ‘hell camps’ is outdated. Modern sports should focus on science, safety, and smart training.”

Supporting Arguments
“Too much physical stress can cause serious injuries or burnout.”

“Data-based training is more efficient and personalized.”

“Mental strength can also be developed through smart goal-setting and teamwork, not just pain.”

Deeper Cultural Reflection
“Japanese society is changing. Young people today need balanced training, not just suffering. Tradition is important, but we must evolve.”

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

豊田朋子
専門家

豊田朋子(英語講師)

株式会社ダイバース・キッズ / Global kids英語会

文字と音の法則で学ぶ「フォニックス教授法」をベースに、日本の子どもに欠けがちな発信力をはぐくむプログラムを実施。本格的な英語プレゼン大会で成果を発表。専門訓練を受けたプロ講師たちが熱意を持って指導する

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

子どもたちの「自己発信力」を引き出す英語スクールの経営者

豊田朋子プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼